増税の危機?!サラリーマンができる節税対策4選と副業の効果

2024.05.15更新

この記事の監修者

吉崎 誠二

吉崎 誠二

不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

増税の危機?!サラリーマンができる節税対策4選と副業の効果

この記事ではサラリーマンができる節税対策を紹介するとともに、副業で得られる節税効果についても解説します。

この記事のポイント
  • 「サラリーマン増税」が話題となりましたが、税制の見直しの提言であり、すぐに実施されるものではありません。
  • ただし、検討の内容について把握し、早めに対策を講じておくことが大切といえます。
  • 副業も節税対策の選択肢の1つです。なかでも年収1,000万円を超える給与所得者には不動産投資がおすすめです!

目次

近々増税?サラリーマンは対策が必要です

私たちの収入からは所得税や住民税などさまざまな税金や年々上昇する社会保険などが引かれるため、手元に残る額が少ないと感じる人も多いのではないでしょうか。

同じ収入だとしても、きちんと節税対策を行っている人とそうでない人では最終的な手取り額に大きな差が生まれます。

ただでさえ、税金で引かれる額が多いと感じている中、今後さらに増税が検討されています。検討されている増税の内容を把握し、早めに対策を講じておきましょう。

給与所得控除の縮小や退職金への課税検討

2023年6月の税制調査会にて、「給与所得控除の縮小」および「退職所得控除額の見直し」が取り上げられたのは記憶に新しいのではないでしょうか。とくに給与所得控除は毎年支払う所得税や住民税に関係してくるため、ぜひ押さえておきたい内容です。

具体的にどのくらい縮小されるのかはまだ決まっていませんが、縮小されることにより、支払う税金額が増えることになるのは間違いありません。そのためには、所得税額がどのようにして計算されるのかを知っておく必要があります。

所得税額については、まず年間の給与収入額から給与所得控除額を差し引き、給与所得金額を求めます。給与所得控除額は給与収入額に応じて異なりますが、控除額が多いほど課税対象となる給与所得金額は少なくなります。

そして、給与所得金額から基礎控除や配偶者控除、医療控除、保険控除などの所得控除を差し引いた金額が最終的な課税所得金額となり、その金額に応じた所得税額を支払わなければなりません。

そのため、給与所得控除が縮小されると最終的な所得税額が増えることになってしまうのです。

サラリーマンの節税対策4選

所得税額や住民税額を抑えるための対策として、以下で紹介する4つのものがあります。

【対策1】所得控除を活用する

所得控除とは、最終的な課税所得金額を求めるために給与所得金額から差し引くもので、さまざまな種類があります。所得控除額が多いほど課税所得金額が少なくなるため、以下の所得控除をできるだけ活用し、節税につなげましょう。

生命保険料控除

生命保険料控除では、加入している生命保険に支払っている保険料に応じた控除が受けられます。

控除は生命保険の契約日によって旧制度と新制度に分かれており、新制度ではそれまでの生命保険料控除と個人年金保険料控除に加え、新たに介護医療保険料控除が加わりました。

そして、それぞれの控除額を活用することで最大12万円の控除が受けられる仕組みです。

医療費控除

医療費控除とは、1月1日から12月31日までに支払った医療費について、10万円(もしくは所得金額の5%)以上の部分について所得控除として計上できるというもので、自分だけでなく、生活を1つにしている配偶者や親族が支払った医療費も合算できます。家族が多く、病院に行く回数が多いならぜひ活用するべきでしょう。

ただし、医療費控除の適用を受けるためには確定申告が必要なことと、セルフメディケーション税制とは併用できない点に注意が必要です。

扶養控除

納税する本人に扶養の対象となる親族がいる場合は、その親族に応じた一定の所得控除が受けられます。扶養控除額については、以下のとおりです。
区分控除額
一般の控除対象扶養親族38万円
特定扶養親族63万円
老人扶養親族同居老親等以外48万円
同居老親等58万円
控除対象扶養親族や特定扶養親族に当てはまるには要件を満たす必要がありますので、国税庁のサイトなどで確認しておきましょう。

特定支出控除

特定支出控除とは、給与所得者が「通勤費」や「職務上の旅費」などを支払い、その支払額の合計が「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超えた場合、その超えた部分について所得控除として計上できるというものです。

該当となる支出には「図書費」や「衣服費」「交際費」などがありますが、特定支出と認められるには、会社の証明が必要です。

また、特定支出控除の適用を受けるためには、証明書や必要書類と合わせて確定申告しなければなりません。

【住宅ローン減税】

住宅ローン控除、と呼ばれるものですが、事実上は「住宅ローン減税」です。自分が住む家を購入するにあたり、住宅ローンを利用した場合は、その住宅の環境性能に応じた住宅ローン減税が受けられます。

一番減税額が大きいのが「長期優良住宅・低炭素住宅」を購入した場合で、新築もしくは買取再販住宅だと13年間控除が受けられます。また、2024年の税制改正において、「子育て世帯」もしくは「若者夫婦世帯」に対する優遇策も設けられましたので、当てはまる場合はぜひ活用しましょう。

控除=所得が引かれ、引かれた後の額に対して税金がかかります。減税=その分の税金が引かれるものです。住宅ローンについてはローン残高の一定割合(上限あり)が減税されます。つまり、国が住宅ローンの利息(全部あるいは一部)を補填してくれる、という制度です。

吉崎 誠二
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【対策2】非課税の資産運用を利用する

所得控除を活用して課税所得金額をおさえるだけでなく、せっかくなら資産形成も視野に入れた節税対策を取り入れましょう。

通常、運用で得た利益には20.315%(現状)が課税されますが、以下の制度を利用することで非課税の運用ができるほか、iDeCoでは掛金を所得控除として計上できます。

新NISA

新NISAとは2024年1月から始まったNISA制度のことで、小額で投資を行う人に対する非課税制度です。

新NISAでは、「成長投資枠」「つみたて投資枠」の2種類があり、成長投資枠は年間240万円、つみたて投資枠は年間120万円までの購入分について永久的に非課税で運用できます。成長投資枠では株式も購入できますが、つみたて投資枠は金融庁が認めた投資信託に限られる点に注意しておきましょう。

非課税保有限度額は成長投資枠とつみたて投資枠合わせて1,800万円までで、そのうち成長投資枠は1,200万円までとなっています。

成長投資枠とつみたて投資枠の併用も可能ですので、興味のある人はぜひ始めてみましょう。

iDeCo

iDeCoとは、個人型確定拠出年金の略称で、私的年金の1つです。原則として60歳までは引き出せないことから、老後の資産形成にとして利用できます。

iDeCoでは、加入者の属性によって毎月の掛金上限額が決まっており、給与所得者の場合12,000円~23,000円の間で設定できます(詳細規定あり)。そして、掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となるため、節税効果も期待できます。

また、運用中は非課税で運用でき、受取時には受け取り方法に応じて「退職所得控除」もしくは「公的年金等控除」が適用されます。

【対策3】ふるさと納税をする

ふるさと納税とは、自分の応援したい自治体に寄附することで、自己負担額である2,000円を除いた金額が所得税もしくは住民税から控除される仕組みです。ただし、寄附上限額が収入や扶養家族数などによって決められている点に注意しておきましょう。

ふるさと納税には「ワンストップ特例」が用意されており、「確定申告の必要がない給与所得者」で「寄附先の自治体の数が5団体以内」なら、確定申告を行わなくても自己負担額を除いた額が控除されます。

ただし、ワンストップ特例を利用した場合は控除額全額が住民税からの税額控除になります。

【対策4】副業を始める

サラリーマンが副業をする場合、事業内容によっては赤字であれば損益通算して本業にかかる所得税の還付を受けられる可能性があります。副業に関わる経費を計上することで副業の利益は圧縮できます。

また、副業がそのうち黒字になり利益が20万円を超えたら所得税の確定申告が必要となります。最大65万円の所得控除が受けられる「青色申告特別控除」を使うことで所得税の節税効果を狙えます。

副業とひとくちに言っても、単発のアルバイトから専門を生かした講師や翻訳などの仕事、などさまざまです。副業収入が雑所得に該当するケースは損益通算ができないため、副業による節税を狙うならば、事業に継続性及び反復性が認められる事業所得である必要があります。

株式投資の収益は分離課税で、事業所得とは別項目です。また、不動産投資も同様に、不動産所得として別項目となります。

吉崎 誠二
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合計所得金額が1,000万円以上のサラリーマンは不動産投資が効果抜群

給与所得者であれば給与所得控除が受けられますが、控除額は給与収入が850万円を超えると一律195万円になってしまいます。

また、配偶者控除や配偶者特別控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用されません。そのため、利用できる所得控除がなくなり、その分課税所得金額が増えてしまうのです。

この場合の節税対策として有効なのが不動産投資です。ここでは、不動産投資を行うことによってどのような節税効果が得られるのかについて解説します。

給与所得との損益通算ができる

不動産投資によって得た収入は、不動産所得に分類されます。不動産所得金額を求める際には、不動産投資で得た収入から不動産投資にかかった経費を差し引いて求めます。

不動産投資を行うにあたっては、物件を購入するなど初期費用がかかりますので、始めたころは赤字になることが予想されます。

しかし、その赤字は給与所得金額と相殺できます。これを損益通算といい、仮に給与所得金額が500万円で不動産所得金額が300万円の赤字だった場合、最終的な課税所得金額は200万円です。結果、200万円に応じた所得税額を払うことになり、大きな節税につながります。

かなり現実離れしたシミュレーションですが、初年度は節税効果が高いことがお分かりになるでしょう。

吉崎 誠二
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減価償却費を経費計上できる

減価償却費は、不動産など固定資産を購入した際、その年にすべて費用を経費として計上するのではなく、耐用年数に応じて経費計上できる仕組みになっています。

実際には費用が発生していないにもかかわらず、経費計上できるため、不動産投資を行うなら、減価償却費に注目しましょう。

青色申告特別控除が使える

不動産所得がある場合、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告が可能になります。そして、青色申告の場合、一定の要件を満たすことで55万円もしくは65万円の青色申告特別控除が受けられます。
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まとめ

今後の税制改正によっては、給与所得控除の縮小や退職所得控除の見直しなど、サラリーマンにとって税負担が大きくなる可能性は否定できません。そのためにも、今からどのような節税対策があるのかを知っておくことが大切です。

また、副業として不動産投資を始めるのも、節税対策につながるケースがあります。ただ、実際に副業で節税対策を行うにあたっては、メリットばかりでなくデメリットがあることも考慮したうえで行うようにしましょう。

資産形成や節税対策の情報力に差が出る時代です。
有益な情報には常にアンテナを巡らしておきましょう!

この記事の監修者

吉崎 誠二

吉崎 誠二

不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。

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