不動産投資信託(REIT)とは|仕組みやメリット・デメリットを解説します

2024.06.26更新

この記事の監修者

八木エミリー
八木エミリー

証券外務員一種/2級FP技能士

不動産投資信託(REIT)とは|仕組みやメリット・デメリットを解説します

不動産投資信託(REIT)に興味がある方へ、仕組みやメリット、デメリット、具体的な始め方についてまとめました。

この記事のポイント
  • 不動産投資信託(REIT)は、現物不動産投資とは異なり少額から始めることができます。
  • 不動産投資信託(REIT)は、プロに運用を任せられるため手間がかからないことがメリットの1つ!
  • 実際の不動産を所持することがないため、コストも抑えることができます。

目次

不動産投資信託(REIT)とは?

不動産投資信託(REIT)は投資対象に不動産を組み入れられるのが特徴で、少額から投資できることから人気を集めています。

REITは現物不動産投資、クラウドファンディングと比較して金融商品であることが大きな違いです。

八木エミリー
八木 エミリー

J-REITとは

REITとは不動産投資信託のことで、投資対象に不動産を組み入れられる投資信託のことです。REIT自体はアメリカで生まれ、「Real Estate Investment Trust」の略を表します。日本ではREITと区別するため、Japanの「J」を頭文字につけて「J-REIT」と呼んでいます。

J-REITは投資信託の一種であり、証券取引所に上場されていますが、J-REITが初めて上場されたのは2001年9月であることから、比較的新しい商品といえるでしょう。

不動産投資信託(REIT)の仕組み

不動産投資信託(REIT)の仕組みは以下のとおりです。
多くの投資家から資金を集め、それらをオフィスビルや商業施設、マンションなどをはじめとする複数の不動産を購入し、そこから得られた家賃収入を投資者に配当します。

つまり、投資者は不動産投資信託を通じて、間接的にさまざまな不動産の大家になることができるといえるでしょう。

不動産投資信託の種類と特徴

不動産投資信託の種類と特徴について、知っておきたいポイントについて解説します。

不動産投資信託は3種類

不動産投資信託は、以下のように分けられます。

・単一用途特化型
・複数用途型(複合型/総合型)

このうち、単一用途特化型はある特定の用途に供する不動産に投資する不動産投資信託のことです。ホテル特化、物流施設特化、オフィスビル特化など、さまざまなタイプに投資します。用途が限定されるため、情報を得やすい一方、分散投資がしにくい点がデメリットといえます。

一方で複数用途型はその名のとおり、複数の用途の不動産に投資をする不動産投資信託のことです。また、複数用途型は2つの用途の不動産に投資する「複合型」と、3つ以上の用途を組み合わせて投資する「総合型」に分かれます。単一用途特化型に比べて分散投資がしやすいといったメリットはありますが、リターンは小さくなる傾向にあります。

投資先の種類と特徴

REITの投資対象には次のような種類があります。
オフィスビル都心のオフィスビルを中心に投資
商業施設商業店舗ビルやショッピングセンターなどに投資
住宅主にマンションに対して投資
物流施設物流センターや倉庫などを中心に投資
ホテルビジネスホテルを中心に投資

個人が買えないようなビルやホテル、物流施設にもREITを通して投資ができるのが面白いところです。

八木エミリー
八木 エミリー

不動産投資信託のメリット・デメリット

ここでは不動産投資信託のメリット・デメリットについて、それぞれ解説します。

メリット

不動産投資信託に投資するメリットは主に以下のとおりです。

・少ない資金でも購入可能
・プロに運用を任せられる
・流動性が高い
・分散投資がしやすい
・売却益が期待できる

実物不動産投資の場合、多額の費用が必要です。しかし、不動産投資信託であれば1単位10万円前後の銘柄も存在するため、比較的少額から投資を始められます。値動きの異なる商品に投資することで、分散投資も図れるでしょう。

また、実物不動産投資では物件にかかる火災保険料や固定資産税、修繕費などの維持コストも自身で用意しなければなりませんが、REITであれば全てを運用会社に任せられます。物件の維持や管理にかかる手間が必要ないことは、日々何かと忙しいサラリーマンにとって大きなメリットです。

そして、取引所に上場されている不動産投資信託は上場株式と同じように取引所での売買が可能です。査定や売却先探しなどの段階が必要となる実物不動産投資と比較して流動性が高く、換金性にも優れているといえるでしょう。

実物不動産投資では売却時に登記費用や税金といったコストがかかりますが、不動産投資信託で生じるコストは取引手数料と譲渡益にかかる所得税・住民税(売却益の所得税15.315%、住民税5%)のみです。

デメリット

不動産投資信託にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットがあります。

・不動産市場リスク
・金利変動リスク
・倒産リスク(上場廃止リスク)
・災害リスク
・(実物不動産投資と比べ)節税効果が薄い
・複利効果を得られない
・レバレッジを効かせた投資が難しい

不動産投資法人は企業であり 、金融機関の融資が停止したり、収益が低下したりすれば倒産するリスクがあります。とはいえ、仮に破綻しても不動産の価値がゼロになるわけではなく、理論上は精算時に不動産を売却すれば投資資金が戻る可能性があります。ただし、この場合でも投資金額のすべてが回収できるとは限らないことを覚えておきましょう。

また、不動産投資信託は金融商品ですが、預金のように元本が保証されているものではありません。利益を再投資しないことから複利効果も期待できませんし、価格変動リスクを有しています。

実物不動産投資のようにさまざまな必要経費や減価償却費を計上することもできず、相続税対策にならない点もおさえておく必要があります。

ほかにも、不動産投資信託を運用する法人そのものが上場廃止になった場合には、取り引きが非常に困難になる恐れがあるでしょう。

海外REITは海外株式と同じくらいの価格変動がある場合があります。

八木エミリー
八木 エミリー
そして、不動産投資信託に限った話ではありませんが、災害リスクがあることもデメリットのひとつです。地震や津波、台風などで投資対象の不動産が損壊あるいは損傷した場合、収益が失われるほか、損失が生じる恐れがあるでしょう。

いずれのリスクもゼロにすることはできませんが、運用成果や法人の動向をきちんと把握しておくことが大切です。

なお、不動産投資のいちばんのメリットともいえるレバレッジ効果が享受できないことも大きなポイントです。不動産というよりも金融資産として持つ必要があります。

八木エミリー
八木 エミリー

不動産投資信託はどんな人におすすめ?

不動産投資信託は実物不動産投資と異なり、物件の維持費や税金などの負担が生じません。また、賃貸人の募集をはじめ、物件の維持管理などに時間がかからない点もメリットといえます。

そのため、まずは少額から不動産投資に挑戦したいと考えている方はもちろん、以下のような人にも適しているでしょう。

・手間と時間をかけずに安定した収益を得たい人
・投資金額以外に余分なお金は使いたくない人
・いざという時に早期の現金化を望む人

不動産投資信託と実物不動産投資の違い

不動産投資信託と実物不動産投資の違いは以下のとおりです。
不動産投資信託実物不動産投資
資金少額から始められるある程度まとまった金額が必要
管理・運用プロに一任できる自身で行う範囲を決める
相続対策相続対策には効果が期待できない不動産の評価減効果を活用可能
流動性高い低い
リスク倒産、上場廃止、分配金下落空室、家賃滞納、金利上昇
実物不動産投資の場合、ある程度まとまった資金が必要となるほか、管理業務のどこまでを自分で行うのか決めなければなりません。実物不動産投資は形に残る財産となることに加え、相続対策などにも役立ちますが、それ相応の労力と時間が必要になるのは確かです。

不動産投資信託と不動産投資型クラウドファンディングの違い

不動産投資信託と不動産投資型クラウドファンディングの違いは以下のとおりです。
不動産投資信託不動産投資型クラウドファンディング
資金少額から始められる少額から始められる
管理・運用プロに一任できるプロに一任できる
流動性高い低い(※投資運用期間中は資金を引き出せない)
選択肢の多さ多い不動産投資信託と比べて少ない
元本割れリスク不動産投資型クラウドファンディングと比較して高い低い
不動産投資型クラウドファンディングとは、運用会社が複数の投資家から出資を募り、集まった資金をもとに不動産投資を行う投資手法のことです。

不動産投資信託ではファンドとして複数の資産に一括で投資する一方、不動産クラウドファンディングでは自分が投資したい物件に直接投資できるといった違いがあります。

不動産投資信託を始める方法

不動産投資信託を始める方法と、銘柄の選び方について解説します。

証券会社に口座を開設する

不動産投資信託を購入するには、証券会社で口座を開設しなければなりません。自分が口座を開設したい証券会社を決め、所定の手続きに従って口座開設準備を進めましょう。

なお、よほどのこだわりがない限りはPCやスマホから簡単に取り引きができ、取り引き手数料も安く設定されているネット証券を選ぶのがおすすめです。

不動産投資信託の銘柄の選び方

株の銘柄に比べれば不動産投資信託の銘柄は少ないものの、どの銘柄を選べばよいのか悩んでしまう方も多いかもしれません。不動産投資信託の銘柄を選ぶ際は以下の点に留意するとよいでしょう。

・投資先不動産の種類を確認する
・利回りや時価総額などの諸条件をチェックする
・市場の流れを捉える

不動産投資信託はどの物件タイプを選択するかによって、リスクはもちろん収益性も異なります。複数の銘柄を比較検討したうえで、自分のニーズに見合った商品を選ぶことが大切です。

また、時価総額が大きいければ大きいほど、その不動産投資信託に投資している人が多いことを表しています。値動きのリスクが低いほか、倒産や上場廃止といったリスクにも強いといえるでしょう。

まとめ

今回の記事では不動産投資信託の仕組みやメリット、デメリットについて解説しました。不動産投資信託は少額から投資できるほか、対象不動産を実際に所有する訳ではないため、維持管理にかかるコストを抑えられる点が特徴だといえるでしょう。

もちろん、価格変動リスクや上場廃止、倒産リスクといった点に注意は必要ですが、比較的少額から投資できる商品であるため、実物不動産投資は怖いけれど不動産投資には興味があるといった人にはおすすめです。この機会にぜひ、始めてみてはいかがでしょうか。

借入金なしで手軽に始められる投資のひとつとして
不動産投資信託(REIT)を検討してみてはいかが?

この記事の監修者

八木エミリー
八木エミリー

証券外務員一種/2級FP技能士

新卒時に野村證券入社。新人時に営業成績東海地方1位を獲得。2016年より不動産を購入。現在7棟を所有。2019年より独立系ファイナンシャルアドバイザーとして主に富裕層向けに資産活用のアドバイスを行うほか、一部上場企業の社員向けセミナー講師としても活躍。オンラインサロン「em会」にて金融知識の啓蒙に務める傍ら、地域活性事業など活動も行う。東京駅に近いバイリンガルスクール「WONDER KIDS BILINGUAL PREP SCHOOL」オーナー。「元証券ウーマンが不動産投資で7億円」など執筆。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。