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不動産投資の経費計上で節税する裏ワザはない!
賃貸に出している区分マンションの年間の賃料収入が100万円あった場合、マンションの管理費や修繕積立金、マンションの購入の際に利用したローンのうち建物に充当したローン金利などが経費に該当。中でも減価償却費というものがあり、経費としての割合を大きく占める場合があります。
後ほど詳しくはお伝えしますが、減価償却費は建物の法定耐用年数の期間、一定の割合で毎年減価償却されますので、その分を他の経費と合算して計上することで節税が可能になります。
<簡易計算例>
年間賃料収入100万円-経費(管理費・修繕積立金・ローン金利分減価償却費他)100万円=0円(年間100万円の賃料収入を得るのに経費が年間100万円かかったから利益はゼロ円)
減価償却の仕組み
不動産投資で見ていくと、不動産という資産の取得価格を使用可能期間に当たる法定耐用年数の期間に応じて必要経費に配分することを指します。
(青色申告の承認を受けている場合は、一個30万円未満の物については年間300万円まで支払時の費用にしてよいことになっています。)
償却の方法は資産を取得した年月日によって異なる
平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産 |
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「旧定額法」や「旧定率法」などの償却方法で算出します。 |
平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産 |
「「定額法」や「定率法」などの償却方法で減価償却を行い、平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は、旧定額法または定額法のみとなります。 |
平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物 |
償却方法は定額法となります。なお、上記の取得には、購入や自己の建設によるもののほか、相続、遺贈または贈与によるものも含まれます。 |
<簡易計算例>
マンション建物分の価格(建物附属設備除く):
2,500万円×1/47(償却期間47年の1年分)≒53.19万円⇒1年間の減価償却費
経費はいくらまで?不動産投資で経費にできる/できないもの
不動産投資は物件を買って人に貸すというものですが、買った時にかかった費用を経費計上することができます。たとえば、不動産取得税、火災保険料、登記費用、ローンの諸費用などがこれに当たります。
ただ、こうした項目は購入時でしか経費計上できないものが多いものです。これに加えて物件を保有していれば、マンションの場合では管理費や修繕積立金、固定資産税、減価償却費などが該当します。
逆に経費計上できないものとしては、所得税や住民税など不動産投資とは全く関係ないものが該当します。
減価償却費を増やす方法①耐用年数の過ぎた物件を購入する
法定耐用年数が既に超えた場合にはその耐用年数の20%が償却期間とされています。先ほどの事例に揚げたRCマンションの場合、耐用年数が47年ですが、47年経過した物件を買うと耐用年数は47年×20%=9.4年となります。
つまり、築47年のマンションでも減価償却期間は9.4年ということになり、その間は減価償却費が発生して経費計上ができます。
仮に、2000万円で築47年のマンションを買うと償却期間は9.4年となり、1年間で(2000万円÷9.4年=212.76万円)約212万円の減価償却費が経費計上できることになります。
注意点:融資を受けにくい
建物の耐用年数は、銀行が融資を実行する際の基準のひとつです。耐用年数を超えた物件は建物としての価値が下がる可能性があり、融資に影響がでることがあります。
また、 耐用年数を超えた物件を購入する場合、ほかに保有している不動産を担保にすることを求められる可能性や融資に対しての連帯保証人を求められる場合もあります。
したがって、耐用年数が過ぎた築古物件を格安で手に入れたとしても、出口が取りづらい(売却時に買い手側の融資が付かないなどで売れない)場合もありますので注意すべきです。
減価償却費を増やす方法②建物割合が高い物件を選ぶ
となれば、土地の市場価格が安い場所を選ぶということになりますが、一概に土地の市場価格が安いところに賃貸需要が旺盛かどうかは何とも言えません。
したがって、節税のために建物価格の割合が大きな不動産を購入すると言ってもそう簡単にはいかないのが現実です。また、マンション売買の際に土地と建物の按分をするわけですが、中古物件の場合には建物の割合を多くしてしまう場合もあります。
建物の固定資産税評価額からみて極端に建物価格が高いとなれば、評価額に対する物件価格の整合性に欠けますので注意しておくべきでしょう。
注意点:売却価格が低くなる可能性がある
したがって、不動産価格も安定し、下落リスクや空室のリスクも少ないといえます。ところが土地の価格が安い物件では確かに節税はうまくできたとしても、いざ物件を売却したいとなれば売却価格が希望値で売れるかわかりません。
不動産に対する売買・賃貸の需要があれば出口も取りやすいのですが、こうした不動産需要が少ないとなれば厳しい現実が待っていることなります。
そのほか不動産投資で節税する方法
損益通算
不動産所得は総合課税に該当し、給与所得の他に利子所得や配当所得、不動産所得などがこれに該当します。これらの所得を合算して所得税の計算がされます。
不動産所得は給与所得と合算してトータルの所得を計算することになり、合算した金額に対して所得税が計算されます。
こうした点を踏まえて、不動産所得で赤字になった際には給与所得と合算することになり損益通算をして所得税を計算することになります。
たとえば、給与所得が1000万円で不動産所得が赤字で400万円のマイナスとなれば、損益通算をして総合所得が600万円となり、この金額に対して所得税が課税されます。この方法では不動産投資をして所得税を節税するということができます。
<簡易計算例>
給与所得1000万円、不動産所得▲300万円
年間賃料収入200万円-経費(管理費・修繕積立金・ローン金利分減価償却費他)500万円=▲300万円(年間200万円の賃料収入を得るのに経費が年間500万円かかったから利益はマイナスで赤字となり▲300万円) |
給与所得1000万円+不動産所得▲300万円=700万円
⇒この金額で所得税が課税されます。
青色申告
青色申告のメリットとしては青色申告特別控除があります。条件を満たせば、最大65万円の所得控除があり、所得税だけではなく住民税や国民健康保険料などの引き下げが期待できます。条件としては、複式簿記の採用、確定申告書に貸借対照表、損益計算書の添付等があります。
また、専従者給与に関しては、白色申告の場合、配偶者は86万円までですが、青色申告の場合は、労働の対価としてふさわしいものであれば、上限はなく全額必要経費に算入できます。さらに、損失が出た場合は、損失を3年間繰り越すことができます。
65万円の青色申告控除を受けるための条件
この65万円の青色申告特別控除を受けるためには、2つの要件を満たす必要があります。1つは事業的規模で経営し、正規の簿記(複式簿記)の原則により記帳を行い、かつ確定申告書類に貸借対照表および損益計算書を添付し、申告期限内に提出した場合。
もう1つはe-Taxによる電子申告か電子帳簿保存法を適用している場合となります。上記のうち、初めの条件のみの場合は55万円、両方の要件を満たしていない場合は10万円になります。
節税のし過ぎは要注意!
また、経費を多く計上して不動産所得の収支が赤字として申告する場合には、節税のメリットはありますが、次の物件を買う場合の融資が難しくなる場合もありますので注意しておくことです。
経費の計上には不動産所得を得るためにかかる費用と考えますので、常識的な範囲内で考えておくべきでしょう。申告内容に不自然な箇所が見つかれば調査対象になりかねません。
まとめ
たとえば、サラリーマンの場合、給与所得との損益通算を行うことで所得税の節税ができますが、物件の保有期間が長くなれば経費計上できる項目も限られてきますので大幅な節税とはいかないのが現実です。
ただ、給与所得が高額な人であれば、所得税も高額になりますので、不動産投資を節税のツールとして利用するメリットはあります。
なお、税金の詳細を確認する場合には、最寄りの税務署や税理士に相談することをお勧めいたします。
節税のための裏ワザはありません!
しかるべき方法で経費計上や青色申告などを行いましょう。
この記事の監修者
不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー
アネシスプランニング株式会社 代表取締役。住宅コンサルタント、住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務後、2006年に同社を設立。
個人住宅・賃貸住宅の建築や不動産売却・購入、ファイナンスなどのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、3000件以上の相談を受けている。
WEBメディアに不動産投資についてのコラムを多数寄稿。著書に「不動産投資は出口戦略が9割」「不動産投資の曲がり角 で、どうする?」(クロスメディア・パブリッシング)など。
耐用年数の過ぎた物件にはデメリットもあります。たとえば、銀行からの融資が受けにくい、建物のメンテナンス費用がかかる、リフォームができない可能性があるなど注意してください。