- 空室リスクをはじめとしたさまざまなリスクに備えるためにも、賃貸需要の調査は不可欠です。
- ポータルサイトや人口統計などネットで調べたうえで、実際に現地に足を運び、不動産会社などにヒアリングしましょう。
- 長期的視野でエリアや物件自体のマーケティングをすることで、不動産投資の成功率は高まります。
目次
投資物件を決める時、賃貸需要の調査は不可欠!
不動産投資は不動産を活用した事業です。不動産投資に関わらず、ニーズの有無やどのような内容が期待されているかを確認せずに事業展開しても、消費者に振り向いてもらえない可能性があることは想像に難くないでしょう。
賃貸需要の調査をする目的やどのような調査が必要かについてご説明します。
空室リスクをできる限り回避するため
そのような事態を回避するためにも、以下のような需要を調査してみましょう。
エリアに賃貸需要があるか調査
最寄り駅、スーパー、病院、教育施設など生活利便施設へのアクセスはどうか、住環境としての需要や安全性などがあるかどうか、実際に物件周辺を歩いてみたり、地図上で確認したり、エリアに賃貸需要や魅力があるかどうかを調査してみるとよいでしょう。
物件に賃貸需要があるか調査
需要のある入居者層をターゲットとした家賃相場、間取りや設備のトレンドなどについても調査を行い、どこまで反映させるかを検討する必要もあります。
賃貸需要を調べる4つの方法
1.ポータルサイトで調べる
いずれのポータルサイトにおいても、条件を絞り込んで物件検索を行うことができます。その機能を活用すれば不動産投資を検討しているエリアにおける類似物件(間取や立地、広さなどが近しい物件)の家賃がどれくらいなのかを確認することができるので、おおむねの家賃相場を把握することもできます。
また、同時に、掲載されている物件がどのような設備を備えているのかについても確認しておくとよいでしょう。
2.人口統計などで調べる
不動産投資で見ておきたい統計には用途に応じてさまざまなものがあります。エリアにおける人の動きが活発であるかどうかを確認できる統計の一例を示しておきますので、目を通してみるとよいでしょう。
統計 | 管轄 | 概要 |
---|---|---|
国勢調査 | 総務省 | 人口増減率の推移、地域別の人口増減率の推移、家族別の割合推移など |
将来人口推計 | 国立社会保障・人口問題研究所 | 日本全域の将来の人口規模、男女・年齢構成の推移 |
住民基本台帳 | 総務省 | 人口、人口動態および世帯数 |
住宅土地統計調査 | 総務省 | 空家率など |
駅別乗降客数データ | 国土交通省 | 全国の鉄道事業者から収集した駅別乗降客数 |
3.不動産会社へのヒアリングで調べる
どのような入居者層が多いのか、どのような設備がある賃貸物件が好まれるのか、築年数や利便性に不利な条件があっても人気がある物件の共通点など、地元の不動産会社にヒアリングしてみましょう。
不動産会社だから知っている情報も取り入れながら、どのような賃貸物件に需要があるのか、イメージをさらに具体化させていくことができます。
不動産会社にはそれぞれ強みがあります。不動産投資を検討しているエリアの賃貸に強みを持つ不動産会社を探すためにも、ヒアリングの際には複数の不動産会社を訪問してみるとよいでしょう。
また、実際に不動産投資を始める際には、入居者探しにおいても不動産会社にお世話になる可能性があります。感じのよい接客をする会社か否か、良きパートナーとなってくれそうか否かという視点も持ちながらヒアリングを行ってみましょう。
4.再開発計画を調べる
新駅設置などの大規模な計画以外だけではなく、新店舗の出店なども住みやすさにつながるでしょう。不動産投資を検討しているエリアを歩いてみると、開発や建築計画の立て看板に出会うこともあるので、どのような施設が建設予定なのかチェックしてみるのも面白いですね。
賃貸需要を調べる時の注意点は
未来の大家さんとして主体的に調査を行う上で、注意しておきたいポイントは以下のとおりです。
ターゲットをしぼる
まずは不動産投資を検討しているエリアにおいて、どのような入居者層からのニーズが多いのか、取得しようとしている物件がそのニーズにマッチしているのかを確認しましょう。
そもそも学生や単身者のニーズが多いエリアで、いくら立派なファミリー世帯向けの広い賃貸物件を展開しても、ニーズにマッチしなければ入居者は望めないでしょう。入居者層によって広告媒体や広告で訴求する内容も異なってきます。ターゲットとする入居者層にどのような住環境が望まれているのかを考えてみましょう。
入居者層に訴求する環境があるかを調べる
単身者をターゲットとする入居者層であれば、分かりやすいのは大学などの教育施設。教育施設の周辺で1人暮らしをする人が多ければ単身用の賃貸物件の賃貸需要が望めます。また、大きな企業や商業施設などが集まるターミナル駅などへの交通利便性が高ければ、会社員の通勤のニーズも高いでしょう。
ファミリー層がターゲットとする入居者層であれば、子どもの教育施設へのアクセスや子育てしやすい住環境(公園、児童センターなど)の有無、行政の子育て支援などが訴求する環境の例として挙げられます。
不動産会社にヒアリングをする際に、不動産投資を検討しているエリアの賃貸物件に住んでいる方は、どのような環境を求めて住んでいるのかについても確認してみるのも一案です。
ハザードマップを確認する
ハザードマップを確認する目的は災害リスクの小さい場所で不動産投資を行うことで、みずから所有する不動産の災害リスクを小さくするだけではありません。そこに居住する入居者の命を守るという視点や災害リスクが想定される場合の対策のためにもハザードマップの確認は大切です。
現地調査をする
また、日中のみならず、早朝や夜など時間を変えても治安の良し悪しに変化はないのか、実際に暮らす場合に生活利便施設の使い勝手はどうなのかなど、実際に入居者の立場になって住環境としてのリスクはないかを調査してみる視点も大切にしましょう。
これからの賃貸需要の展望は
しかし、賃貸需要の展望は、人口増減だけに着目するものではありません。実は、これからも賃貸需要は伸びていく可能性があります。その可能性をうまくつかみとるために、どのようなポイントから賃貸需要の展望について考えればよいかについてご説明します。
世帯数動向
![](/press/system/press_image/2024/01/11/Bqa7ZIHY9OmUo903PrF4D1T-LseZGxH7HyKezfuQqHA/trim/b6e512a6b172d8405d31013b7f587c28_m.png)
人口減少にスポットを当てると不動産投資の将来性に暗さを感じるかもしれません。しかし、先ほどご説明したように世帯数にスポットを当てると、不動産投資の明るい展望が見えてきます。
人口動態
![](/press/system/press_image/2024/01/11/Bqa7ZIHY9OmUo903PrF4D1T-LseZGxH7HyKezfuQqHA/trim/c4108b7440fbd5b8ee5180222294ad95_m.png)
住民基本台帳人口移動報告では、市区町村別に転入者数がどれくらいあるのかを総数及び年齢層別に示している資料もあります。このような資料を見て、不動産投資の検討を行っているエリアにおける将来性をじっくりと確認し、判断の目安にしてみるのも一案です。
まとめ
エリアに将来性や不動産投資の適性があるか否か、そのエリアの需要に合わせた賃貸物件にはどのようなコンテンツ(間取り、設備、サービスなど)が必要なのかを不動産投資を始める前に、じっくりと検討する必要があります。
インターネットで国の統計データや不動産ポータルサイトの情報にアクセスできるため、手軽に情報収集をすることもできますし、その情報をもとに不動産会社にヒアリングを行えば、より現実に即した情報を得ることもできるでしょう。
この記事の監修者
![吉崎 誠二](/press/system/press_image/2022/08/02/Fv6gGv5QIj5qr8ER5efC2Ns5yHuUsuxpVxnjE_AvyRs/trim/3e321d988db3c80267d35991b709bdc1_m.png)
不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。
著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。
住宅需要を見定めるには、人口よりも世帯数に注目してください。世帯数データには、世帯総計だけでなく世帯類型(単独世帯、家族世帯等)別に分かれているものもあります。投資する物件の間取りや広さに応じた入居世帯を想定し、それに該当する世帯数を調べるといいでしょう。また、世帯類型ごとの将来推計も公表されていますので、それも合わせて参考にしてください。