不動産投資用に違法建築物件を買ってしまったら?事例とリスクを解説します

2024.07.19更新

この記事の監修者

アユカワタカヲ
アユカワタカヲ

宅地建物取引士/AFP/J-REC公認 不動産コンサルタントなど

不動産投資用に違法建築物件を買ってしまったら?事例とリスクを解説します

違法建築物件の落とし穴、知っていますか?違法建築物件を購入してしまうリスクやデメリット。正しい見分け方を解説します。

この記事のポイント
  • 違法建築物件といってもいくつか種類がありますが、中にはリスクが大きいものもあるため注意が必要です。
  • 大きなリスクを負わないためにも、検査済証が発行されているか必ず確認しましょう。
  • 物件を正しく見極めるために、専門家の意見を取り入れることをおすすめします。

目次

違法建築物件とは?|違法建築の種類

違法建築物件とは、その名の通り、法律の基準を満たしていない建物のことです。

しかし、一概に「違法=投資NG」という事ではありません。違反内容によっては、投資の選択肢として考えても良いケースも存在しますが、リスクは大きくなります。まずは、違法建築とはどんな物件なのかをご説明します。

工務店・ハウスメーカーの完了検査を受けていない

完了検査は、工事完了後の建築物が法的基準を満たしているかを確認するプロセスです。義務づけられているため、完了検査を受けていない、または合格していない物件は、法的に問題のある違法建築の可能性が高まります。検査を通過すると検査済証が発行されますので、これがない場合は、注意してください。

逆に、建物が違法建築でない事を証明する、最も簡単な方法が検査済証を確認することとも言えます。

増改築をしている

増改築は、建物の利用価値を向上させるために行われることが多いですが、法律に定められた制約を遵守しない場合、違法建築になる可能性は高まります。

10m2超の増改築には、確認申請が必須となりますが、無許可での増築ケースも存在します。とくに倉庫や事務所、貸店舗に多く見られます。マンションなどでは、工事の複雑さから違法増築は少ないです。

無許可増築は行政に発覚すれば撤去命令が出ることがあり、大きな費用がかかるリスクがありますので、物件取得時には、増築の確認と申請の有無を確かめることが重要です。

建ぺい率を超えている

建ぺい率は敷地面積に対する建物面積の割合のことです。各地域の条例で決まっており、通常30%から80%の範囲で制限されています。これを超えている建築物は違法となります。

たとえば、敷地面積が300m2で、建ぺい率が60%と定められている場合、1階の建築面積は180m2以下でなければなりません。

また、容積率というものもあり、これは、敷地面積に対する「建築物の各階の床面積を合計した延べ床面積」の割合になります。建ぺい率同様に上限があり、それを超えると違法建築となります。

建築確認が実施されていない

建築確認とは、法令で定められたとおりに建築計画がされているか工事の着手前に行われる確認のことで、確認が行われると確認済証が交付されます。この確認済証がされないと工事は着手されません。

上でも述べましたが、増築する際も確認申請を行わなかった場合は、違法増築になります。また、建築時に提出した図面と異なる構造や仕様になっていたり、許可を受けた用途と異なったりしていれば、違法建築になります。

接道義務違反である

接道義務とは、敷地に建物を建てる場合、建築基準法に定められた道路に2メートル以上接していなければならないという決まりのことです。奥まった路地上の土地でも、道路に面する通路の間口が2メートル以上あることが求められます。

接道義務は、安全上の理由で、緊急車両の通行の確保と災害時の避難路の確保のためのものです。基本的に、接道義務をクリアしていない敷地での建築は認められません。進行中の工事が中断させられたり、場合によっては建物の撤去や再建築が求められたりすることも考えられます。

違法建築物件は、古い物件や地方の物件で意外に多く散見されますので、ご注意ください。

アユカワタカヲ
アユカワタカヲ

既存不適格建築物件と違法建築物件の違い

よく間違われるのが「既存不適格建築物件」と「違法建築物件」です。どう違うのでしょうか。

「既存不適格建築物」

建築された当時は法律を満たしていましたが、その後、法律の改正により、基準を満たしていないものを指します。たとえば、1981年の耐震基準改正以前の建物は「旧耐震基準」として知られ、現在の基準には合致していない可能性があります。

ただし、これらの物件は違法ではありません。現状を維持するのに問題はありませんが、増築や改築をする場合は注意が必要です。

「違法建築物件」

建築された時点で法律に違反している物件を指します。これは不法行為であり、取り壊しや改築の命令が下されることがあります。

両者の区別は、不動産取引やリフォームの際に非常に重要となります。違法建築物は法的なトラブルのリスクがありますので、購入や相続を考える際は、十分な調査が必要です。

違法建築物件を購入・所有するデメリットとリスク

違法建築物件だから不動産投資が出来ないという訳ではありません。ただし、違法建築物件の購入は、多くのリスクが伴います。ここでは、違法建築物件を購入・所有することのデメリットとリスクを解説しましょう。

行政から是正勧告が入る可能性がある

違法建築物件を所有していると、行政から是正勧告を出されることがあります。たとえば、建物の高さや延べ床面積の変更などの要求がされることが考えられます。

違法建築物件と知らされて購入した物件も対象となり、自己負担での改築が必要となることがあります。

違法建築物件の改築は、違反の程度に応じて多大な出費がかかることが予想されます。最悪のケースとして、取り壊しの命令が出ることも考えられますし、行政代執行で解体され、その多大な費用を請求されることもあります。

売却が難しくなる可能性がある

当然のことですが、違法建築の物件は買い手が付きにくいのが一般的です。物件を売ろうとして売却価格を大きく下げると、最終的に不動産投資を損して終えることとなる可能性があります。

取得するときは安くてお得と思えても、出口戦略で失敗する可能性が高くなるので注意が必要です。

融資を受けにくくなる

違法建築の物件は、金融機関からの融資が難しくなります。ノンバンクなどからの融資がある場合でも、金利は高めとなり、多くの自己資金が必要となることが予想されます。

違法建築の物件は、安さが魅力として映るかもしれませんが、高金利や自己資金の増加により、その魅力は相対的に減少します。

また、近年のコンプライアンスの強化により、多くの金融機関が違法建築物件への融資を避けており、これが投資の大きなリスクとなっています。

ごく一部の金融機関ですが、収益性を重視して、違法建築物件・既存不適格建築物件でも融資してくれるところもあります。

アユカワタカヲ
アユカワタカヲ

違法建築物件を買ってしまった事例と対策例

実際に違法建築物件を買ってしまった場合、どんなケースがあるのでしょうか?具体的な事例を紹介しましょう。

【事例1】違法性が高く行政から取り壊し命令が出た

投資家Aさんは、アパートの一棟を格安でお得、という理由で購入しました。しかし、購入後にその物件が建築基準法に明らかに違反していることが判明。

適切な建築許可なく増築や改築を行っていたため、建ぺい率や容積率を超えた違法増築、また耐火構造や避難経路が不適切であること、近隣の日照権を侵害しているなど、重大な問題が浮上しました。これらの違法行為により、行政から取り壊し命令を受け、結果として大きな負債が残る事態となってしまいました。

こうならないためには、物件購入を検討する際には必ず事前に検査済証を確認することが必要です。

【事例2】建ぺい率がオーバーしていてリフォームが必要になった

投資家Bさんは、中古のアパートを一棟買いするチャンスに出会い、購入しました。ところが、後にそのアパートの建ぺい率が制限を超えていたことが発覚。敷地内に後からカーポートを追加したことが原因です。

その為ため、カーポートを建て替える事になり、大きな出費が伴いました。結果、キャッシュフローがマイナスになってしまったのです。

対処方法としては、中古の物件を購入する際、見た目や価格だけで判断せず、事前に建築確認済証などを確認し、必要であれば専門家に意見を求めることで、後々のトラブルや損失を避ける事が出来ます。

【事例3】違法建築物件と知らずに購入しそうになった

投資家Cさんは、違法建築物件との認識なしに購入を進めました。ところが、契約成立後、物件が違法建築であることが判明。売主はCさんに違法建築の事実を隠していた為、Cさんは契約取り消しを選択しました。

売主には、購入の意思決定に重要な情報を故意に隠蔽することは禁じられていますので、この場合は、契約の取り消しや解除となって然るべきです。

このようなトラブルを未然に防ぐためには、購入者は検査済証や増改築の登記情報を前もって確認しておくことが大切です。疑問点や不明点があれば専門家や弁護士の意見を求めましょう。

契約不適合責任とは?

もし、違法建築物件と知らずに購入してしまった場合、契約不適合責任を検討することが出来ます。これは、売主が買主に約束した契約内容に対して物件が適合していない場合の責任を指します。具体的には、物件に欠陥があることを知りながら、これを隠蔽して契約を結ぶ行為がこれに該当します。

違法物件の売却に際しては、売主及び売主側の不動産業者には告知義務があります。不動産や周辺地域に買主の購入判断を左右するような情報や欠陥が存在する場合、これを明示的に伝える必要があるという義務です。

違法物件であることを、買主が購入後に知った場合、買主は契約不適合責任を主張することができ、売買契約の取消や損害賠償を求めることが出来ます。

違法建築かどうか見分ける方法

不動産投資においては、適切な物件選びが成功の鍵となります。違法建築物件を購入してしまうリスクを避けるためにはどうすればいいのでしょうか?識別のためには以下の方法を推奨します。

確認済証・検査済証があるか確認する

上でも述べましたが、確認済証は、建築物が計画段階で各種法令に適合しているかを確認するための証明書です。これがあれば、少なくとも計画時点での法令適合が確認されています。

そして、検査済証は、建築物の工事が完了した後、実際に建築物が法令に適合しているかを確認した結果が記されています。

この2つを確認することが、違法建築物件を避けるためにはとても重要です。

増築・改築の登記登録がされているか確認する

違法建築物件を避けるためには、物件の増築や改築の登記が行われているかの確認は必須です。物件の変更が正式に記録され、所有者や物件の詳細が公に明示されることを確認してください。法務局や登記所での登記簿謄本を通じて確認可能です。

不正確な登記は、将来的な権利トラブルの原因となる可能性があります。また、適切な登記がない物件を購入すると、後から手続きの必要が生じることがあります。

専門家に相談をする

不動産投資の際、専門家の意見を取り入れることは有益です。投資仲間、不動産会社、不動産コンサルタント、そして一級建築士などのプロのアドバイスにより、物件の法令適合、状態、さらには将来のリスクを正確に把握することが可能となり、安心して投資判断を下すことができます。

私自身はこれまで違法建築物件・既存不適格建築物件を購入した経験はありません。やはり将来のリスクを考えると、なかなかハードルが高いなあと、考えてしまうからです。

アユカワタカヲ
アユカワタカヲ

まとめ

不動産投資を検討する際には、違法建築物件であるかどうかの確認は避けて通れない大事なステップです。物件の正当性や将来的なリスクを洗い出して正しい物件を選ぶことが、不動産投資での成功へするための第一歩です。

不動産にはさまざまな法規制があります。
購入前に見極めること がリスクヘッジになります。

この記事の監修者

アユカワタカヲ
アユカワタカヲ

宅地建物取引士/AFP/J-REC公認 不動産コンサルタントなど

2010年、世田谷区内の中古区分ワンルームマンション購入から不動産投資をスタート。区分・一棟・戸建て・日本・海外…と幅広く不動産賃貸業を営む(2022年3月時点)。

現在は総合マネープロデューサーとして、人生におけるマネーリテラシーの重要性をメディアやセミナーなどで伝えている。年間のセミナー登壇数は300本を超える。

「満室バンザイ」(平成出版)、「不動産はあなたの人生を変えてくれる魔法使い 女性の願いを叶えてくれる最幸マイホーム購入術」(ごきげんビジネス出版)など執筆。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。