不動産投資で借金地獄!?失敗事例と対策方法を解説します

2024.07.19更新

この記事の監修者

寺岡 孝
寺岡 孝

不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー

不動産投資で借金地獄!?失敗事例と対策方法を解説します

不動産投資を始めてもキャッシュフローがマイナスで借金地獄に陥る場合があります。ここでは失敗事例と対策を解説していきます。

身の丈に合わない借金を負う前に
リスクマネジメントをすることが大切です。

目次

不動産投資で言われる借金地獄とは?

不動産投資を始めてみたが、思っていたよりもキャッシュフローがマイナスに傾いてしまい、最悪の場合には返済ができない状態になる場合があります。いわゆる借金地獄に陥っている状態と言えます。

ここからは借金地獄になってしまう流れを解説していきます。

借金が膨み利子も返済することができない

不動産投資では高額なローンを組んで物件を購入するケースが多いのですが、何らかの理由で賃料が入ってこないとローンの返済ができなくなります。数億の借金をしているとその利息だけでも馬鹿になりません。利息が払えない状況が続くと、結果的に借金地獄に陥ります。

多重債務になっている

不動産投資の借金だけであればいいのですが、住宅ローンやカードローン、クレジットの利用でいわゆる多重債務に陥ってしまう場合があります。

手元資金や給与収入よりも借金の返済が多くなってしまうと、元金がそう簡単には減らないのでずっと返済し続けることとなり、最悪の場合は自己破産ということになりかねません。

借金地獄から抜け出せない場合は自己破産も…

多重債務に陥ってしまい返済もままならないと最終的には自己破産の可能性があります。

借金地獄になってしまっても自己破産すれば何とかなるだろうと考えがちですが、自己破産するにも条件があります。ここからは自己破産について少し触れておきましょう。

【自己破産とは】

自己破産とは裁判所を通じて財産を清算し借金を免除してもらうことです。一般的に「破産手続をとれば借金が免除される」と認識されることが多いですが、厳密にいうとそうではありません。

一般的には、破産手続は「破産」という手続きと「免責」という手続きに分けられ、破産手続は、財産を処分(換価=現金化)して債権者に配当するという手続きになり、それでも残ってしまった借金を免除してもらうのが免責手続になります。

この2つの手続きが基本的にセットで行なわれるため、破産・免責手続を単に「破産」と呼ぶことが一般的です。

自己破産の条件

法律での自己破産をするための条件は『債務者が支払い不能にあるとき』とされています。生活状況や資産状況は人それぞれですので、借金がいくらだったら支払い不能という決まりはありません。

借金を免除してもらう免責手続では、借金をしてしまった理由を問われることになります。たとえば、「収入が下がってしまって生活費が不足してしまったために借金が膨らんでしまった」という事情であれば免責されやすいですが「ギャンブルが原因で作ってしまった借金」ということになると免責されづらい、もしくは、免責されないこともあります。

このような事情を「免責不許可事由」といい、主に以下のようなものが挙げられます。
・ギャンブル(競馬、パチンコなど)
・換金行為(クレジットで商品を購入して、すぐに転売してしまうような行為)
・名義貸し(自分は借金する必要が無いのに他人のためにカードを作って使わせるような行為)
・株・先物取引

ただし、「免責不許可事由」に該当すると絶対に免責されないとは言い切れず、裁判所の判断を仰ぐことになります。

自己破産になるとどうなるか?

自己破産をしたという情報は信用情報機関に事故情報として5~10年の間は登録されるため、その期間は審査が通らず各ローンなどを組むことができませんし、破産した人の住所、氏名が官報にも掲載されます。

また、破産開始決定により人の財産にかかわる資格(弁護士・公認会計士・生命保険募集人・宅地建物取引主任者・警備員など)について手続中は資格を使用した仕事ができなくなります。

また、めぼしい財産があれば処分する必要があります。たとえば、99万円を超える高額な現金は処分対象になります。そのほか、自己破産では色々と条件があることを把握しておきましょう。

返済ができないと自己破産すれば解決できると思いがちですが、そう簡単に自己破産はできないのが現実です。上記のように条件などが意外に厳しいので注意すべきです。

寺岡 孝
寺岡 孝

不動産投資で借金地獄に陥った事例

不動産投資で借金地獄に陥ったケースはどういったものなのか、実際に相談に来られた方の事例を見ながら解説していきます。

【事例1】詐欺まがいの物件を高値で購入してしまった

Aさんはある不動産会社の誘導で、某銀行のアパートローンを利用して物件を購入しました。「自己資金はゼロ円で不動産投資ができる!」という誘い文句になっていました。

購入した物件は1億円ほどの1棟モノの中古マンションで、借入金は約9,000万円。登記の経緯から見れば、誘導された不動産会社の所有権登記はありませんでした。物件自体の不動産の担保評価は概ね7,000万円以下とみられましたが、9,000万円もの高額融資付きであり、これは、いわゆる三為の不動産会社から買ってしまったわけで、この不動産会社はこの1取引で数千万円の儲けがあったのでしょう。

Aさんは物件を買った当初はキャッシュフローがうまくいっていると思っていましたが、なかなかお金が貯まらない状況でした。そんな矢先空室が立て続けに発生したため、修繕の費用請求や、入居募集のための高額な広告費がかかりあっという間に借金地獄に陥りました。

現在では、ローン金利の引き下げを某銀行にしてもらい、ようやく収支はプラマイゼロ、何か大きな修繕や長期の空室が出てしまうと再び経営は厳しくなります。そのため、早期にこの不動産投資から退場できるように物件を売りに出しています。

【事例2】フラット35の不正利用がバレてローンの一括返済を迫られた

Bさんは若手サラリーマン。中古の築20年以上のファミリータイプのマンションを投資用マンションだからと言われ、フラット35で購入してしまいました。

購入物件は市況では2,000万円程度の価格のものでしたが、フルリノベして3,000万円以上の売値で買わされてしまったのです。しかも、フラット35の融資だけでは賄い切れない分を高金利の住宅ローンで充当させられてしまいました。

このスキームで中古マンションを買わせた不動産投会社は、現在、連絡が取れない状況です。おそらく、この不動産会社はいわゆる三為業者で、少なくとも1,500万円程度は利益を抜いていたと思われます。

買った当初は入居者もいたので賃料は入ってきたのですが、フラット35の不正利用が発覚し、住宅支援機構から一括返済を求められてしまったのです。一括返済をすれば賃料は丸々自分のお金にはなりますが、到底、手元資金ではローンの一括返済はできないため、物件を売却せざるを得ない状況となりました。

しかし、売却金だけでは一括返済できなかったため無担保のローンを借りる羽目に合い、売却した今も借金地獄に陥っています。

フラット35のような住宅ローンを使って、不動産投資物件を買うことはよくありません。この事例のように住宅支援機構などにバレてしまうと一括返済を求められますので利用しない方が得策です。住宅ローンで不動産投資物件の購入を勧める会社や担当者には注意すべきです。

寺岡 孝
寺岡 孝

【事例3】サブリース業者が倒産してしまった

実際に、私のところに相談に来た事例です。

「2011年に投資用のワンルームマンション3戸を購入。さらに最近、居住用に3,900万円の一戸建てを購入しました。購入した3戸のマンションについていろいろ調べているうちに、どんでもないものに手をつけてしまったことに気づき、とても後悔しています。

この人は大企業に勤めるサラリーマンで年齢は28歳で年収500万円、貯金が250万円。新宿と目黒と三鷹のマンションを購入し、残債はトータルで6,500万円。これに自宅のローン3,500万円が加わり、借金は計1億円に膨れ上がっていました。

この投資マンションを販売した不動産会社はかなりいい加減で、入居者の管理をするサブリース業者が潰れてしまったにも関わらず、オーナーにそのことを知らせていませんでした。次のサブリース業者も決まらないまま、宙ぶらりんの状態でしばらく放置されていたのです。そんな状態であったため数か月間の家賃収入がなく、自己資金での補てんを余儀なくされることになりました。

本当は、すぐにでもすべて売却したいところですが、現時点ではローンの残債の方が市況の売値より高く、売値とローン残債の差額を補填する自己資金が必要です。しかしながら3戸分の差額を補てんする資金は相談者さんにはないため、物件の売却は不可能で、ローンの返済も滞ることに…。結果的には自己破産となってしまいました。

借金地獄を回避する3つの対策方法

不動産投資でも借金地獄に陥る事例を見てきましたが、借金地獄を回避する方法にはどんな対策があるのでしょうか。

収益性を上げる工夫をする

借金地獄を回避するには収益を上げる工夫が必要です。不動産会社に任せきりな賃貸管理も内容を精査しておく必要があります。

オーナー自身で賃貸管理をする方が儲けは増えますが、その時間や手間がかかります。また空室が出た際、早期に入居促進をするために効果的な広告費用を出すなどの対策が必要です。

ローンの見直しをする

既存のローン金利が高い場合には借り換えも検討する必要があります。ただ、借り換えの際には多額の諸費用がかかる金融機関もありますので、注意しなくてはなりません。

また、既存のローンでも金利の引き下げ交渉は可能です。まずは既存の金融機関に相談することも必要でしょう。

損切り(売却)を検討する

購入当初から収益がなく、毎月持ち出し金で補てんしている物件を保有しているのであれば、早い時期に損切りして売却をした方がいい場合があります。ローンの返済期間中は赤字ですから、タイミングを見て売却すべきでしょう。

損切り(売却)の方法はプロに相談を!

前述のように損切りをして売却するという場合には、実損額をできる限り抑えてくれるところにお願いすべきでしょう。

借金を残さず売却は可能?

損切りをせざるを得ない物件は、市況の売却金額とローンの残債額の差額がどのくらいあるかを探る必要があります。購入時に高値掴みをした物件は、市況価格とローン残債額の差が大きくなりがちです。

そのため、相当な差額分を自己資金などで補てんして売却する必要があります。差額分を無担保などのローンで補てんすることも可能ですが、個々人の属性によってはそうしたローンも組めないので、基本的には自己資金や親族からの援助などで補てんした方がいいでしょう。

自己資金がない場合の選択肢も含めて、変に売り急ぎをせず、極力損切り額を抑えてもらえるような相談先を探すべきです。

オーバーローンでも売り抜くために必要なこと

物件によっては早期に売却した方がいいものがあります。元々、高値で買った物件は毎月の持ち出し金が発生する赤字物件です。保有していれば一定の保有コストもかかり、経過年数に応じて高額な修繕費も発生します。

たとえば、毎月の持ち出し金が3万円とした場合、赤字はローン返済が完済する35年も続きます。単純に計算してもローン完済までに約1260万円も持ち出しすることになります。

できるだけ現実的なシミュレーションを行い、損切りのタイミングや方法を提示してくれる相談先を探しましょう。できれば、不動産会社ではなく第三者の目線で売却をサポートしてもらえる人がベストです。

まとめ

不動産投資で借金地獄に陥るということは一般的には想定しにくいものです。

物件購入は多額の借金がつきものです。1億円ぐらいは当たり前と不動産会社は煽りますが、いつ返済不能になるかはわかりません。不動産投資には目に見えにくいハイリスクが存在します。安易に高額な借金をしてしまうとそれこそ借金地獄、あげくには自己破産という流れなりかねません。

投資は自己責任とよく言われますが、不動産投資は株式投資などと異なり多方面にわたる知識が必要ですので、個々人のリテラシーを上げておくことでしょう。
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身の丈に合わない借金を負う前に
リスクマネジメントをすることが大切です。

この記事の監修者

寺岡 孝
寺岡 孝

不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー

アネシスプランニング株式会社 代表取締役。住宅コンサルタント、住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務後、2006年に同社を設立。

個人住宅・賃貸住宅の建築や不動産売却・購入、ファイナンスなどのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、3000件以上の相談を受けている。

WEBメディアに不動産投資についてのコラムを多数寄稿。著書に「不動産投資は出口戦略が9割」「不動産投資の曲がり角 で、どうする?」(クロスメディア・パブリッシング)など。


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