現金一括購入の不動産投資でも万が一のために自己資金を手元に残すことが大切。
目次
投資用不動産を現金一括で購入するメリット
物件は金額が大きな買い物ですから、どちらの方法を選ぶかによって投資戦略や収益性が変わってきます。選択肢がどのような影響を及ぼすのか理解することが重要です。
今回は、不動産投資用の物件を現金一括で購入することのメリットについてご説明します。
【メリット1】買付の交渉順位があがる
基本的には先着順に売主との交渉が進められるのですが、売主側からするとローンを使って購入希望の方と現金で購入希望の方とでは、現金買いの方の方が契約の可能性が高まりますので、優先する傾向にあります。
【メリット2】物件購入価格が安くなる
融資事務手数料 | 金融機関にもよるが、通常は1万円~3万円が相場 |
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融資保証料 | 金融機関がローンを保証するための費用で、元金1000万円に対して約20万円程度が相場 |
登録免許税 | 不動産の登記を行う際に必要となる税金で、所有権移転登記や抵当権設定登記などにかかる税金。 ローンを組む場合は抵当権設定登記の費用が余計にかかる |
【メリット3】ローンが組みにくいと言われている物件も購入できる
そのため、ローンが組みにくいとされる物件でも、現金一括であれば問題なく取得することができます。
【メリット4】ローン返済へのストレスがない
ローンを活用した不動産投資では、家賃収入を返済原資としますが、その安定性は物件の空室リスクや修繕工事などによって揺らぎます。万が一、収入が途絶えてしまった場合、ローン返済が困難となり、最悪の場合物件を手放さなければならないかも知れません。
一方、現金一括購入であれば、月々のローン返済を考える必要がありません。その結果、金融機関からの返済圧力を気にせず、長期的な運用を視野に入れることが可能となります。
「どうしても融資が怖くて嫌だ」という方にとっては、現金で築古戸建を安く購入して、DIYでリフォームしたうえで賃貸に出すという方法もあります。
投資用不動産を現金一括で購入するデメリット
【デメリット1】減った資金額を回収するまでに時間がかかる
たとえば、4,000万円で物件を一括購入し、家賃収入が月額20万円とします。この場合、4,000万円の投資金額を回収するのには、200ヶ月、つまり16年と8ヶ月が必要です。
一方、ローンを活用し、800万円の頭金で4000万円の物件を購入した場合、同じく月額20万円の家賃収入があれば、投資額は約40ヶ月、つまり3年と4ヶ月で回収できます。
ただし、これはローンの返済額やその他の費用を考慮していない単純な計算です。実際にはこれらの要素も考慮する必要がありますが、投資金額の回収期間が短縮できることは、ローンを用いた場合の利点と言えます。
【デメリット2】万が一のリスクに備えられない
*修繕費用リスク
物件は時間経過とともに劣化し、修繕費用が増えます。たとえば、屋根の塗り替えや外壁の塗装です。大規模な修繕には、多額の費用が発生します。日常の修繕やメンテナンス費用は収支計画に組み入れ、大規模修繕費用は毎月積み立てるなど、事前に予備資金を用意することが重要です。
*災害リスク
地震、水害、火災などにより建物が損壊する災害リスクは、ゼロにはできません。災害が発生すると建物が大きな損害を受け、修復に多額の費用が必要になる可能性があります。
また、修復期間中は賃貸ができず家賃収入が得られない可能性もあります。これらのリスクを軽減するためには、リスク管理や災害対策をしっかりと行うことと、万が一に備えて資金を用意しておく必要があります。
【デメリット3】自己資金額より高い物件の購入はできない
しかし、価格が低い物件は高収益を望むことが難しい場合が多く、結果として投資全体の収益率が下がることもあります。これは、安い物件が高い物件に比べて収益率が低いことが多いためです。
したがって、現金一括購入は一見安全そうに見えますが、物件の選択肢が制限され、収益率が低下する可能性があるなど、さまざまなリスクを抱えていることを理解しておくことが重要です。
【デメリット4】税務調査が入る可能性がある
とくに、他人からの贈与されたお金で購入資金とする場合は注意が必要です。年間110万円を超える贈与を受けると、贈与税の支払い義務が発生します。そのため、税金の申告を正しく行っているかどうか、税務署はチェックする可能性があります。
ちなみに、親族からの贈与による住宅購入の場合、一定の条件を満たすと、最大1,000万円まで非課税となる可能性があります。ただし、これらの特例が適用されるかどうかは、個々の状況によります。
したがって、現金一括購入を行う際には、購入に関連する全ての書類(不動産の売買契約書や贈与契約書など)を適切に保存し、任意のタイミングで税務署からの調査が入った場合でも対応できるように準備しておくことが重要です。また、税務調査のリスクを理解し、適切な税務対策を講じることも重要となります。
【デメリット5】レバレッジ効果が得られない
例えば、自己資金500万円と借入金2500万円を組み合わせて、3,000万円の物件を購入した場合、実際に支払った500万円の自己資金で3,000万円分の運用を行うことが可能になります。これがレバレッジ効果です。
しかし、現金一括で物件を購入すると、このレバレッジ効果は得られません。自己資金以上の物件を購入することができないため、投資効率が低下します。
これが現金一括購入の主なデメリットであり、レバレッジ効果を得られないことによる資産形成のスピードの遅さは、不動産投資における重要な考慮点となります。
ローンを利用して投資用不動産を購入するメリット
【メリット1】金融機関から信頼を得やすくなる
たとえば、3500万円の融資を受けて投資用物件を購入し、当初の計画どおりに30年間で完済したとします。これにより、計画通りにローンを返済する確実な顧客であるという印象を金融機関に与えることができ、次回の融資審査の際にプラスの評価を受ける可能性があります。
このように信用を積み上げていくことで、次回の物件購入時にも融資を受けやすくなりますので、投資規模を拡大したいと考えている場合、この信用の積み重ねは大きなメリットとなります。
【メリット2】団体信用生命保険に加入できる
この保険に加入するにより、万一の事態でも返済負担を免除される安心感があります。
この団体信用生命保険は不動産投資ローンの大きなメリットのひとつで、団体信用生命保険に加入することでこれまでの生命保険を解約する方も多いです。
【メリット3】幅広く物件を選べる
投資の成果を最大化する大きなメリットであり、ローンを利用する利点と言えるでしょう。
【メリット4】自己資金が少なくても不動産を購入できる
一方、物件価格の頭金(物件価格の2〜3割)を自己資金で用意して、残りの部分をローンで賄うことで不動産投資を始める事ができます。頭金が貯まった時点で不動産投資をスタート出来ることがメリットです。
ローンを利用して投資用不動産を購入するデメリット
【デメリット1】ローン審査に時間がかかる
このプロセスは通常、数週間から数ヶ月を要することがあります。そのため、すぐに物件を購入したい場合や、他の購入希望者との競争がある場合には、ローン審査の時間がネックとなることがあります。ローンが承認されない可能性もありますので、ローンを組んで不動産投資をする際には、これらの点を十分に考慮する必要があります。
各金融機関は、不動産賃貸業に関する融資の審査が厳格になっています(2023年8月時点)。一棟ものの物件などの審査で2カ月かかったという話も聞きます。
【デメリット2】借入リスクや金利リスクがある
また、賃料収入をローン返済に充てる場合、物件の空室や固定資産税の増加など予想外の出費により返済が困難になるリスクがあります。これらのリスクを考慮し、適切な返済計画を立てることが重要です。
現金一括で購入が向いている人とは
現金一括購入が向いている人 その①「余剰資金がある」
現金一括購入が向いている人 その②「リスクを減らして不動産投資をしたい」
現金一括購入が向いている人 その③「相続税対策をしたい」
ただし、具体的な相続税対策については専門家の意見を求めることをお勧めします。
まとめ
現金一括購入の不動産投資でも万が一のために自己資金を手元に残すことが大切。
この記事の監修者
宅地建物取引士/AFP/J-REC公認 不動産コンサルタントなど
2010年、世田谷区内の中古区分ワンルームマンション購入から不動産投資をスタート。区分・一棟・戸建て・日本・海外…と幅広く不動産賃貸業を営む(2022年3月時点)。
現在は総合マネープロデューサーとして、人生におけるマネーリテラシーの重要性をメディアやセミナーなどで伝えている。年間のセミナー登壇数は300本を超える。
「満室バンザイ」(平成出版)、「不動産はあなたの人生を変えてくれる魔法使い 女性の願いを叶えてくれる最幸マイホーム購入術」(ごきげんビジネス出版)など執筆。
私の経験でも、買付で一番手を取っていたにもかかわらず、融資の承認でもたついていた間に現金買いの方に取られてしまった経験が何度かあります。