不動産投資のマンションは現金一括購入がお得?メリット・デメリットを解説します

2024.06.26更新

この記事の監修者

アユカワタカヲ
アユカワタカヲ

宅地建物取引士/AFP/J-REC公認 不動産コンサルタントなど

不動産投資のマンションは現金一括購入がお得?メリット・デメリットを解説します

不動産投資の物件購入は、現金一括とローン、どっちがいいの?メリット・デメリットを解説します。

現金一括購入の不動産投資でも万が一のために自己資金を手元に残すことが大切。

目次

投資用不動産を現金一括で購入するメリット

不動産投資における物件の取得は、現金一括払いとローンを組んでの支払い、2つの選択肢があります。

物件は金額が大きな買い物ですから、どちらの方法を選ぶかによって投資戦略や収益性が変わってきます。選択肢がどのような影響を及ぼすのか理解することが重要です。

今回は、不動産投資用の物件を現金一括で購入することのメリットについてご説明します。

【メリット1】買付の交渉順位があがる

不動産を購入する際には、売主側に「いくらで購入したいかを明記した買付証明書(通称買付)」を提出します。人気物件の場合は、この買付が殺到します。

基本的には先着順に売主との交渉が進められるのですが、売主側からするとローンを使って購入希望の方と現金で購入希望の方とでは、現金買いの方の方が契約の可能性が高まりますので、優先する傾向にあります。

私の経験でも、買付で一番手を取っていたにもかかわらず、融資の承認でもたついていた間に現金買いの方に取られてしまった経験が何度かあります。

アユカワタカヲ
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【メリット2】物件購入価格が安くなる

不動産投資における現金一括購入の大きなメリットの一つは、購入価格全体がローンを利用するよりも安くなる可能性があるという点です。ローンを利用して物件を購入する場合、購入金額自体以外にも多くの諸経費が必要となります。具体的には、以下のような費用が考えられます。
融資事務手数料金融機関にもよるが、通常は1万円~3万円が相場
融資保証料金融機関がローンを保証するための費用で、元金1000万円に対して約20万円程度が相場
登録免許税不動産の登記を行う際に必要となる税金で、所有権移転登記や抵当権設定登記などにかかる税金。
ローンを組む場合は抵当権設定登記の費用が余計にかかる
現金一括購入の場合、これらの費用を支払う必要がないため、費用全体を抑える事が出来ます。

【メリット3】ローンが組みにくいと言われている物件も購入できる

ローンを組む際には、審査や査定が必要ですが、現金一括購入ではそれらが不要です。ですから、年数の経った中古物件や立地条件の悪い物件でも、審査なしで自由に購入することができます。

そのため、ローンが組みにくいとされる物件でも、現金一括であれば問題なく取得することができます。

【メリット4】ローン返済へのストレスがない

現金一括購入のメリットの一つに、ローン返済のストレスがないという点が挙げられます。

ローンを活用した不動産投資では、家賃収入を返済原資としますが、その安定性は物件の空室リスクや修繕工事などによって揺らぎます。万が一、収入が途絶えてしまった場合、ローン返済が困難となり、最悪の場合物件を手放さなければならないかも知れません。

一方、現金一括購入であれば、月々のローン返済を考える必要がありません。その結果、金融機関からの返済圧力を気にせず、長期的な運用を視野に入れることが可能となります。

「どうしても融資が怖くて嫌だ」という方にとっては、現金で築古戸建を安く購入して、DIYでリフォームしたうえで賃貸に出すという方法もあります。

アユカワタカヲ
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投資用不動産を現金一括で購入するデメリット

ここまでは、現金一括で不動産投資用物件を購入するメリットについてお伝えして来ました。もちろん、デメリットも存在します。現金一括で不動産を購入することのデメリットを、ローン利用で購入した場合と比較しながら解説していきます。

【デメリット1】減った資金額を回収するまでに時間がかかる

まず、現金一括で不動産を購入する大きなデメリットとして、投資資金の回収に時間がかかるという点があります。

たとえば、4,000万円で物件を一括購入し、家賃収入が月額20万円とします。この場合、4,000万円の投資金額を回収するのには、200ヶ月、つまり16年と8ヶ月が必要です。

一方、ローンを活用し、800万円の頭金で4000万円の物件を購入した場合、同じく月額20万円の家賃収入があれば、投資額は約40ヶ月、つまり3年と4ヶ月で回収できます。

ただし、これはローンの返済額やその他の費用を考慮していない単純な計算です。実際にはこれらの要素も考慮する必要がありますが、投資金額の回収期間が短縮できることは、ローンを用いた場合の利点と言えます。

【デメリット2】万が一のリスクに備えられない

現金一括で不動産を購入するデメリットとして、自己資産額が減ってしまうことで、災害リスク・修繕リスクにかかる費用に備えることができないという点があります。

*修繕費用リスク
物件は時間経過とともに劣化し、修繕費用が増えます。たとえば、屋根の塗り替えや外壁の塗装です。大規模な修繕には、多額の費用が発生します。日常の修繕やメンテナンス費用は収支計画に組み入れ、大規模修繕費用は毎月積み立てるなど、事前に予備資金を用意することが重要です。

*災害リスク
地震、水害、火災などにより建物が損壊する災害リスクは、ゼロにはできません。災害が発生すると建物が大きな損害を受け、修復に多額の費用が必要になる可能性があります。

また、修復期間中は賃貸ができず家賃収入が得られない可能性もあります。これらのリスクを軽減するためには、リスク管理や災害対策をしっかりと行うことと、万が一に備えて資金を用意しておく必要があります。

【デメリット3】自己資金額より高い物件の購入はできない

現金一括購入の場合、購入できる物件の範囲は自己資金の額によって限定されます。このため、自己資金額が少ない場合や高額な物件を購入する際には、選択肢が制限されてしまう可能性があります。また、現金一括での購入では、購入価格が低い物件を選ぶ傾向があります。

しかし、価格が低い物件は高収益を望むことが難しい場合が多く、結果として投資全体の収益率が下がることもあります。これは、安い物件が高い物件に比べて収益率が低いことが多いためです。

したがって、現金一括購入は一見安全そうに見えますが、物件の選択肢が制限され、収益率が低下する可能性があるなど、さまざまなリスクを抱えていることを理解しておくことが重要です。

【デメリット4】税務調査が入る可能性がある

現金一括で不動産を購入する場合、その取引は大きな金額が動くことから、税務署からの調査対象となる可能性があります。調査の目的は、購入資金の調達方法や購入目的を明らかにすることです。

とくに、他人からの贈与されたお金で購入資金とする場合は注意が必要です。年間110万円を超える贈与を受けると、贈与税の支払い義務が発生します。そのため、税金の申告を正しく行っているかどうか、税務署はチェックする可能性があります。

ちなみに、親族からの贈与による住宅購入の場合、一定の条件を満たすと、最大1,000万円まで非課税となる可能性があります。ただし、これらの特例が適用されるかどうかは、個々の状況によります。

したがって、現金一括購入を行う際には、購入に関連する全ての書類(不動産の売買契約書や贈与契約書など)を適切に保存し、任意のタイミングで税務署からの調査が入った場合でも対応できるように準備しておくことが重要です。また、税務調査のリスクを理解し、適切な税務対策を講じることも重要となります。

【デメリット5】レバレッジ効果が得られない

レバレッジ効果とは、自己資金よりも大きな金額の資産を運用することで得られる利益増大の効果のことを指します。不動産投資において、レバレッジ効果を最大限に活用するためには、資金を借りて物件を購入することが一般的です。

例えば、自己資金500万円と借入金2500万円を組み合わせて、3,000万円の物件を購入した場合、実際に支払った500万円の自己資金で3,000万円分の運用を行うことが可能になります。これがレバレッジ効果です。

しかし、現金一括で物件を購入すると、このレバレッジ効果は得られません。自己資金以上の物件を購入することができないため、投資効率が低下します。

これが現金一括購入の主なデメリットであり、レバレッジ効果を得られないことによる資産形成のスピードの遅さは、不動産投資における重要な考慮点となります。

ローンを利用して投資用不動産を購入するメリット

ここまでは、不動産投資における現金一括購入のメリットとデメリットについてお話ししてきました。それでは次に、多くの人が選択するローンを利用しての購入に焦点を当ててみましょう。まずは、ローンを組んで投資用不動産を購入する際のメリットをご説明します。

【メリット1】金融機関から信頼を得やすくなる

不動産投資ローンを組むには金融機関からの信頼が不可欠で、それを得ることがローンを組む最初のステップと言えます。さらに、ローンをきちんと返済することで金融機関からの信頼はさらに上がります。

たとえば、3500万円の融資を受けて投資用物件を購入し、当初の計画どおりに30年間で完済したとします。これにより、計画通りにローンを返済する確実な顧客であるという印象を金融機関に与えることができ、次回の融資審査の際にプラスの評価を受ける可能性があります。

このように信用を積み上げていくことで、次回の物件購入時にも融資を受けやすくなりますので、投資規模を拡大したいと考えている場合、この信用の積み重ねは大きなメリットとなります。

【メリット2】団体信用生命保険に加入できる

不動産投資ローンを利用すると、「団体信用生命保険」に加入する事が可能になります。この保険はローン契約者が亡くなったり、返済が困難になったりした場合、残債を保険会社が弁済してくれる保険システムです。

この保険に加入するにより、万一の事態でも返済負担を免除される安心感があります。

この団体信用生命保険は不動産投資ローンの大きなメリットのひとつで、団体信用生命保険に加入することでこれまでの生命保険を解約する方も多いです。

アユカワタカヲ
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【メリット3】幅広く物件を選べる

上記の現金一括購入のデメリットの項目で述べましたが、ローンを利用することにより、あらかじめ必要な自己資金を超えて物件を購入することができます。レバレッジ効果により、物件の選択肢は現金一括購入だけでは選べない高価な物件や収益性の高い物件にも広がります。

投資の成果を最大化する大きなメリットであり、ローンを利用する利点と言えるでしょう。

【メリット4】自己資金が少なくても不動産を購入できる

不動産投資を行う際、必要な自己資金が少なくても、ローンを利用することで物件の購入が可能となります。現金一括購入の場合、物件の全額を賄うためには大きな貯蓄が必要となります。これは、一般的なサラリーマンの場合、大きな時間と労力を必要とすることでしょう。

一方、物件価格の頭金(物件価格の2〜3割)を自己資金で用意して、残りの部分をローンで賄うことで不動産投資を始める事ができます。頭金が貯まった時点で不動産投資をスタート出来ることがメリットです。

ローンを利用して投資用不動産を購入するデメリット

続いては、ローンを利用して投資用不動産を購入するデメリットについてです。大きくは2つあります。

【デメリット1】ローン審査に時間がかかる

ローンを利用して不動産を購入する際の一つのデメリットとして、ローン審査に時間がかかることが挙げられます。不動産投資ローンを申請すると、金融機関は借り手の信用情報を詳細に確認します。収入、負債、信用履歴などを基に金融機関は返済能力を評価します。

このプロセスは通常、数週間から数ヶ月を要することがあります。そのため、すぐに物件を購入したい場合や、他の購入希望者との競争がある場合には、ローン審査の時間がネックとなることがあります。ローンが承認されない可能性もありますので、ローンを組んで不動産投資をする際には、これらの点を十分に考慮する必要があります。

各金融機関は、不動産賃貸業に関する融資の審査が厳格になっています(2023年8月時点)。一棟ものの物件などの審査で2カ月かかったという話も聞きます。

アユカワタカヲ
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【デメリット2】借入リスクや金利リスクがある

金融機関からローンを組んで融資を受ける際には、常に金利上昇と借入リスクを伴います。長期間のローンで金利が上昇した場合、返済総額を増加しますので投資の収益性を下げる可能性があります。借り換えや繰上げ返済を考える必要も出てきます。

また、賃料収入をローン返済に充てる場合、物件の空室や固定資産税の増加など予想外の出費により返済が困難になるリスクがあります。これらのリスクを考慮し、適切な返済計画を立てることが重要です。

現金一括で購入が向いている人とは

ここまで、現金一括とローン、それぞれのメリット・デメリットを述べてきました。どちらも一長一短ある事がお分かりいただけたと思います。では、自分はどちらが良いのか?現金一括購入が向いている人、向いていない人について解説しましょう。

現金一括購入が向いている人 その①「余剰資金がある」

手持ち資金に余裕がある方に最適です。不動産投資に現金を使ったとしても、生活ベースが変わらず、また、急な出費が出た際も十分な貯蓄がある方は、ローンを組む必要がありません。金利負担を避けて不動産投資をすることが出来ます。

現金一括購入が向いている人 その②「リスクを減らして不動産投資をしたい」

現金一括購入により、金利上昇リスク、毎月のローン返済リスクを考える必要がありません。現金一括購入は、不確実性を避けたい投資家にとって有益な選択となるでしょう。

現金一括購入が向いている人 その③「相続税対策をしたい」

現金一括で不動産を購入すれば、その物件はすぐに全額があなたの資産となり、一定の条件を満たすと相続税評価額が大幅に軽減される可能性があります。そのため、相続税対策として現金一括購入を考える人にとって、現金一括購入は有効な手段となります。

ただし、具体的な相続税対策については専門家の意見を求めることをお勧めします。

まとめ

不動産投資で現金一括購入を選択することは大きな魅力がありますが、その反面、一定の注意も必要です。投資初心者で、リスクを避けたい人や一定のリターンを求める人にはローンを利用した投資も有効でしょう。あなたの状況と目標に最も合致する投資方法を選択し、不動産投資で豊かな未来を築いてください。

現金一括購入の不動産投資でも万が一のために自己資金を手元に残すことが大切。

この記事の監修者

アユカワタカヲ
アユカワタカヲ

宅地建物取引士/AFP/J-REC公認 不動産コンサルタントなど

2010年、世田谷区内の中古区分ワンルームマンション購入から不動産投資をスタート。区分・一棟・戸建て・日本・海外…と幅広く不動産賃貸業を営む(2022年3月時点)。

現在は総合マネープロデューサーとして、人生におけるマネーリテラシーの重要性をメディアやセミナーなどで伝えている。年間のセミナー登壇数は300本を超える。

「満室バンザイ」(平成出版)、「不動産はあなたの人生を変えてくれる魔法使い 女性の願いを叶えてくれる最幸マイホーム購入術」(ごきげんビジネス出版)など執筆。

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