賃料査定は複数社に依頼しましょう!
適正賃料の設定は不動産投資の安定につながります。
目次
投資物件の賃料査定は非常に重要
ただ、めいっぱい上げればよいというものではなく、空室リスクとの兼ね合いで賃料を設定する必要があります。とくに住居系の投資物件の場合には入居者は賃料に敏感ですので、数千円の違いでも空室リスクに影響します。
さまざまな要因を加味して適正な賃料を算出するためには豊富な経験が必要となるために、不動産のプロに賃料査定を依頼するのです。
賃料査定とは?
査定結果は、実際に募集賃料を設定する時の重要な参考資料になります。
依頼先はどこ?
一方で、一棟ビルのサブリース賃料やオフィス賃料など金額が大きくなる場合には、不動産価格の鑑定と合わせて賃料査定を不動産鑑定士に依頼することもあります。物件の規模によっては融資の条件として不動産鑑定が必要とされます。この場合、簡易な賃料査定ではなく鑑定評価基準に基づく精緻な調査と判断がなされますので、本格的な査定です。
不動産鑑定士に鑑定依頼をする際には鑑定報酬を支払う必要があります。
依頼のタイミングと方法は?
新築物件を購入する時には、事業計画時と物件竣工後募集前だと経済市況の環境の変化で適正な賃料が変化することもあるので、募集時に改めて賃料査定を依頼することもあります。
また、中古物件の購入時も、現在の入居者の賃料がエリア相場に比して高すぎないか、安すぎないかをチェックする必要があるため、賃料査定を依頼することがあります。とくにファミリー向け物件は入居期間が長いため、現状賃料が相場にあっていないこともしばしばです。退去後に入居募集をする時に大幅に賃料を下げなければならないと、事業計画が頓挫してしまいますので、賃料査定を基に事業計画を引き直すこともあります。
ここは大変重要なポイントです!

賃料設定が適正でない場合のリスク
実際は募集時の反応を見て賃料を微妙に調節することもありますが、基準となる適正賃料のイメージを持っておきたいものです。
空室リスクが高まる
しかし、根拠もなく賃料を高めに設定するのは問題です。希望者は複数の物件の賃料を真剣に比較して検討しますので、賃料を相場より高めに設定すればすぐにばれてしまいます。結果的に空室リスクが高まって収益に悪影響を及ぼすでしょう。
キャッシュフローが悪化する
逆に賃料の設定が低すぎると、満室になってもキャッシュフローは思うように増加しません。この場合、入居者が入れ替わる時点で賃料を上乗せして募集することになりますが、安い賃料に設定するとなかなか退去しないということもあります。
入居者が入れ替わった際の新しい賃料(=新規賃料)は、その時点の適切な賃料を提示すればよく、賃料上昇時に賃料を上げやすいですが、現入居者の契約期間満了に伴う継続契約時の新しい賃料(=継続賃料)は、現契約での賃料をベースにすることになっていますので、新規賃料に比べて上乗せがしにくくなります。

賃料査定の主な方法
利回りから算出する
この査定方法による場合、利回り設定によって賃料が大きく変わってきますので注意が必要です。あくまで希望する利回りにはどのぐらいの賃料設定が必要か、また周辺物件の賃料と比較して離れすぎていないかを検証するために用いるのがよいでしょう。
エリアの類似物件と比較をする
まず、周辺物件の募集賃料や成約賃料のデータ収集をします。同一エリアで同一の物件種別(一戸建て・アパート・マンションなど)のデータを収集し、適正賃料の坪単価(㎡単価)を算出します。この坪単価に対象物件の床面積を乗じて算出された賃料が査定の基礎となる賃料です。
実際はこの賃料に担当者独自の調査や会社のシステムに基づく補正が入り、査定賃料となります。この補正が入るため、各会社のシステムや担当者によって査定の違いが生じるのです。
募集賃料と成約賃料の違いに注意!
賃料査定を依頼する際に注意すべきポイント
査定額の高さを基準にしない
中には仲介を依頼してほしいがために高い査定額を出してくることもありますが、このような場合は決まって、契約直前に賃料交渉が入ります。
基準や根拠を説明してくれる担当者がいるか
仲介会社・管理会社とは、依頼から長い付き合いが始まります。不動産経営はよいパートナーの助力があって初めて成功するものですので、親身になって対応してくれる担当者かどうかを見極めることが肝要です。
複数社を比較して検討する
大家自身が適正賃料のイメージを持っておくことは賃貸経営において大切なポイントです。最近ではインターネットで複数の不動産会社に一括して賃料査定を依頼することができるサービスもありますので、活用してもよいでしょう。
まとめ

どこの会社も同じような査定結果であれば、エリア・建物種別・広さなどが似通った物件の成約事例が多いと推測でき、信用度の高い査定となるでしょう。しかし、中には担当者によってバラバラの査定結果が出ることもあるかもしれません。その時には、査定の根拠をしっかりと明らかにして、適正賃料がどの程度なのかを探っていく必要があります。高い査定だからと言って飛びつくのではなく、信頼できる担当者かどうかを見極めようとする視点が大切です。
賃料査定は複数社に依頼しましょう!
適正賃料の設定は不動産投資の安定につながります。
この記事の監修者

吉崎 誠二
不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。
吉崎誠二公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/
賃料査定(=つまり周辺の賃料相場を知る事)は、不動産投資においては、とても重要です。新築物件の場合、新築プレミアムがありますが、無理して周辺相場よりも高くし過ぎないことです。周辺相場との乖離が大きく、募集開始して入居者集めに難航すると、賃貸斡旋業者などから、「不人気物件」の烙印を押されることになり、その後賃料を下げて募集しても募集活動が上手く進まないこともあり得ます。
中古物件の賃料設定では、購入時点での賃料が「周辺相場と比較して適切か」を判断する必要があります。仮に周辺相場より高い場合、現入居者が退去した後は賃料が下がる可能性があり、そうなれば購入時の利回りよりも下がります。この場合、利回りを基準にして購入していれば、「割高物件」ということになります。また、周辺相場より低い場合は、退去後に適切に賃料を上げて募集する必要があります。