投資物件検討の際に役立つ、
利回りの正しい見方と計算方法を伝授します!
目次
不動産投資の利回りの最低ラインは?
どれくらいの利回りを期待するか(欲しいと思うか)は、市況に大きく左右されます。不動産投資が活発な時にはかなり低くても投資したいと思う方が増え、逆に、不況期などは高利回りを求める傾向にあります。
しかし、不動産は個別性が強いため、適切な利回りというものは存在しません。そのため、利回りの目安(基軸)になるのが、いくつかのシンクタンクなどが公表しているキャップレート(期待利回り)です。
このような不動産投資の原則を踏まえた上で、以下より細かい解説をします。
利回りの最低ラインは条件によって変化する
物件を比較する時には、これらの条件を考慮しながら比較検討すべきです。単に利回りが高いからといって、魅力ある物件とは限りません。
投資の目的や方針によっても利回りの考え方は異なる
たとえば、長期投資が目的ならば、相対的に利回りが低い物件であっても、好立地で空室確率の低い物件を選択したほうがよい場合もあるでしょう。
また、相続対策で物件を選ぶのであれば、評価減の特例の効果が大きい物件を選んだり、複数の子に平等に相続させるために複数の区分マンションに投資したりするということも考えられます。この場合も単に利回りのみでは物件の優劣をつけられないことになります。
知っておくべき利回りの傾向
周辺の物件よりも比較的高い・低い物件があるならば、その理由を探っていくことで、物件を見る目が養われていきます。
新築は低く中古は高い
そのため、新築物件の利回りは低くなりがちです。相対的に価格の低い中古物件は、同一条件ならば利回りが高くなります。
都心は低く地方は高い
都心のほうが、物件価格は高くなる一方で、家賃は物件価格に比例して上昇するわけではないことから、都心の投資物件は利回りが低くなりがちです。
もっとも、地方物件は空室リスクや流動性リスクが都心物件よりも高いと考えられることから、その分のリスクが利回りに影響してきます。
頑丈な建物ほど低い
これは、築年数の経過に連れて物件の価値がどれぐらいのスピードで減少していくかという点を考えると合点がいきます。
築20年の木造アパートは、法定減価償却に従えば、建物価値がかなり減少しているのに対して、SRCマンションの価値は木造建物に比べて減少割合が小さいため、木造アパートの利回りは比較的高めに設定される傾向にあるのです。
駅から遠い物件のほうが高い
駅近の物件は人気があり買い手が多いために物件価格が高くなりがちです。そのため利回りが比較的低い物件が多くなります。駅遠物件は地価が抑えられるため利回りを高めに設定できますが、その分空室リスクには注意が必要です。
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高利回り物件はココに注意!
それでも高利回り物件に魅力を感じる時には、以下の事項をチェックして、事業計画に織り込んでおきましょう。自分の投資目的に合った物件ならば、積極的に投資を考えるのもアリです。
出口戦略が取れない場合がある
高利回り物件は駅遠である、地方・郊外物件であるなどの理由で買い手が見つかりにくい案件が多いので、どのように投資回収を図るかについては投資前からイメージを持っておく必要があります。
利回りのみで投資回収を考えるならば、物件の耐用年数が十分か、数年後も同じぐらいの利回りが期待できるかという点を検討しておく必要があるでしょう。
空室対策が必要
現況利回りが表示されていても、現況の空室が少ない場合には利回りを維持するためには空室対策が必要です。
事業計画を立てる時点で、空室対策の広告費や設備更新などの予算が組み込まれているかをチェックしておきましょう。
修繕費用がかかる可能性がある
修繕費を検討したうえでもなお投資したい物件であれば、積極的に狙っていくことも考えます。
管理が悪かったり、問題の入居者がいたりする
このような物件については、購入後に改善していく必要があるために、投資上級者向けの物件といえるでしょう。初心者は慎重になるべきです。
管理会社を変更して改善される見込みがあるならば、事前準備のうえで検討するのも1つの手です。
利回りの応用知識も学んでおこう
より一歩進んだ指標として、以下のような指標を覚えておくとよいでしょう。
イールドギャップとローン定数
もっとも、この計算には借入期間が考慮されていないために、借入期間が短期だとキャッシュフローがマイナスになってしまう可能性があります。そのため、イールドギャップの計算は、借入金利ではなくて、ローン定数(K)と呼ばれる数値を活用することがあります。
ROI利回り
実質利回りと考え方は似ていますが、キャッシュフローを計算する際に借入の元利返済分まで差し引くところが異なります。
CCR(自己資本回収率)
一方で元利払いの割合も高くなり、空室が出た時の収入の減少によってキャッシュフローがマイナスになるリスクも同時に高くなる傾向にあります。
まとめ
自分の投資目的、投資方針によっては、利回りが低くても安定収入が見込まれる物件、もしくは節税効果が高い物件を選択するのがよい場合もあるからです。
投資物件を検討する際には、今回紹介したチェックポイントを参考にしながら、自分で利回りを計算して比較検討してみることをおすすめします。
投資物件検討の際に役立つ、
利回りの正しい見方と計算方法を伝授します!
この記事の監修者
不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。
著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。
購入検討物件の利回りが妥当か、あるいは高いか低いかは、数字で判断するのではなく、目安の数字を基にするとよいでしょう。感覚での判断は、NGです。