- 事業用定期借地権とは事業の用途に限定して期間を決めて土地を貸し出す権利のこと。
- 事業用定期借地権の契約期間は、10年以上50年未満と定められています。
- 居住用として貸し出す場合より高い地代の設定が可能ですが借主が破綻するリスクも。よく検討した上で計画を立てましょう。
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目次
事業用定期借地権とは
事業用定期借地権の特徴としては、利用できる目的が事業用のみであるという点があげられます。事業用とは、店舗や事務所・工場といった居住用以外の目的のことです。
居住用以外となるので、アパートやマンションといった賃貸経営では、事業用定期借地権は利用できません。
また、契約期間は10年以上50年未満という規定があります。契約時に定めた期間が満了すると契約は終了となり、更新はできません。契約終了後は、基本的に建物を解体して更地の状態で返還する必要があるのです。
そのほかの定期借地権の種類
一般定期借地権
土地の利用目的に制限もなく、50年以上と長期間定期的な収入を得られる点も貸主にとってメリットと言えるでしょう。
建物譲渡特約付借地権
買い取る必要はありますが、契約終了後に建物の所有権を得られるため、マンションなどではそのまま経営できるというメリットがあります。
契約期間も30年以上なので、長期間にわたって安定した収入を得られるでしょう。
一時使用目的
短期間だけ土地を貸し出したいという場合などに向いている契約方法です。
事業用定期借地権の契約期間と方法
事業用定期借地権の契約期間
以前は10年以上20年以下と定められていましたが、これでは20年後に建物を解体しなければならず、事業者にとって不都合になることが問題視されていました。
問題解決のため、平成20年に借地借家法の改正に伴い契約期間も10年以上50年未満と改められたのです。
期間によって建物買取請求ができる
10年以上30年未満 | 契約更新・建物買取請求権なし |
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30年以上50年未満 | 契約更新・建物買取請求権あり※ |
建物買取請求権とは、借主が貸主に対して契約終了時に建物の買取を請求する権利のことを言います。事業用定期借地権では、基本的に契約終了時は建物を解体して更地での返還が必要です。
しかし、まだ使える建物の場合、解体することは損失と見なされるため、建物買取請求が可能になったのです。
ただし、借主に家賃の不払いと言った契約違反がある場合には、建物買取請求に応じる必要はありません。
事業用定期借地権の契約方法
公正証書とは、公証人が法律に基づき証書として作成し、内容を証明する書類のことを言います。公証役場に依頼して作成してもらい、作成した書類には貸主・借主双方の署名・捺印が必要です。
事業用定期借地権は、この公正証書での契約が必要になります。
公正証書以外での契約は無効となり、場合によっては普通借地権として取り扱われるケースもあるのです。普通借地権として扱われると、期間終了後に土地を返還してもらえない可能性もあるので注意しましょう。
事業用定期借地権の契約では、契約内容が決まった時点で覚書を作成しておくなど対策しておくことをおすすめします。
事業用定期借地権の地代相場
【借地による収益】
借地料-(不動産所得による所得税・住民税) -(固定資産税・都市計画税) |
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なお、定期借地権での地代相場は年間約80万円(200m2あたり)となりますが、エリアによって価格は異なるものです。
一般的には、固定資産税などの租税公課の2~3倍に設定することが多く、たとえば固定資産税が2万円の場合は、年間の地代が4~6万円となります。
路線価や利回りから算出する方法があるので検討するとよいでしょう。
また、事業用定期借地権の場合、契約年数の残存期間によって地代の評価額が変動します。長期契約することで評価額が下がるため、契約期間が長いほど地代が安くなる傾向があることも覚えておきましょう。
事業用定期借地権の収益モデル
また、あくまでも所有者は貸主のため、毎年の固定遺産税や都市計画税は支払い続けなければなりません。
また、事業用定期借地権では「建物を建てて貸し出す」「隣接地を合わせて事業用定期借地権を設定する」といった方法でも収益を得ることができます。
建物を建てて貸し出す方法
たとえば、1億円で建物を建てて50万円/月の家賃を得られるようになると、年間600万円、10年で6,000万円の賃貸収入となりますが、10年経った時点で事業者が倒産したり、借地期間が終了したりすると、収益がマイナスのままとなってしまいます。
隣接地と共同で事業用定期借地権を設定する
たとえば、あなたをAさん、隣地の所有者をBさんとすると、①AさんとBさんそれぞれが事業者と契約する方法と、②AさんとBさんで借地契約締結、土地を一体化した上でAさんと事業者とで借地契約を結ぶ方法があります。
借地契約は長期に渡る契約になることが多く、どのような契約形態を取るにせよ、隣地所有者のBさんとはしっかり契約内容について認識を共有しておくことが大切でしょう。
事業用定期借地権のメリット・デメリット
【メリット1】貸し出し期間を選べる
ほかの定期借地権では最短でも30年以上の契約が必要なので、短い期間での契約を検討しているならメリットが大きいと言えます。
【メリット2】事業リスクを負わずに地代収入を得ることができる
一方で、自分で事業を始めるにはリスクが大きいと考える方もいらっしゃるでしょう。
事業用定期借地権であれば、事業者としても最初の負担が少ない状態で事業を始めることができ、貸主は自分で事業するリスクを負わずに安定した収入を得られるというメリットがあります。
【メリット3】居住用よりも高い地代を設定できる
居住用としては向かないものの、利用したい事業者がいれば、比較的高い価格で貸し出せることも少なくありません。
【メリット4】相続税の軽減ができる
たとえば、土地の相続税評価額が5,000万円の土地を30年で貸し出し、10年経過後に相続が発生した場合、5,000万円×20%=1,000万円の評価減を受けることができます。
定期借地権の残存期間 | 評価減 |
---|---|
15年を超えるもの | 20% |
10年超~15年以下 | 15% |
5年超~10年以下 | 10% |
5年以下 | 5% |
【デメリット1】満期まで中途解約ができない
特約を設ければ借主から中途解約することはできるものの、貸主は特約を設けたとしても中途解約は認められていません。この点には十分留意しておく必要があるでしょう。
【デメリット2】借主の経営破綻リスクがある
その場合でも、建物の所有者は借主になるため、勝手に建物の解体などができず法的な措置が必要です。収益が得られないだけでなく、対応に手間や費用が掛かる点には注意しましょう。
【デメリット3】固定資産税の減税はない
とくに、これまで住宅が建っていた土地で、建物を解体して事業用定期借地するような場合には注意が必要です。
【デメリット4】土地の利用方法に制限がある
しかし、事業用定期借地権の利用を検討する土地は、居住用に向いていない土地というケースが多いでしょう。事業用定期借地権だけでなく、売却も視野に入れて活用を検討することをおすすめします。
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事業用定期借地権の活用事例
出店場所 | 住宅地路面郊外ロードサイド |
---|---|
契約期間 | 15年以上 |
敷地面積 | 120坪以上(間口20m以上) |
用途地域 | 第一種低層住居専用地域、工業専用地域以外 |
出店場所 | 郊外 |
---|---|
契約期間 | 20年以上 |
敷地面積 | 2,000坪以上 |
道路幅員 | 6m以上 |
用途地域 | 準工業・工業・商業・近隣商業・無指定、契約期間 |
よくある質問
- 事業用定期借地権に向いている土地は?
- 長期間使わない土地、ロードサイドなどにある土地、まとまった大きさのある土地が向いています。中途解約できないため、基本的には長期間使わない土地であることが前提となり、事業者にメリットのある土地という点も重要です。
一般的には、駐車場まで含め数百坪以上の広さが必要となるため、数十坪程度の土地は向いていないでしょう。 - 事業用定期借地権の注意点は?
- 誰に貸すかが重要なポイントとなります。長期間契約するため、期間中に事業者が破綻するリスクが考えられます。
破綻した場合、建物が残っても勝手に壊すことや貸すことができずに、法的な措置が必要になるなど対応が難しいものです。貸す相手のリスクを見極め、リスクの少ない人に貸すことが重要になります。 - 土地を取られる心配はない?
- 事業用定期借地権は公正証書を作成して契約するため、土地が取られる心配はありません。
また、物を一定期間専有した場合に発生する取得時効では、所有権や地上権では取得が認められていますが、債権である貸借権は対象にならないという考えもあります。ただし、過去の判決では貸借権での時効が成立したケースもあるので注意しましょう。
まとめ
居住用に使える土地であっても、事業用定期借地権を活用することで居住用より高い家賃を得られる可能性もありますが、これまで居住用として使っていた土地である場合は固定資産税の減税が受けられないため、注意が必要です。
交通量の多い土地や、広大な土地を所有しているなら、
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この記事の監修者
AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。