一人暮らし・家族別の賃貸に必要な初期費用と費用を節約する方法

  • 公開日:
  • 2016年11月16日
一人暮らし・家族別の賃貸に必要な初期費用と費用を節約する方法
引越し時に気になるのが、賃貸の初期費用。大きな出費になることも多いので、目安の金額や費用の抑え方を知っておきましょう。
ライター:風呂内亜矢

賃貸の初期費用は家賃の5~6倍

お部屋を借りる時に必要な初期費用には主に「敷金」、「礼金」、「仲介手数料」、「前払家賃」などがあります。1つずつみていきましょう。

敷金家賃の1~3か月分程度のことが多い。
貸主に預けるお金で家賃の滞納や、原状回復費用に備えるもの。
退去時に原状回復費用が発生する場合は敷金から支払われ、差し引かれた残額は戻ってくる。
礼金家賃の1~2か月分程度のことが多い。
貸主に対するお礼の意味合いで渡すお金で、基本的に戻ってくるお金ではない。
仲介手数料家賃の1か月分程度のことが多い。(家賃1か月分+消費税が法律上の上限)
貸主と借主の仲介を行った不動産会社に対して、部屋を探し契約を成立したことに対する手数料なので、こちらも戻るお金ではない。
前払家賃家賃の1か月分程度のことが多い。
貸主に対して前払いする家賃なので、入居した月の家賃として充当される。
火災保険15,000円 ~20,000円
損害保険会社に支払うお金。火事や水漏れが原因で借主にあたえた損害を担保する保険(借家人賠償責任補償)。
この他に物件によっては家賃の滞納に備え、連帯保証人とは別にさらに「保証会社」との契約を定めているお部屋もあります。気に入ったお部屋が保証会社との契約を条件としているようであれば家賃の0.2~1か月分の費用が必要となります。その他には1~3万円などの鍵交換代が求められることもありますね。

こうした費用を合わせると、賃貸のお部屋を借りる場合の初期費は家賃の概ね5~6倍となります。

敷金や礼金については関西では少しルールが違うこともあります。「保証金」と呼ばれる費用で入居時に1~5か月分程度支払い、退去時には契約時に設定された「敷引き」が差し引かれ、さらに原状回復費用を差し引いて残った保証金が戻ってくるというお部屋もあります。

関西⇔関東での引っ越しや、地域を大きく移動する引っ越しでは最初に支払うお金とその意味、戻ってくる種類の費用なのかなど、よく確認することがお薦めです。

また、物件を借りるための費用ではありませんが、新しい部屋での生活をスタートさせる場合、引越し費用も同じタイミングで捻出しなければならないことが多いでしょう。引越し費用も含めた、いくつかのケースで考えてみましょう。

一人暮らしの場合と、家族で遠距離引っ越しする場合の初期費用

例1.東京都内に一人暮らしする場合の初期費用

まずは東京都内で一人暮らしをする方の場合を考えてみましょう。
家賃7万円、敷金・礼金ともに1か月と設定されているお部屋を借りたとしましょう。

敷金1か月分70,000円
礼金1か月分70,000円
前払家賃※1か月分70,000円
日割り家賃15日分(仮)35,000円
仲介手数料1か月分75,600円
火災保険料約15,000円
鍵の交換費約15,000円
保証料約35,000円
引越し費用約40,000円
合計約425,600円

※日割り家賃は入居するタイミングによって異なります。

仲介手数料は家賃1か月分+消費税が法律上の上限になっているため、75600円が上限です。75600円よりも高い金額を請求された場合はおかしいと思った方が良いでしょう。また75600円は上限のため、この金額よりも少ない金額に交渉する余地もあります。

引越し代は時期や荷物の量、引越しプランによって金額に大きく変動があります。

退去の際は、原状回復費に2万円かかったとしたら敷金から差し引いた5万円程度や、火災保険料の契約期間が経過していない金額(通常2年分をまとめて払う)について、返ってくることもあります。

新居で多少インテリアを買い換えることや、次のお給料日までの生活を考えると一人暮らしの賃貸には50~60万円程度の手持ち資金があった方が安心と言えそうです。

例2.東京から大阪に賃貸を借りるファミリーの初期費用

ファミリー世帯が東京から大阪に賃貸を借りる場合も考えてみましょう。

家賃14万円、保証金4か月、敷引き1か月と設定されているお部屋を借りたとしましょう。

保証金4か月分560,000円
前払家賃1か月分140,000円
日割り家賃15日分(仮)70,000円
仲介手数料1か月分151,200円
火災保険料約25,000円
鍵の交換費約30,000円
保証料約70,000円
引越し費用約150,000円
合計 約1,336,200円

※保証金の敷引き1か月分 140,000円は返ってこないお金として確定

ファミリーで長距離移動となると引越し費用もかさみがちです。また家賃も一人暮らしに比べると高額になることが多いため、家賃を基準にして決まる初期費用も大きな金額になります。関西方式で敷金・礼金ではなく、保証金・敷引きの方式をとっているお部屋の場合、ひとまず預け入れる保証金が4か月など大きいと、敷引き(戻らないお金)は家賃1か月分だったとしても、初期費用としての負担は大きくなります。退去時には保証金から敷引きを引いた42万円のうち、修繕費用を払っても残る部分などが戻ってきます。

転勤の場合、会社で手当が出ることも多いですが、転職などで新しい生活を始める場合、ある程度の蓄えがある方が安心ということがわかります。

引越しや住居費については自治体から補助が出ることもあります。

たとえば、新宿区の助成は有名で、区内に転入してきた者に対して礼金、仲介手数料の合計最大36万円、引越し代実費最大20万円の最大合計56万円を補助します(年収制限あり)。大阪市では新規募集は受け付けていませんが新婚世帯向けの家賃補助制度もありました。

新しい住まいを探す際には、次の職場に通える範囲で、周辺に転入や引越し、家賃に対する助成金を出している自治体がないか、チェックしてみるのも良いでしょう。年度毎に内容が見直されることや、予め手続きをしてから賃貸契約をする必要があるケースもあるため、早めの情報収集が有利になります。

初期費用を抑える方法

ファミリー世帯の引越しケースで少しご紹介をしましたが、転入、引越し、家賃に対する助成をしている自治体もあります。単身者、親の近くに住む(近居)場合などにも同様の制度がある場合もあるため、これから転居するエリアの情報を調べてみると有利でしょう。その他に初期費用を抑える方法を考えてみましょう。

敷金、礼金無しを条件に加える
まずは、そもそも敷金や礼金が無いことを、お部屋探しの検索条件に加えることも有効です。この場合、周辺の類似物件(駅からの距離、広さ、設備などの条件が近い)と家賃+共益費の価格を比較して、違いが少ないかも気にかけてみると良いでしょう。

スマイティの物件詳細のページには周辺の家賃相場も開示しているので、気になる物件の家賃が平均的にどうなのか比較検討するのもよいでしょう。敷金や礼金がかからない物件は初期費用が抑えられるメリットがある一方で、家賃そのものが高くなっていることもありますので注意が必要です。

URや住宅供給公社なども検討
URや住宅供給公社など、礼金、仲介手数料、更新料などがかからない物件から部屋を探すのも一案です。物件数が少ない、立地がよくないケースが多いのは懸念点ですが選択肢に入れてもいいですね。

価格交渉をする
初期費用について、価格交渉をするというのも一案です。これは検索サイトで物件の候補をリストアップし、実際に店舗を訪問した際などに試みることができます。多くの場合、不動産会社間でみられるデータベース(通称:レインズ)では、そのお部屋が空室になってからどのくらいの期間が経っているか確認することができます。そのため空室期間が長い物件などでは礼金の価格交渉がしやすいかもしれません。

分割払いやカード払いを相談する
初期費用を分割で支払うことや、カード払いができないか相談してみるのもよいでしょう。自分の納得がいく借り方を一緒に探してくれる不動産会社の担当者が見つかると、お部屋探しは心強いでしょう。

火災保険を自分で選ぶ
火災保険については、自分で選んで加入できる場合もあります。本当に必要な保障だけに限定すれば1.5万円だった支払いが1万円を切ることもあります。

たとえば、一人暮らしで高級な家具がない場合や、いざという時に家財道具を揃える程度の蓄えがある場合には家財に対する補償を無くす、少額に設定する、などを検討しても良いかも知れません。部屋や不動産会社によっては火災保険の商品を指定していることもありますが、選択が自由であれば、自身で加入するという手もあります。
<初期費用を抑える方法>
・敷金、礼金無しを条件に加える
・URや住宅供給公社なども検討
・価格交渉をする
・分割払いやカード払いを相談する
・火災保険を自分で選ぶ

交渉時に知っておくと有利?不動産会社の取引態様によって異なる値引き交渉

少しマニアックな話になりますが、賃貸検索サイトでお部屋を探す際には、取引態様の欄にも注目してみると初期費用の交渉がしやすくなるかもしれません。取引態様が「媒介」となっているショップは、お部屋の大家と契約をしている店舗になります。大家と媒介契約を結んだショップは不動産会社間で見られるデータベース(レインズ)にお部屋の情報を登録します。

取引態様が「仲介」となっているショップは、大家と直接契約をしているわけではありませんが、レインズの情報をみながらお部屋を紹介することはできます。店舗に訪れたお客様がお部屋を気に入れば仲介手数料などの収入が見込めます。

1つのお部屋探しショップでも、ある部屋については大家と契約を結び媒介として、あるお部屋については他の店舗が媒介しているものを仲介として紹介するといった風に、複数の立場を持っていると言うことになります。

賃貸検索サイトなどで1つの部屋について複数のデータが上がってくるのは、大家と契約をしている「媒介」の店舗と、それをレインズで見て募集をかけている「仲介」の店舗(複数)が存在するからです。

媒介の場合、大家からも手数料を受け取ることができ、その後続く家賃の集金なども代行する(こちらでも家賃の一部を手数料として継続で受け取る)ことがあります。そのため、店舗としては媒介で扱っているお部屋の方が勧めたいという気持ちも働くかもしれません。同時に大家とのコミュニケーションもとりやすいことが多いため、交渉事は媒介の立場がある店舗の方が円滑な可能性もあります。

仲介の場合は、通常お部屋の借り手から受け取る仲介手数料がその契約を結んだときに得られる主な収入のため、仲介手数料を交渉することが難しい場合もあります。ところがお部屋の概要を示したちらしのようなもの(マイソク)の右下に広告費相談、AD50、AD100といった表記をしている場合(隠れていることもあります)は、仲介として扱った場合でも大家側から広告費を受け取ることができるため、借り手側の仲介手数料をもしかすると値引きしてくれるかもしれません。

<取引形態と交渉のしやすさ>
取引形態交渉備考
媒介しやすい大家と直接契約
仲介ややしづらい媒介業者を経由して大家に問い合わせる

物件自身に人気があり、値引きをしなくても借り手が見つかりそうな条件を備えている場合、取引態様に関わらず値引き交渉が成立するとは限りませんが、お部屋に対する立ち位置を知って交渉を進めると、もしかしたら有利な条件を引き出せる糸口が見つかるかもしれませんね。

引越し費用の抑え方

引越し費用も賃貸の初期費用の一部と言えるでしょう。引越し費用を抑える方法は時期や時間をずらす、相見積もりをとる、といった方法が考えられます。また、一人暮らし引越しであれば、友人などにお願いしてレンタカーで行うという方法もありますね。その場合の費用はレンタカー代と友人への謝礼などだけで済みます。

引越し費用が高い時期を避ける
引越し費用は新生活が始まる3月や4月、異動や転勤が多い9月や10月は繁忙期となり、費用も高くなりがちです。その他にも休日や連休が控えているタイミングなども高くなりやすいです。

それに対し、6月、11月、12月、1月は動く人も少なく、年末年始なども引越し以外で忙しいため比較的価格が抑えやすい傾向があります。休日や連休の最終日(翌日は平日)、大安や仏滅などが価格に影響することもあります。

搬入、搬出の時間を引越し業者に選ばせる
また、午前に比べて午後の搬出の方が、安価になりやすく、時間帯を指定しないものだとさらに価格が下がりやすいです。

関東から関西などのように遠方移動の場合は、同じ方面に向かう人の荷物を一緒に運ぶ混載便などのプランが価格を抑えられます。混載便の場合も、到着日時が指定できないことが多いため、運び入れや、段ボールの開封作業など、荷物を運んだあとのスケジュールがやや立てづらいという注意点はあります。

相見積もりをとる
これらの引越し価格を決める要素を踏まえた上で相見積もりや価格交渉をすることがお薦めです。一括見積もりサイトで相見積もりをとる方法もありますが、その場合、メールや電話もたくさん来て少し大変だと感じるかもしれません。引越し時期と家族の人数から相場の金額を調べておき、「この価格なら契約してもいい」と思える落としどころを決め、相見積もりをとることがお薦めです。

現地見積もりをすると実際の部屋の中身を見てもらい金額を出してもらえるので、後から追加料金が発生する可能性が少なくなります。一方、現地見積もりに来たら契約までを目標としている引越し業者も多いため、落としどころと思える金額を決めて迎え入れるのが安全でしょう。相見積もりをとろうと2社目をすぐ後の予定に入れていても後ろの予定を断ってくれたらこの金額まで下げます、と強めの交渉が入ることもあります。

<引越し費用を抑えるポイント>
・相見積もりをとる
・引越し費用が高い時期を避ける
・搬入、搬出の時間を引越し業者に選ばせる
・荷物が少ない場合はレンタカーなども検討する
新生活が始まると予想外の出費があるので、お金を節約することが難しいこともあります。賃貸にまつわる初期費用をできるだけ抑えて、楽しい新生活を迎えましょう。
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