賃貸の管理費と共益費とは?見せ方に注意し正しく家賃を比較しよう

  • 公開日:
  • 2016年11月16日
賃貸の管理費と共益費とは?見せ方に注意し正しく家賃を比較しよう
家賃と一緒に支払う、管理費と共益費。この費用は、果たして安い方が良いのでしょうか?この記事で改めて考えてみましょう。
ライター:風呂内亜矢

まずは「管理費」「共益費」言葉の定義から

管理費と共益費とどういった違いがあるのでしょうか。不動産公正取引協議会連合会(景品表示法に基づいて設定された業界の自主ルール”公正競争規約”の運営団体)の「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」には下記のように記載されています。

管理費マンションの事務を処理し、設備その他共用部分の維持及び管理をするために必要とされる費用をいい、共用部分の公租公課等を含み、修繕積立金を含まない。
共益費借家人が共同して使用又は利用する設備又は施設の運営及び維持に関する費用をいう。

管理費については管理人さんを雇うお金や、共用部分(エレベータや廊下など)の固定資産税などが代表的な費用と言えるでしょう。

単身者専用のコンパクトなマンションの場合、管理人さんを見かけたことがないという人もいるかもしれませんが、午前中のみ、月・水・金のみなど、シフト制になっていることも多いです。

共益費については共用部分の維持、たとえば廊下やエレベータの電気代や、電球が切れた場合に買い換える電球代などが具体的にイメージしやすい費用でしょう。言語の意味合いとしては管理費の中に包括されることも多いです。

実は結局、家賃の一部

管理費と共益費、似通った2つの言葉ですが、実は賃貸においてはあまり明確な違いがないことが多いです。賃貸情報検索サイトによって表記が違ったり、お部屋によって表記が違ったりするだけで、実は家賃と合わせてどう見せるか、という観点で設定されているだけ、ということもあります。

たとえば7万円で貸したい部屋があったときに家賃7万円とするよりも、家賃6.5万円+管理費0.5万円と表記を分ける方が、安いように感じてもらえるかもしれません。

賃貸情報検索サイトで探す際も、条件に「家賃=~6.5万円」と入力した場合では、家賃7万円の物件は見つけてもらうことができませんが、家賃6.5万円+管理費0.5万円の物件であれば見つけてもらえるかも知れませんね。

検索にヒットしやすくするために、さらに管理費を高くして家賃を低くするとどうでしょうか。たとえば、家賃5万円と管理費2万円などと設定してしまうと、今度はどれほど手厚い管理体制を受けられるのかと借主は期待します。

よほど手厚いサービスを受けられないと管理費に毎月2万円も払う価値があるのかと借主に思わせてしまう恐れもありますね。

標準的なサービスで満足してもらえる金額を管理費とし、かつ、家賃を割安に感じてもらえるバランスで提示されていることもある、借主にとってはやや曖昧な費用といえます。

借主が払う「管理費」と大家が払う「本当の管理費」の違いとは?

曖昧な費用と聞くと払うのが嫌だと感じてしまうかも知れませんが、実は大家は実際に「管理費」と呼ばれる費用を支払っています。大家の払う管理費が「本当の管理費」と言えますね。原価も実際にかかっていると言えます。

大家が家賃を決める時、周辺の相場と照らし合わせて決定をしますが、実際に物件を維持するためにかかっている費用も、もちろん考慮をします。たとえば7万円で貸し出したいと考えているその部屋に対して1か月あたり下記のような費用がかかっていると仮定します。

■一部屋にかかっている費用例(月額)
物件購入のローン返済5万円
管理費0.5万円(建物管理会社へ)
修繕積立金0.5万円
固定資産税ひと月あたり0.5万円(年額6万円を12か月で割った場合)
集金代行手数料0.3万円(賃貸管理会社へ)
合計6.8万円

この場合、大家の家賃収入の手取りは毎月0.2万円(借主が支払う家賃7万円-毎月の支出6.8万円)となります。入居者がいなくても毎月支払う6.8万円(または6.5万円:空室であれば集金代行手数料はかからないこともあるため)を、どのように回収するかを大家は考えます。

6.8万円以上の家賃で貸すことを1つの目安にしますし、借主にとってより魅力的に感じられる金額で募集をすることになるわけです。その結果の1つとして、家賃6.5万円と管理費0.5万円といった例もあるということです。

空室になった場合、大家が全ての費用を負担するリスクを負っているため、仮にこの例の家賃が8万円(あるいは家賃7.5万円と管理費0.5万円)くらいであったとしても家賃が高すぎるとも言えないかもしれませんね。

あるいは、空室になってしまうよりマシだという判断や、他の部屋で黒字が出ているなどといった判断があれば6万円(家賃5.5万円と管理費0.5万円)で貸すこともあるかもしれません。大家にとっての手取り家賃がどのくらいになるかは物件やエリア、建物の構造によって大きく異なります。

大家が支払っている費用例で出てくる「管理費」は、本当に建物管理会社に対して支払っています。先ほどの不動産公正取引協議会連合会の資料で定義されていたように、管理人さんを雇うことや、共用部分のメンテナンスのために使われています。

ちなみに管理費は、通常部屋の広さなどに応じて決められることが多く、同じ建物の中でも金額が違います(広い部屋は高いこともありますし、同じ広さの部屋であれば同額であることが多い)。

「修繕積立金」は建物全体で貯めておいて15~20年に一度など、建物の価値を維持するための工事(大規模修繕工事)を行うために積み立てられています。基本的に月々で消化されていく管理費と異なり、資産を維持するための積立金という意味合いになる費用です。

「固定資産税」は物件を保有している間、毎年支払う税金です。「集金代行手数料」は入居者の募集や家賃の集金業務などを代行して行ってもらうための手数料です。

これらの費用をひっくるめて、「家賃」と「管理費」や「共益費」という形でどのように貸せば気持ちよく借りてもらえて、大家としても負担になりすぎないのか、という見せ方を考えて金額を決め、賃貸情報として掲載されています。

賃貸契約によっては水道代金も大家が代行して支払って、共益費という名目で赤字にならないように家賃とあわせて回収する場合もあります。「今借りている部屋は水道が使い放題なんだ」と友人が話すのを、聞いたことがある人もいるかもしれません。

こうしたケースでも、各部屋で水道を使い放題にしていたとしても耐えられる家賃や共益費の合計金額を、大家や不動産会社が考えて設定しています。

管理費・共益費があることで安くなる費用も

大家の事情を見ていると、管理費や共益費が設定されていることが借主にとって損なことのようにみえるかもしれませんが、実はメリットもあります。

たとえば、賃貸物件を紹介してくれた不動産会社に支払う仲介手数料や入居時に支払う敷金や礼金、2年ごとなど更新の都度支払う更新料などは、「家賃の○か月分」などと決められていることが多いです。

家賃7万円の部屋よりも、家賃6.5万円と管理費0.5万円の部屋の方が、0.5万円安い金額が基準となるため、お得になりますね。

とはいえ、実際に支払う費用としては管理費や共益費が家賃と別に設定されていたとしても、合計した金額であることに変わりはありません。

賃貸情報検索サイトなどでお部屋を探す際は、「共益費・管理費含」といった検索条件を加えて絞り込むなど、毎月支払う費用の合計金額で比較・検討する方が手堅い探し方といえますね。

管理費・共益費の相場は家賃の5~10%が目安

管理費、共益費はどのくらいの金額のことが多いのでしょうか。

一般的には家賃の5~10%程度に設定されていることが多いようです。家賃7万円の部屋であれば、0.35~0.7万円くらいの管理費や共益費が定められていることが多いということですね。確かに借主目線で見たときに違和感がないパーセンテージに見えます。

こうした慣例となっている目安があるにも関わらず、目をひくくらい高い、あるいは安い金額が設定されている場合には、理由を大家や不動産会社に尋ねてみると良いでしょう。

管理費があまりに安く設定されている場合、何かあったときに対応が悪かったとしても「その分管理費を安くしているでしょ」と言われてしまうかもしれません。管理体制をあまり期待しないで欲しいという意思表示であることも考えられます。

管理費が目安よりも高い場合、特筆すべきサービスがあるかもしれません。付加価値が見当たらないときには支払う価値を見出せないため、交渉の余地も出てきます。目安から外れる場合にはその理由を尋ねて、内容と金額に納得がいくか、一考することも大切ですね。

ちなみに、賃貸物件の内見に出かけた際、管理体制が整っているかを確認するためのポイントがいくつかあります。1つは建物内のゴミ置き場です。

ゴミが溜まりすぎていたり、自治体指定ではないゴミ袋で出されていたり、ゴミ袋が破れていたりと乱れが目に余るようであれば少し不安を感じますね。

また、掲示板などをチェックするのも有効です。はるかに期日を超えた案内が貼りっぱなしになっていたり、掲示物が破れていたりすると、人の目が行き届いていない様子がうかがえてしまいます。エレベータや廊下の電球が切れたままになっているのも心配です。

こうした共用部分の乱れは、管理が行き届いていない可能性を感じさせます。管理の体制だけでなく、入居者のマナーが悪い可能性もあります。

これらのチェックポイントは、実は投資家が投資物件を購入する際に確認しましょう、と言われているポイントでもあります。

投資用物件を購入する場合と、賃貸でお部屋を探す場合では、こだわりの強さは同じにはなりません(同じにしない方が適度な物件を見つけやすいです)が、参考程度にチェックして、入居前に管理体制のレベルを察しておくとがっかりしづらくなりますね。

管理費、共益費の価値をチェックするポイント
家賃に対して妥当な金額になっているか
建物の共用部分の管理は行き届いているか

正しく賃貸の出費を比較するには「めやす賃料」を把握すること

冒頭にご紹介した不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」には、管理費や共益費について、一部屋あたりの月額費用を明記することと定義されています。

業界の広告規約としては、かかることが分かっている費用については、あらかじめ明記をするべきであると取り決められていることがわかります。

チラシや賃貸契約の際に管理費や共益費の説明を受けていなかったのに、後から追加で要求された時には「事前に説明を受けていないのですが」と大家や不動産会社に交渉してもよい内容といえますね。

ここまでみてきたように、管理費・共益費は家賃の一部である可能性が高い費用といえます。見せ方の工夫に引きずられないよう、合計金額で検討するという視点があると安心でしょう。

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会では「めやす賃料」の表示を推奨しています。「めやす賃料」とは、4年間賃借した場合(定期借家の場合は、契約期間)の賃料、共益費・管理費、敷引金、礼金、更新料の合計額を1か月当たりに割り戻した金額です。

お部屋を借りるときの費用が複雑で家賃1か月分だけの比較では不十分であるという見解があることがうかがえます。

全ての広告に「めやす賃料」が表記されているわけではありませんが、自分でお部屋を探す際には、同様の計算で「めやす賃料」を試算して比較してみるのもよいでしょう。以下、めやす賃料の計算方法です(4年間借り続けた場合の費用合計金額を計算)。
(賃料+共益費(管理費)+敷金+礼金+更新料)÷48ヶ月
見せ方の工夫に引きずられず費用を比較すること、管理費・共益費が一般的な目安とあまりに外れている場合には金額の理由を尋ねること。この支払いに相応の価値を感じるか気にかけておくと良いでしょう。

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。