一度払ったら戻ってこない礼金。意味と相場を知り値引き交渉してみよう

  • 公開日:
  • 2016年12月07日
一度払ったら戻ってこない礼金。意味と相場を知り値引き交渉してみよう
敷金と違い、払うと返ってこないのが礼金。どのように礼金が取り扱われているのかを知り、安く抑える方法を探ってみましょう。

礼金ってなに?そもそも何を意味するの?

賃貸物件に入居するときに発生する費用の一つが「礼金」。礼金とは部屋を貸してくれた大家さんに対して、お礼の気持ちを込めてお渡しするお金です。でも、よく考えてみると借主であるお客さんが「どうしてお礼をするのだろう?」と思ってしまいますね。

そもそも、礼金は住宅が不足していた時代に生まれた慣習といわれています。住宅不足にもかかわらず部屋を貸してくれる大家さんに対して、感謝の気持ちを込めてお金を持参したようです。

しかし、今や『住宅は余る時代』といわれるほど、時代はすっかり様変わりしています。にもかかわらず、大家さんにお金を渡すという慣習だけが依然残っているのです。あまり腑に落ちませんが、実際には不動産会社へのお礼などに使われているといいます。

敷金と礼金ってどう違う?

礼金と同様、初期費用として発生するものに「敷金」があります。あわせて「敷・礼金」と呼ばれることもありますが、それぞれ性格はまったく異なっています。

敷金とは部屋を借りるのと引き換えに担保として預ける保証金のようなお金。家賃の滞納や原状回復に必要な費用に充てられますが、それ以外のお金は退去時に戻ってきます。

一方、礼金はお礼として差し出すお金です。一度払ったら戻ってきません。礼金を抑えようと思ったら礼金なし物件を選ぶか、契約時に値引き交渉するしかありません。(値引き交渉については、のちほど紹介いたします)
関西以西の地域では「敷金」「礼金」の代わりに「保証金」という文言を聞くことがあります。この保証金も初期費用の一つです。敷金と同じように滞納した家賃や原状回復費に充てられますが、残ったお金は戻ってきます。

しかし、注意したいのは「保証金」とともに「敷引き(しきびき)」という特約が設けられているケースです。敷引きは『謝礼』『自然損耗』『賃料の補てん』といった名目で、指定された金額はごっそり差し引かれます。礼金のように返却されません。

保証金(または敷金)50万円で敷引きが20万円という契約であれば、退去時に戻ってくるお金は30万円。そこから原状回復にかかった費用が差し引かれるので、返還されるお金はさらに少なくなってしまいます。

礼金はどれぐらい払うべき? 礼金の相場は?

一般的に礼金は、家賃の1~2か月分が必要と言われています。しかし、実際にどれぐらい支払われているのか、国土交通省のデータをみて確認してみましょう。

まずは礼金の有無を調べてみます。

下表は令和元年度~令和3年度における、賃貸物件の礼金の有無を調査した結果です。令和元年度に「礼金なし」物件に入居した世帯は全体の52.3%、「礼金あり」物件に入居した世帯は41.7%と割合にあまり差はありません。思ったより礼金を払っていない世帯はあるのですね。

■礼金の有無
令和元年度令和2年度令和3年度
礼金あり41.7%41.6%45.9%
礼金なし52.3%48.2%46.4%
無回答6.1%10.2%7.7%
続いて、「礼金あり」だった世帯が、どれだけの月数を払ったのか調べてみます。

令和元年度では「1か月ちょうど」が71.7%でした。礼金の平均月数はだいたい1か月が目安と考えられます。

■礼金の月数
令和元年年度令和2年度令和3年度
1か月ちょうど71.7%66.8%72.1%
1か月超2か月未満5.5%4.4%5.4%
2か月ちょうど13.1%18.9%14.7%
礼金のトレンドをまとめると
・「約半数は礼金を払っていない」
・「払ったとしてもほとんどが1か月以下」

こういった実情を踏まえて、気になっている物件の礼金が平均より高いのか安いのかを判断してみましょう。

礼金は交渉できるのか?

礼金は交渉していいの?と思うかもしれませんが、交渉自体は失礼なことではありません。うまくいく保証はありませんが、もちろん“大丈夫”です。
礼金は、一旦払ったら戻ってこないお金。安く抑えたいのであれば契約のときに減額交渉するしかありません。

「礼金が相場より高い物件」、「敬遠されがちな物件」、「長い間入居者がいない物件」。こういった物件なら比較的有利に交渉が進められるでしょう。

多額な一時金が必要になる入居時だからこそ、ありとあらゆる可能性を探ってみましょう。

■初期費用の目安は「家賃5~6か月分」
敷金家賃の1~3か月分
礼金家賃の1~2か月分
仲介手数料家賃の1か月分
前家賃家賃の1か月分
火災保険数千円~数万円
鍵交換代1~3万円
※保証会社との契約「家賃の0.2~1か月分」

礼金交渉する相手は?

礼金の値引き交渉する相手は大家さんです。しかし、実際は大家さんに会う機会も少ないので不動産会社の担当者に間に入ってもらいましょう。

その際に注目したいのが、大家さんと不動産会社の関係です。取引様態をみればパイプの太さを知ることができます。取引様態が「媒介」となっていれば大家さんと不動産会社が直接契約しているということ。「仲介」であれば、物件の紹介はできますが大家さんと直接契約はしていません。「媒介」のほうが交渉は進めやすいといえるでしょう。

礼金の交渉がしやすい物件とは

さきほど紹介した通り、「礼金が相場より高い物件」、「敬遠されがちな物件」、「長い間入居者がいない物件」は交渉しやすい物件といえます。「礼金を減額してくれたら契約を考える」と物件が気に入っていることも告げておきましょう。担当者に「いいお客だ」と思われることも、交渉成立のための重要なポイントです。

礼金が相場より高い物件
現在、礼金の平均月数は約1か月と考えられます。これより高い礼金は交渉の余地があります。広さ、間取り、築年数など、同じ地域にあるよく似た条件の物件と比較して、相場観を養っておくとより説得力が増すでしょう。
敬遠されがちな物件
一般的に敬遠されがちなのは、「駅から遠い」「北向き」「1階」「築年数が古い」「人気のないエリア」。こういった物件は、検索の時点で除外されることもあり閲覧する人数も少なくなりがちです。逆にいえば、こういった条件の物件は交渉しやすいといえます。
長い間入居者がいない物件
入居者が長い間いない物件もねらい目です。不動産流通標準情報システム『レインズ』でどれぐらい掲載されている物件か、つまり空き室だったか調べることができます。このシステムは会員しか見られないので不動産屋さんに尋ねてみるといいでしょう。長い間入居者がいない物件であれば、大家さんも早く入居者を入れたいはず。交渉成立の可能性は高まりそうです。
その他
6月~8月あたりのピークを越えた時期(閑散期)も交渉がしやすいといえます。繁忙期に埋まらなかった部屋は、次の需要期まで埋まらないリスクが高い考えられるため、交渉が進めやすいでしょう。

「礼金なし」物件は要注意物件なの?

「礼金なし」は誰にとっても魅力的ですが、「タダほど怖いものはない」ということわざもあります。その分家賃が高いのだろうか、駅から遠い物件が多いのだろうか、といろいろと気になりますね。

■礼金なし物件の家賃は割高?
礼金なし物件は、家賃が高めに設定されているのでしょうか。一例として、JR中央線沿線にある「阿佐ヶ谷駅」から徒歩12分~13分にある物件を比較してみました。物件Aは礼金なしで、物件Bは礼金1か月分が必要です。

物件Aは賃料と共益費を併せると8万8千円。一方の物件Bは8万4千円です。駅からの徒歩、築年数は同じ。広さは物件Aが若干狭いですが、それにもかかわらず家賃は割高です。

物件A物件B
広さ21.43㎡24.09㎡
礼金0か月1か月
賃料8万5千円8万1千円
共益費3千円3千円
駅から徒歩12分12分
築年数9年9年

入居期間が1年8か月で物件A、Bにかかるトータルコストがだいたい同じになり、1年9か月を超えると物件Bが得になります。入居期間によって損得が変わりますが、一般的に2年といわれる更新期間まで住みたいのであれば、物件Aの家賃は割高といえるでしょう。

2年間住んだ場合のトータルコスト
<物件A>
礼金0円 + 8万8千円 × 1年8か月 = 176万円
<物件B>
礼金8万1千円 + 8万4千円 × 1年8か月 = 176万1千円

「礼金」以外でも初期費用を抑える!

礼金は戻ってこないお金です。どうにか抑えたいお金ですが、これと同時にほかの初期費用を抑える方法も模索しておきたいですね。

値引き交渉をする
礼金だけでなく、ダメもとで敷金や家賃の値引きを交渉してみる。
「敷金なし」物件を探す
賃貸物件を検索するときに「敷金なし」条件を加える。
火災保険を自分で選ぶ
指定されている火災保険がなければ、自分でリーズナブルな保険に加入する。
引越し費用を抑える
引越し前に不必要なものを処分し、引越しの規模を小さくする。安い引越し業者を見つけるか、自力での引越しを計画する。
初期費用は交渉ができないものと考えがちですが、そんなことはありません。とくに礼金は本来の意味が薄れてしまった慣習です。ダメ元でもあたってみる価値はあります。わずかでも値引きが引き出せると、物入りな新生活に大いに役立つでしょう。

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。