賃貸の仲介手数料とは?不動産の仲介手数料無料や半額のからくり

  • 公開日:
  • 2016年11月16日
賃貸の仲介手数料とは?不動産の仲介手数料無料や半額のからくり
仲介手数料は誰に、何のために支払うのでしょうか。仕組みを知り、仲介手数料を抑えることが本当に得なのか考えてみましょう。
ライター:風呂内亜矢

仲介手数料は何のために支払うの?

賃貸契約をするまでには、条件に合った部屋を探す、内覧をする、契約書類を整え手続きをする、といくつかの手間がかかります。不動産会社を訪れると、それらのステップについて手伝ってくれます。

一緒に条件に合う部屋を探したり考えたりしてくれ、内覧にもついてきてくれます。契約関係の書類や、入居にあたっての審査、時には大家との交渉も行ってくれます。そうした不動産会社のサポートに対する費用が「仲介手数料」です。

部屋が決められなかった・借りられなかった場合には発生しない費用なので、部屋を決めて、はじめて支払う成功報酬型の手数料と言えるでしょう。

契約しなければ、一緒にお部屋を探したり、内覧したりしてもらっても費用が発生しないとなると、部屋を決めた際には支払うべき費用というのもなんとなく納得ができます。同時に、そのための費用ということであれば、お部屋を決めるためのお手伝いは、遠慮せずどんどん頼ったり調べたりと手間をかけてもらって大丈夫とも言えますね。

お部屋が賃貸に出される際の流れを見てみましょう。ある大家Aが賃貸に出したい部屋を所有していたとします。そこで、不動産会社Aに賃貸の募集を依頼します(不動産会社Aを元付業者とも呼びます)。

賃貸の契約が成約したら、「家賃の集金代行」を行う取り決めなどもしている場合もあります(集金した家賃から5%などの手数料を受け取ります)。こうした場合、不動産会社Aは大家Aの保有物件に対し「賃貸管理会社」という立場をとることになります。
不動産の話をしている時に「管理会社」という言葉が出てくることがありますが、一口に管理会社と言っても「建物管理会社」と「賃貸管理会社」では全く異なる業務をしています。

「建物管理会社」はマンション管理人の手配や、建物が長期的に価値を保つための修繕計画を策定することなどが仕事になります。「賃貸管理会社」は大家の代わりに賃貸の募集をしたり、時には家賃の集金を代行したりする会社のことで、業務はまったく異なります。今回の話で関係があるのは「賃貸管理会社」です。

賃貸管理会社でもある不動産会社Aは、自身も借主を探しますが、不動産会社間で共通してみられるデータベース(通称レインズ)にも物件の情報を登録します。

するとレインズをみた仲介業者(客付業者)不動産会社Bが借主Bを見つけることもあります。また仲介業者を介さない独立した借主Cを不動産会社Aが見つけることもあるでしょう。それぞれの場合で少しお金の流れが違います。

仲介手数料のお金の流れ

不動産会社Aが独立した借主Cを見つけた場合、大家Aからも借主Cからも仲介手数料をもらえる可能性があります。大家Aと借主Cそれぞれから家賃の0.5か月分を受け取ることもありますし、借主Cのみから家賃の1か月分を受け取ることもあるでしょう。

さらに、家賃の集金代行を不動産会社Aから請け負う場合、借主Cが入金する家賃の一部を大家Aから継続的に受け取ることができます。たとえばCから10万円集金し、Aには9.5万円を振り込むといった形で集金代行の手数料を受け取ります(不動産会社Aに5000円の手数料が入る)。

集金代行の手数料が受け取れることを考えると、できるだけ賃貸管理会社の立場をとっている部屋を勧めたくなるのではないかとも想像できますね。

仲介業者の不動産会社Bの立場も見てみましょう。不動産会社Bの店舗に部屋を探している借主Bが訪問します。不動産会社Bは借主Bが気に入りそうな部屋を探し、借主Bから仲介手数料を受け取りたいと考えます。

不動産会社B自身が賃貸管理会社となっている物件を借主Bが気に入れば、先ほどの不動産会社Aと同様に集金代行の手数料を受け取ることができる可能性もあるため勧めたいところです。

しかし、賃貸管理を行っている物件が借主Bの望んでいる条件に合致しない場合、成約そのものをとれなくなってしまう可能性も出てきます。

自社が賃貸管理している物件で借主Bを満足させられそうにない場合、レインズに登録されている情報も含めてリサーチすることになるでしょう。今回のケースでは借主Bは不動産会社Aが賃貸管理をしている大家Aの物件を気に入ったとしましょう。

この場合、不動産会社Bの収入源は、原則借主Bの支払う仲介手数料のみとなります。

このように見てくると、大家Aの物件を借りようとした場合、不動産会社B(客付業者)と契約をするよりも、不動産会社A(元付業者)と契約をする方が、仲介手数料が安くなるかもしれないと期待できます。不動産会社Aは仲介手数料を値下げしても集金代行の手数料が継続的に入ることを選ぶ可能性もあるからです。

一方で大家A以外の物件も色々みたい状態においては、必ずしも不動産会社A(元付業者)である必要はないとも言えます。

不動産会社B(客付業者)に比べて不動産会社A(元付業者)の方が大家と直接交渉ができるため、融通が利く可能性がある反面、大家に対して空室を埋める使命を客付業者(仲介業者)よりも強く持っているとも言えるため、借主にとって有利な交渉がしやすい立場かは一概に言えないところがあります。

■たとえば70,000円の賃貸を契約した場合の仲介手数料の流れ
表記例別名大家借主
媒介元付業者37800円(0.5か月)、毎月3500円等(元付業者が管理会社の場合)37800円(0.5か月)
0円、毎月3500円等(元付業者が管理会社の場合)75600円(1か月)
仲介客付業者0円37800円(0.5か月)または75600円(1か月)

※家賃の0.5か月の場合37800円、家賃の1か月の場合75600円(上限)

元付業者は媒介、客付業者は仲介

取引態様では不動産会社と大家の関係性、借主としての自分と大家との間に誰が入るのかということを推し量ることはできますが、元付業者(賃貸管理会社)だから有利、客付業者(仲介業者)だから不利と言い切れないところが難しいところです。

取引態様もチェックポイントではありますが、やはり部屋自身の人気が高ければ交渉は難しくなりますし、比較的不人気の部屋であれば交渉はしやすいでしょう。

賃貸検索サイトで同一のお部屋が複数件ヒットするのは、元付業者(通常1社)も、そして客付業者(複数社)も、レインズで発見したお部屋を賃貸検索サイトに登録することができるからです。

ところで、仲介手数料が安いことは借主にとって、本当に喜ばしいことでしょうか。仲介手数料の金額について、もう少し考えてみましょう。

※不動産会社が複数書かれているのは仲介業者がレインズで発見したお部屋を賃貸検索サイトに登録することができるからです。

仲介手数料、実は半月分が原則

借主として賃貸契約する際に家賃1か月分の仲介手数料を支払った経験がある方も多いかもしれません。しかし、実は借主が支払う仲介手数料は「家賃の半月分+消費税」までとするのが原則です。

建設省告示第1552号には下記のような定めがあります
【第四 貸借の媒介に関する報酬の額】宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の一・〇八倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たつて当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の〇・五四倍に相当する金額以内とする。
賃貸の媒介で受け取ることができる報酬の合計額は家賃の1か月分+消費税以内であること、また依頼者(大家や借主)の承諾を得ている場合を除いては半月分+消費税(0.54倍)以内であること、とされています。

しかし、実際には借主が家賃の1か月分の仲介手数料を払うことが多いのではないでしょうか。依頼者から承諾を得ているという形で、借主から1か月分の仲介手数料を受け取っているという形式をとっています。この場合、大家からは仲介手数料を受け取らないことになります。

借主としては半月分が原則なのであれば、半額にしてもらいたいところですね。法律的な定義通りだと、ここは交渉の余地があるということになります。仲介業者が顧客をたくさん抱えている場合、仲介手数料を1か月分支払っている人を優先するかもしれません。

逆に1人でも多くの成約を獲得したいと考えている店舗であれば、仲介手数料を半月程度まで値下げすることは現実的にお願いできる目安ともいえます。

仲介手数料、安いことが本当にお得なのか

ところで、仲介手数料が半月どころか、無料という物件はどうなっているのでしょうか。先に出てきた賃貸管理会社のように、賃貸契約が決まれば継続的に家賃の一部が得られるので仲介手数料を無料にするメリットもあるかも知れません。

また、本来は支払う必要のない費用ですが、大家から広告費という名目で費用を受け取る不動産会社もあります。この広告費用は、たとえば借主から受け取った礼金1か月分が、そのまま充てられることもあります。

つまり仲介手数料は半月分や無料であっても、大家に請求される広告費の原資を、礼金として結局は借主が負担しているケースもあるということです。

本来大家は広告費を支払う必要はありませんが、自分の部屋への入居をより早く決定して欲しいという気持ちから、こうした契約内容に合意している場合もあります。

仲介手数料が安価であっても礼金などで支払う金額が調整されているところがあるという点が注意ですね。賃貸物件には礼金、仲介手数料、家賃、共益費、入居2か月は家賃0円のフリーレントなどの様々な費用の見せ方がありますが、最終的に総額でバランスをとっているケースも多いです。

仲介手数料を値引きしているように見えて代わりに礼金を手厚くしていたり、当初2か月の家賃は0円にする代わりに3か月目以降からの家賃は高い水準のままであったりすることもあります。

大家が物件を維持するために支払っているローンの返済額や管理費・修繕費・固定資産税といった維持費と採算がとれるか、不動産会社としては仲介手数料や、賃貸の代行手数料、大家が納得する総額の設定になるかなどを考えて配分が決められている側面もあります。

借りる側としては、手数料や最初の家賃が安くなっていることだけにこだわるのではなく「2年間の総額で支払う費用はどちらが多いのか」といった視点を持つと損をしにくいでしょう。

もちろん、2年間ではあまり変わらない、あるいは少し多めに払うことになっても初期費が抑えられることは助かるといった判断をすることもあるかと思います。その場合、仲介手数料が値引きされる物件や業者の存在は、借りる側にもメリットがあるといえます。

<仲介手数料知っておくべきポイント>
原則は家賃半月分。承諾をした場合1か月分までの手数料が法律で許されている
不動産会社が媒介ならオーナーとの距離が近い(交渉しやすい一方、オーナーと業者が懇ろな可能性も)
仲介手数料が無料でもオーナーの支払う広告費に充てるための礼金が上乗せされている場合もある
仲介手数料だけの比較ではなく2年間の総額などで比較すると失敗しにくい

仲介手数料の多様化

スマイティではありませんが、最近では無店舗型の不動産仲介サービスもあります。仲介手数料を一律3万円とし、内覧の都度手数料を徴収(成約時にキャッシュバック)するような新しいサービスも始まっています。

内覧をたくさんしたい人にとっては結局手数料がかさむこともあるかもしれませんし、対面で担当営業に相談できる方が安心できる人にとってはかえって難しく感じるかもしれません。

しかし、部屋を探すのが得意な人や、忙しくて実店舗に出向くことが負担に感じる人にとっては時間も費用も節約できるチャンスとなっています。

一方、担当営業という専門家を介することで望む物件が見つかりやすい場合もあります。賃貸物件については、特定の地域に強い不動産会社などが日々データをチェックしているため、俗人的ではありますが、担当営業個々人の勘どころのお陰で良い物件が見つかることもあります。

また、築年数が浅いものを希望していたけど、実はリノベーション物件も候補になり得た、といった自分で気が付いていなかった物件に求める条件について視野を広げてくれたり、アドバイスをくれたりすることがあることも営業担当者と直接会って話せるメリットと言えるかもしれません(無店舗型もチャットや電話などでの相談対応はあります)。

新しい仲介サービスにも、従来からある担当営業の手腕で得られる付加価値にもメリットと注意点があります。自分で手間をかけて費用を抑えるか、費用はある程度払ってプロの目で選定してもらうか、選択できる時代になっているという見方もできますね。

仲介手数料の意味やお金の流れも時代とともに少しずつ変化が見られます。仲介手数料という単体の費用だけに注目するのではなく、総支払額や、新しいサービスの利用を検討するなどして、自分に合う選択をしていけると良いですね。

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。