用途地域
ようとちいき
用途地域とは、都市計画法によって定められた土地の用途を限定するものです。
近隣商業地域
近隣商業地域とは、近隣の住民が日用品などの買い物をする店舗や事務所などの業務の利便の増進を図る地域です。地元の商店街などで、生活利便性やにぎわいもあります。建てられるものは住居のほか、教育施設、病院、店舗、事務所、ホテル、ボウリング場やスケート場、カラオケボックス、パチンコ店など広範な商業施設です。ミニシアターや自動車教習所、環境悪化のおそれがない150m2以下の工場も建てられます。商業地域や準工業地域で禁止されているものは建てられません。
建ぺい率は60・80%、容積率は100・150・200・300.・400・500%です。
建築基準法
建築基準法とは、建物を建てるときの基本的な法律です。建築物の敷地・構造・設備・用途の最低基準を示し、用途地域や日影規制などエリアによって守るべき事項などが定められています。建物の利用者や近隣住民の生命・健康・財産を守ることを目的に、1950年に施行されました。基準の具体的な技術水準などは、建築基準施行令や施行規則などで詳細が規定されています。また、基準が実効性をもつように、着工前の建築確認や工事中の中間検査、完了検査、違法建築物の是正措置なども定められています。
建築基準法はこれまでに何度も改定を重ねています。1981年には現在の耐震基準が導入、2003年にはシックハウス対策の規定導入、2007年には耐震偽装事件を受けて建築確認審査の厳格化が図られました。中古マンションを選ぶ際には、いつ建てられたかによって基準が異なるため、築年は大まかな安全性を見るときの一つの目安にもなります。
建ぺい率
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積のことで、通常は1階の床面積を指します。都市計画区域内では、防火や避難、通風・採光など衛生上の観点から、敷地内に一定の空地を保有することが定められています。建ぺい率は、建築基準法によって用途地域に応じて上限が決められています。
例えば、建ぺい率60%の地域では、100m2の敷地に建てられる建築面積は60m2が上限です。
なお、防火地域内の耐火建築物や角地にある建築物などについては、建ぺい率が緩和されるものもあります。
工業専用地域
工業専用地域とは、もっぱら工業の業務の利便の増進を図る、工業のための地域です。どのような工場も建てられますが、住宅や店舗、学校、病院、ホテルなどは建てられません。図書館など騒音や振動の影響を避けるべきものや、ボウリング場、マージャン店など、工業地としての土地利用の純化を妨げる施設についても、原則として建築が禁止されています。
建ぺい率は30・40・50・60%、容積率は100・150・200・300・400%です。
工業地域
工業地域とは、おもに工業の業務の利便の増進を図る地域で、どのような工場も建てられます。この地域には、公害の発生のおそれのある業種の工場も建てられます。そのため、人が集まることの多い施設などは建築が禁止されています。具体的には、教育施設、病院、ホテル、料理店、劇場、キャバレーなどです。
建ぺい率は50・60%、容積率は100・150・200・300・400%です。
おもに工業のための地域ですが、最近は工場跡地のなどで大規模な街づくりが行われるなど、環境配慮型の街並みが整備されているものもあります。ただし日影規制も対象ではなく、また。周辺の交通量や排気ガス、騒音などの懸念はありえるので、実際に現地を確認することが大切です。
準工業地域
準工業地域とは、おもに軽工業などの工場で、環境悪化のおそれのない工場の、業務の利便の増進を図る地域です。工場の規模に規制はありませんが、振動や騒音の発生、火災の危険性などから一定の業種の建築は制限されています。危険物の貯蔵・処理なども規制されます。
住宅や店舗と工場が混在する地域です。
建ぺい率は50・60・80%、容積率は100・150・200・300・400・500%です。
なお、工場跡地などに住宅街やマンションが建設されるケースでは、用途地域は準工業地域や工業地域にありながら、大規模なグランドデザインによって街並みが整備されたものや、環境に配慮された良好な住環境も見られます。準工業地域はさまざまな用途に活用されているので、住環境としての良し悪しは個別性が高いといえます。
準住居地域
準住居地域とは、道路の沿道において、自動車関連施設などの建築やサービス業と、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。住居系の用途地域ですが、用途制限は少なく、自動車用車庫やパーキング付レストラン、大型店舗、ショールームなど、幹線道路沿いの立地を活かしたサービス業が多く見られます。建てられるものは住居のほか、教育施設、1万m2以下の店舗、事務所、ホテル、遊技施設、車庫、倉庫などです。近隣商業地域、商業地域、準工業地域で禁止されているものは建てられません。また、住環境を悪化させるおそれのある小工場や一定の危険物の貯蔵・処理工場などは禁止されています。
建ぺい率は50・60・80%、容積率は100・150・200・300・400・500%です。
商業地域
商業地域とは、店舗、金融機関、飲食店、デパート、事務所などの商業の業務の利便の増進を図る地域です。住宅や小規模の工場も建てられます。準工業地域で禁止されているものは建てられません。また、原動機を使用する150m2以上の工場や、商業や業務活動の障害となる工場は禁止されています。
建ぺい率は80%、容積率は200・300・400・500・600・700・800・900・1000・1100・1200・1300%です。
市街地の中心部や駅前などで、ビルが林立しているエリアです。利便性が良く、高層マンションやタワーマンションなども建てられています。ただし、日影規制の対象にならないため、住戸の日当たりなどは個別に確認する必要があります。
第1種住居地域
第1種住居地域は、住居の良好な環境を守るための地域で、建てられるものは住居のほか、学校、3,000m2までの一定の条件を有する店舗、事務所、ホテルなどです。また、税務署、郵便局、警察署、保健所、消防署、国土交通大臣が指定する電気通信事業設備および一定規模以下の付属自動車車庫は建てられます。マージャン店、パチンコ店、カラオケボックスは建てられません。
建ぺい率は50・60・80%、容積率は100・150・200・300・400・500%です。
第1種中高層住居専用地域
第1種中高層住居専用地域は、おもに中高層住宅の良好な環境を守るための地域で、建てられるものは住居のほか、小・中・高等学校、500m2以内で2階以下の一定の店舗、大学、高等専門学校、専修学校、病院、老人福祉センター、児童厚生施設、300m2以内で2階以下の自動車車庫その他公益上必要な建築物です。ボウリング場やホテルなどは建てられません。
建ぺい率は30・40・50・60%、容積率は100・150・200・300・400・500%です。高さ制限はありません。
第1種低層住居専用地域
第1種低層住居専用地域は、低層住宅の良好な環境を守るための地域で、この地域に建てられるものは住居のほか、小規模な店舗を兼ねた住宅、事務所を兼ねた住宅、共同住宅、小・中・高等学校、銭湯、診療所など、住宅の近隣に不可欠な社会文化施設や公益上必要な建物に限定されています。
建ぺい率は30・40・50・60%、容積率は50・60・80・100・150・200%です。建築物の高さは、原則として10または20m以下に制限されています。
第2種住居地域
第2種住居地域は、おもに住居の環境を守るための地域で、建てられるものは住居のほか、小・中・高等学校、大学、店舗、事務所、ホテル、パチンコ店、カラオケボックスなどです。キャバレーや映画館、300m2を超える自動車車庫などは建てられません。大規模な店舗や事務所の立地を、一定程度制限した地域といえます。
建ぺい率は50・60・80%、容積率は100・150・200・300・400・500%です。
住居と商業施設、オフィスなどが集まる多彩なエリアとなります。
第2種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域とは、おもに中高層住宅の良好な環境を守るための地域で、建てられるものは住居のほか、小・中・高等学校、大学、病院、1,500m2までの一定の店舗や事務所などです。マージャン店、カラオケボックス、劇場、パチンコ店、300m2を超える自動車車庫、倉庫、ボウリング場、ホテルなどは建てられません。
建ぺい率は30・40・50・60%、容積率は100・150・200・300・400・500%です。
必要な利便施設の立地を認めたマンションなどの中高層住宅が中心の地域です。
第2種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域とは、おもに低層住宅の良好な環境を守るための地域で、建てられるものは住居のほか、小・中・高等学校、銭湯、診療所、150m2までの一定の店舗、飲食店などです。小規模な店舗の立地を認めた、低層住宅専用の地域です。
建ぺい率は30・40・50・60%、容積率は50・60・80・100・150・200%です。建築物の高さは、原則として10または20m以下に制限されています。
地域地区
地域地区とは、住宅地、工業地、商業地など、土地利用の全体像について定めたものです。市街化区域および市街化調整区域ともに、次のような地域、地区、または街区があります。
土地利用のあり方の基本となる「用途地域」、用途地域が定められていない土地の用途の概要を定める「特定用途制限地域」、高層住宅の建設を誘導する「高層住居誘導地区」、建築物の高さの最高限度または最低限度を定めた「高度地区」、市街地再開発事業の対象となる「高度利用地区」、「都市再生特別地区」、火災の危険を防ぐために建物の構造などを規制する「防火地域」「準防火地域」、景観を保護する「景観地区」、都市の風致を維持するための「風致地区」、古都を保存するための「歴史的風土特別保存地区」、都市の緑地を保存する「緑地保全地域/特別緑地保全地区」「緑化地域」、「生産緑地地区」文化財を保護するための「伝統的建造物群保存地区」などがあります。
都市計画
都市計画とは、都市の健全な発展と自然環境の調和などにより、健康で文化的な都市空間を整備するための総合的な街づくりの計画です。都市計画法の規定による法的な規制力があり、秩序ある整備を図るための土地利用や都市施設の整備、市街地開発事業などが定められます。
都市計画を定める場所を都市計画区域と呼び、一定の開発行為を行う場合には都道府県知事の許可が必要となるなど、規制がかかります。
都市計画には、市街化区域と市街化調整区域の区分、地域地区、促進区域、遊休土地転換利用促進地区、被災市街地復興促進地域、都市施設、市街地開発事業、都市計画区域のマスタープラン、都市再開発方針等、市街地開発事業等予定区域、地区計画等があります。
容積率
容積率とは、敷地に対する延べ床面積の割合で、その上限が都市計画における用途地域によって制限されています。また、敷地の前面道路の幅員によっても、容積率は制限されます。このどちらか厳しいほうによって、建物の容積率は制限され、建てられる高さが規制されます。
容積率の制限とは、例えば、容積率が200%で敷地面積が100m2の場合、延べ床面積200m2までの建物が建てられます。延べ床面積は各階の床面積の合計ですが、一定条件の地下室や車庫は算入されません。
角地などで前面道路が2つある場合は、広い方の道路の幅員を適用します。また、敷地が容積率の異なる地域にまたがる場合は、それぞれの地域ごとの延べ床面積を合計したものとなります。
敷地
敷地とは、建物が立っているか、これから建物を建てる土地のことです。敷地面積は、その土地の面積のことで、水平投影面積をいいます。水平投影面積とは、土地や建物を真上から見たときの面積で、傾斜や凹凸があっても、水平として測定した面積になります。
敷地面積には、登記簿に記載された登記簿面積(地積)と実測面積が異なっている場合があります。そのため、土地の売買契約などにおいては、土地家屋調査士などの専門家による実測をしてからというのが鉄則です。
なお、住宅を建てるために土地を購入するときには、接道条件などによっては、土地面積の一部が敷地面積に算入できないので、注意が必要です。また、敷地面積だけでなく、建物の配置や駐車場のスペースなども考慮しましょう。