分譲より賃貸?タワーマンションの動向とメリット・デメリット

分譲より賃貸?タワーマンションの動向とメリット・デメリット
実は賃貸でも住めるタワーマンション。不動産コンサルタントの目線から、近年の傾向や、メリットデメリットをご紹介します。

タワーマンションとは

どれくらいの高さで何階以上ならタワーマンションなのでしょうか。タワーマンションという呼称に聞きなれていて、なんとなくのイメージをもっている方が多いのではないでしょうか。まずはタワーマンションについて知っておきましょう。

タワーマンションは「高さ60m以上、20階以上」の住居となります。普段私たちは特に意識せず主に住居として使われる高い建物はすべて「タワーマンション」と呼んでいます。

しかし実は、タワーマンションという呼称に法的な定義はありませんが、一般的に高さ60m以上、階数20階以上の住居用高層建築物をタワーマンションと呼んでいます。

また、建築基準法では、防災などの観点からこの条件以上の建物を超高層建築物と定義しており、これをタワーマンションの定義とみなすことができるでしょう。

賃貸のタワーマンションが市場に出回る理由

これまでは分譲型の多かったタワーマンション。なぜ近年になって賃貸のタワーマンションが市場に出回り始めたのでしょうか。

その理由の一つは、売れ残った分譲マンションをさばくため。もともとは分譲として売り出していたタワーマンションに空き部屋が多くなってしまった場合、利益を出すために賃貸として貸し出しているケースがあります。

もう一つは、不動産デベロッパー※の事情も考えられます。近年、不動産投資界隈ではリート(REIT)とよばれる商品が注目を集めています。

リートとは、投資家から集めたお金でオフィスビルや商業施設、賃貸住宅などの不動産を購入し、その不動産から得た家賃収入やテナント料、売却益を利益として投資家へ分配する投資商品のことです。

一般的には、不動産投資には多額の資金が必要でした。しかし、リートのおかげで投資家は不動産に間接的に投資が可能となり、普及が広まっています。

これにより、分譲マンション同様にまとまった利益を獲得できるため、不動産デベロッパーは賃貸マンション事業に積極的に参入。市場には賃貸タワーマンションが出回るようになったのです。

※不動産デベロッパーとは大規模な住宅地の開発、都市開発や再開発、リゾート開発や交通網の整備などをおこなう企業のこと。大手不動産デベロッパーには、野村不動産や三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス(三菱地所)、住友不動産、東京建物などがある。

最近のタワーマンションの傾向

まずは不動産コンサルタントの三橋さんに最近のタワーマンション傾向やメリット、デメリットを伺います。

三橋 秀行......不動産コンサルタント。大学卒業後、不動産業界に就職。戸建て住宅販売の営業や不動産投資コンサルティングなどに携わる。現在は店舗物件の開発や仲介をメインに活動中。

非日常の追求から、日常的に使いやすい空間へニーズが変化
---最近のタワーマンションの傾向を教えてください。

---三橋
最近のタワーマンションの傾向を知るために、タワーマンションの歴史を紐解いていきましょう。タワーマンションはだいたい1970年代ぐらいまで遡ることができます。

それまで高層物件の住宅用途への供給は限られていましたが、建築技術の進歩によりこの時代にタワーマンションの先駆けともいえる建物が出現してきました。1980年代後半のバブル経済により地価が高騰し、タワーマンションが増加し始めます。

決定的だったのは1997年の建築基準法改正。規制緩和が起こり、タワーマンションの建築計画が急増したことです。それに伴いタワーマンションはそのステータス性、資産価値と共に普及していきました。

こうした歴史を踏まえ、現在のタワーマンションにも時代の変化に伴いいくつかの傾向が見てとれます。かつてのタワーマンションといえば、居住者専用スパやバーラウンジなど、とにかく非日常性を追求した共用スペースが特徴的でした。

古めの賃貸タワーマンションに注意。古いタワーマンション物件に多いのですが、注意しなければいけないのは共用スペース。居住者専用スパやバーラウンジなど、およそ日常で使わないであろう共用スペースに管理費がかかり、周辺相場の割に高い賃料を設定した物件があります。賃貸と言えどもまったく使わない施設の管理費も払っているのは馬鹿らしいもの。内見時には共用スペースが必要以上に華美でないかどうか、無駄な施設がないかどうか注意しましょう。

しかし近年は、これまで蓄積されてきた入居者からの声を反映させ、より日常的に使いやすい空間へと進化しているといえます。

---日常的に使いやすい空間?

---三橋
たとえば、1階にスーパーやクリニックなどが備えられている、キッズスペースが用意されているなど、子育て世代にも暮らしやすい空間となっているのが傾向です。

最近では居住者だけが利用できるカーシェアリングサービスのあるタワーマンションも増えています。今注目の一棟のうちのひとつ、勝どきの「ザ・トーキョー・タワーズ」などにも導入済み。高級車を持つのがステータスだった時代から、モノをシェアする時代へと、富裕層の価値観も多様化しているようです。

タワーマンションのメリット

眺めがよく、北向きの部屋でも日当たりが確保できる
---タワーマンションのメリットは、やはり”眺めの良さ”でしょうか?

---三橋
そうですね。タワーマンションは高さ60m以上を指すことが多いのですが、高さ60mの高層階ともなると窓からの見晴らしは絶景。タワーマンションが立ち並ぶ人気の湾岸エリアともなると、昼には東京湾を見渡せる景色、夜は眼前に広がる美しい夜景と、季節・時間を問わず部屋からの眺めを楽しむことができます。

住環境という意味では、低層マンションよりも方角や周辺の自然環境に左右されづらい建物が多いという点も挙げられます。

たとえば通常人気があるのは南向きの部屋ですが、タワーマンションの高層階であれば周りに日光を遮る建物のないことが多く、北向きでも入居しやすいと言えます。また、機密性が高く虫が出にくかったり、気兼ねなく換気できることも住みやすさにつながります。

タワーマンションから出ずにゴミ出し・買い物ができる物件も多い
---高層建築ならではのメリットが多いのですね。

---三橋
他にもありますよ。共用設備やサービスの面で充実している物件が多いのも、タワーマンションのメリットのひとつ。たとえば1階にスーパーが入っていると、何かと忙しい子育て世代にとっては大変便利。エレベーターを乗り降りするだけで買い物を済ませられます。

特に、各階フロアにゴミ捨て場があるのは便利でしょう。毎朝1階までゴミを持って降りるのは面倒ですから。一見するとゴミ捨て場と分からないような扉になっていて、匂いも漏れない造りになっています。他には人を呼べるコミュニティスペースや、キッズスペースが用意されているところもあります。

以前よりも、タワーマンションの中だけで生活が完結する使い方を望む人が増えているため、このような生活に関わる全般の機能が充実してきていると言えます。

タワーマンションのメリット
眺望が良い
北向きでも比較的日光が多く入り、日照不足が気になりにくい
機密性が高く保温性もある
高層階であれば虫が出にくい
各階フロアにゴミ捨て場がある
利便性が高い共用設備(スーパー、クリニック、キッズスペースなどが存在する場合も)

タワーマンションのデメリット

地震が起きたときの揺れが大きく、停電時に弱い
---逆に、タワーマンションのデメリットは何でしょうか。

---三橋
やはり2011年に発生した東日本大震災の影響で、地震によるデメリットが見直されています。実際、震災のときは高層階ほど大きく揺れ、またエレベーターがストップしてしまったために、屋外への退避に階段を使うことを強いられた方々もいます。

もちろん厳しい耐震・免震構造基準が国によって定められているため、建物倒壊は免れるはずです。しかしタワーマンションのメリットの恩恵が大きい高層階ほどこうしたデメリットもあります。

タワーマンションに住むなら分譲ではなく賃貸?

---三橋
タワーマンションに住みたいと思った時には、多くの方が分譲物件の購入を検討しますが、分譲で一生の住まいとするよりも、賃貸での利用をおすすめします。

タワーマンションのきめ細やかなサービスはメリットですが、分譲で住んでしまうと、サービスを必要としない人までが維持するために割高となった管理費を支払わなくてはならないためです。

たとえば子育てを終えた世代がいつまでも託児所サービス代込みの管理費を多く払っていては、その分のお金がもったいないと感じますよね。タワーマンションには年齢、性別、収入、家族構成、価値観など様々な人たちが集まって暮らしていることもあり、変化していくライフステージの中で一時期を過ごす場所ととらえるほうが良さそうです。

それに、色んな住人がいるということはそれだけ合意形成も難しいです。外国人との生活習慣の違いや大規模修繕が発生したときに、管理組合の運営が大変になってきます。これは大規模タワーマンションが建設されるようになって10~20年経ったまさに今、新たに直面する課題です。

高層マンションの修繕となると、高額な修繕費の住民間の配分など、多くの難題が発生するでしょう。上層階と下層階では金銭感覚も違い、さらに部屋の所有目的が住居、投資など異なることも多い。そんな中で合意を取り付けるのは簡単なことではないでしょう。快適さを求めて入居したはずなのに、かえって住みづらくなってしまうかもしれません。

人口減少している中、分譲に住むのは危険

---三橋
先ほどタワーマンションは「ライフステージの一時期を過ごす場所ととらえるほうが良い」と伝えました。分譲を検討している場合は、管理費や修繕費の負担以外にも、考えるべきことがあります。

2008年をピークに、人口減少を続ける日本。しかし人々の住まいは供給過剰になってきています。現在のペースで住宅供給が続くと仮定すると、2040年には全ての住宅の約40%が空き家になるという試算もあるほどです。

「空室率が増加しているのはアパート。タワーマンションは資産価値が下がりにくい」と謳う業者もあります。しかし住宅の供給過剰が続くなか、長期的に資産価値を保ち続けられるでしょうか?

地価変動や災害などさまざまな要因が、住宅の価値を変えていきます。そしてその多くは購入時には予期できないことです。タワーマンションは終の住処と考えるより、賃貸として住む選択が良いのかもしれません。

実際に探すにはどうすればいいのか

---賃貸のタワーマンション物件はどのように探せばいいのでしょうか?

---三橋
「タワーマンションは他の賃貸物件と探し方が違うのでは……?」と思われる方もいるかもしれませんが、不動産屋に問い合わせれば案内してもらえます。特別な手続きも必要ありません。

インターネットでは賃貸情報サイトの高級賃貸に特化した特集ページを活用してみてください。高級賃貸というくくりなのでタワーマンションに特化した検索ではありませんが探し易くなるでしょう。

東京都が運営する 特別法人JKK東京(東京住宅供給公社) も少数ながらタワーマンションを取り扱っています。なかには、タワーマンションが家賃10万円以内で住める物件も。入居までのフローが一般的な物件と異なるので、まずは不動産情報サイトをチェックしてみるといいでしょう。

賃貸でタワーマンションを探すなら江東区・江戸川区がオススメ
もしこれからタワーマンションを選ぶなら、江東区、江戸川区あたりがおすすめ。代表的な場所は豊洲です。この2つのエリアは、東京23区の中でも開発の余地が残された数少ない貴重な土地。他の区は再開発しないと新しく建てられませんが、ここはむしろ新しく増やさざるを得ないので、これからどんどん住みやすい街になっていくでしょう。

タワーマンションのカタチと構造

---タワーマンションには様々な種類があるように思います。教えて頂けますか?

---三橋
一口にタワーマンションといっても、高さや太さ、建て方などによっていくつもの種類に分けられます。特に、タワーマンションは一般的な住居と違って投資対象として扱われることも多いもの。ここからはタワーマンションの形やそれぞれの構造の特徴をみていきます。

タワーマンションを販売する側はなるべく住戸数を増やして利益をあげることを考えます。しかし、増やしすぎると1戸が狭くなる、あるいは間取りが限定されてしまうため、顧客にとって魅力の少ない部屋となります。そのため、住戸数と部屋のサイズや形状との兼ね合いが重要になってきます。

なるべく多くの戸数を確保しながらより快適で眺望の良い部屋を取られるよう、これまでタワーマンションの形にも様々な工夫が施されてきました。

賃貸タワーマンション内見の際には構造と特徴を抑え、しっかりと内見するようにしましょう。

スクエア型
---三橋
タワーマンションの基本形はこのスクエア型。中央のエレベーターや階段を囲むように内廊下があり、その外を住戸が囲んでいるという造りです。外周を長くして窓などの開口部を広くとっているため、部屋からの眺めが良くなります。

スクエア型では、1階あたりの面積を増やすとその分廊下も長くなってしまいます。全体の面積から廊下に使われる分が多くなるため、1戸あたりの住戸の面積が狭くなってしまいます。ワンフロアあたりの戸数を15~20戸とし、敷地内にタワーを複数建てることで全体の住戸数を増やし、大規模タワーマンションとしていることが多いのが特徴です。

外観はすっきりとシンプルな形なので周りの風景に違和感なく溶け込みます。高さがあるだけに圧迫感を感じやすいタワーマンションですが、角を面取りする(8角形にする)などして威圧感を軽減させる工夫を凝らしているタワーマンションも多く存在します。

ボイド型
---三橋
ボイド型は、建物の中心に吹き抜け(ボイド)があることから名づけられました。内廊下があるスクエア型にくらべ、ボイド型のほうが1層あたりの部屋数を多く確保できます。

吹き抜けの周りには廊下を配置していますが、1層あたりの面積を広くすると廊下以上に外周長が長くなるため、開口部の広い十分な広さの住戸を設置可能になります。
また、ボイド型にすることでタワーマンションに開放感と一体感がもたらされます。

トライスター型
---三橋
次は少し変わった形のトライスター型。またの名をY字型とも言い、上から見るとアルファベットのYのように見えます。

トライスター型は居住棟が3つ一定の角度を保って向かい合っているため、部屋によって日照時間が限られる、夜になると部屋の中が見えてしまうなどのデメリットもありました。そのため、昔ほどは建設されなくなっているようです。

板状型
---三橋
通常のマンションと同じような一面に外廊下、裏側に住居が並んだ板状型のタワーマンションも存在します。かつては狭い住居を「マッチ箱のよう」などと揶揄した時代もありましたが、板状型はまさにマッチ箱のようなコンパクトな外観。

タワーマンションよりも普通のマンションのような印象を与えますが、非常に無駄が少ない形状でしょう。2年前には、柱も梁もない新工法で建てられた高層板状マンションが話題になりました。

A字型
---三橋
板状型を2つ、角度をつけて並べた形で、上から見るとアルファベットのAの字のように見えるのが特徴。デュアルフェイスと呼ばれることもあります。

例をあげると、千代田区の高額物件として話題になった「パークコート千代田富士見ザ・タワー」などが有名です。Aの下部、開いた部分にエレベーターホールを設置してあります。Aを縦長にすることで、部屋をワイドスパン型※としやすくなります。比較的新しい形と言えるでしょう。

※ワイドスパン型.....バルコニー側の間口を広くとった間取りのこと。窓を大きくとれるので光が差し込みやすく、明るい開放感のある部屋となりやすい。

おわりに

賃貸タワーマンションのメリットやデメリットについて、専門家の声も交えて紹介しましたが、最初の描いていたイメージ同じだったでしょうか?もちろん賃料が高いなどデメリットもありますが、快適に暮らすことができて、眺望やサービスなど特別感を味わえるからこそ人気が高いのがタワーマンション。

あなたのライフステージに合わせて上手く選択し、住むことで人生の満足度をグッと高めてくれるに違いありません。

タワーマンションに興味を持ったら、住んだときをイメージしながらいろんな間取りを眺めてみてくださいね。あなたの条件に合ったお部屋がきっと見つかるはずです。

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。