賃貸借契約の連帯保証人が立てられない場合はどうすればいい?

賃貸借契約の連帯保証人が立てられない場合はどうすればいい?
賃貸借契約には連帯保証人が必要です。保証人と連帯保証人の違いや、連帯保証人がいない場合はどうするかなどをご説明します。

賃貸の保証人をしっかり理解する

賃貸物件を借りる際には契約をしますが、賃貸借契約の保証人には「保証人」と「連帯保証人」の2種類があります。不動産会社では主に「連帯保証人」が求められます。はじめに保証人とは何かを知っておきましょう。

そもそも保証人とは
物件を借りるときには貸し主に賃料を支払います。賃料は決して少なくない金額なので、貸し主側はちゃんと支払い続けてくれるのか不安があります。

そこで、借り主が何らかの事情で賃料支払いができなくなり不払いになってしまったとき、代わりにお金を支払うことを保証しますよ、として立てるのが「保証人」の基本です。

保証人と連帯保証人の違い
保証人と類似のものと認識されがちな「連帯保証人」ですが、保証人とは決定的な違いがあります。

連帯保証人は保証人に認められている権利が認められない

賃貸における連帯とは、賃料の未払いなどに対して2人以上が一緒になって責任を負うことを意味します。この連帯という冠がついた保証人は、賃貸借契約する本人を信用してもらうために第三者が「連帯」して支払いを保証するということです。

そのため、保証人で認められていた「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」という3つの権利がありません。

そもそも保証人には、
催告の抗弁権保証人が債権者(不動産会社など)から返済を求められたとき、支払いを拒否できる権利。保証人は「まず賃貸借契約を結んだ本人に請求をお願いします」と主張することができる
検索の抗弁権保証人が債権者から返済を求められたとき、賃貸借契約を結んだ本人に「土地などの取り立て可能な財産があるのなら、まずはそちらの回収をお願いします」と主張できる権利
分別の利益分別の利益とは、保証人が何人かいる場合、借金の額をその人数で割った額についてのみ支払いの義務が発生するということです
という3つの権利が民法452条、453条、456条で認められています。賃貸借契約を結んだ本人に支払いの余力があるならば、保証人はこの3つの権利を行使して自分を守ることができるわけです。

つまり、この権利がないということは連帯保証人は借り主と同等扱いということになります。借り主がお金があるにもかかわらず賃料を払わないといったことがあれば、貸し主は賃料を連帯保証人に請求でき、連帯保証人はそれを拒否できません。

なぜ賃貸借契約は連帯保証人の形態が多いのか?
賃貸の契約では連帯保証人を求められることが一般的です。これはなぜでしょうか。

賃料をもらう側=貸し主は借り主から支払いを続けてもらわなければ困りますが、金額が大きいのも事実。借り主が病気や事故で支払いに支障をきたす可能性もあります。その際に連帯保証人がいれば、それを補てんするためリスク回避ができるわけです。

賃貸借契約において保証人ではなく、連帯保証人が主に用いられるのは、不動産会社にとってのリスク回避のためなのです。

不動産会社は、賃貸借契約者がお金を払ってくれるのか、払うだけの能力があるのか、そして、払えなかった場合に保証人がしっかり肩代わりしてくれるのか、といった部分まで確認しておきたいと考えます。だから、貸し主が連帯保証人を立てることを求めるわけですね。

連帯保証人になるための基準

連帯保証人の条件は法律で決められていないので、審査を通れば誰でもなることはできます。そのため、不動産会社では連帯保証人になれる人に一定の基準を設けている場合がほとんどです。

主な基準は以下の通りです。
1.契約者の親族である
2.賃料滞納などの際に、代わりに支払うことが可能な定期的収入がある
3.すぐに連絡が取れるところに住んでいる
借り主に対して大きな責任が取れるとなると、やはり両親が筆頭となり、兄弟や親戚がこれに続きます。借り主の同居人(配偶者など)は連帯保証人にはなれないので注意してください。

連帯保証人になるための収入基準
その親族が肩代わりする可能性があるわけですから、借り主と同等(一般的には収入の月収の1/3を家賃にあてられるかどうか)に定期的収入があるかないかの審査は欠かせません。支払い能力の有無は厳密に判断されています。

借りたい賃貸物件の賃料(支払い能力ありと判断される金額)と連帯保証人になるために必要な年収の相関関係は以下の表を参照してください。

一般的な会社審査の厳しい会社
年収賃料上限目安賃料上限目安
180万円約5万円約4.5万円
200万円約5.6万円約5万円
220万円約6.1万円約5.5万円
250万円約6.9万円約6.3万円
280万円約7.8万円約7万円
300万円約8.3万円約7.5万円
350万円約9.7万円約8.8万円
400万円約11.1万円約10万円
450万円約12.5万円約11.3万円
500万円約13.9万円約12.5万円
600万円約16.7万円約15万円
800万円約22.2万円約20万円
1,000万円約27.8万円約25万円
1,200万円約33.3万円約30万円
1,500万円約41.7万円約37.5万円

たとえば、借り主自身に大きな収入があり、高級マンションに住もうと思ったケースでのこと。万一、不測の事態で連帯保証人に請求がまわったとき、この賃料を払うだけの収入がなければ保証は成立しません。

連帯保証人が住むべき地域
また、極端な話ですが、連帯保証人にいくら収入があったとしても、海外の電話も通じない場所に住んでいてはすぐに連絡が取れません。

すると、借り主の滞納分をすぐに納めることは難しくなります。こうした点を考慮し、不動産会社は連帯保証人に独自の基準を設けているわけです。

条件を満たさなくても連帯保証人を立てるには?

前述の基準をすべて満たして審査をクリアしなければ連帯保証人は立てられないのでしょうか。条件を満たさなくても連帯保証人を立てるために、これらの方法を認めている不動産会社もあります。

方法1. 保証人を複数立てる
保証人を複数立てることで連帯保証人とすることができるケースがあります。たとえば、家賃8万円のアパートに住もうとしている人がいるとして、下記のような連帯保証人の2候補がいたとします。

<候補A・両親>
すぐに連絡が取れるところに両親が住んでいるが、父はすでに退職して年金生活に入っていて、母はパートとして働いている。

父=年金(月15万円)
母=パート(月5万円)

<候補B・友人>
近所に住む公務員の友人で、安定的な収入がある
友人=給料(月30万円)

不動産会社の基準を参照します。
1.契約者の親族である
2.賃料滞納などの際に、代わりに支払うことが可能な定期的収入がある
3.すぐに連絡が取れるところに住んでいる
「候補A・両親」は「1. 契約者の親族である」ことと、「3. すぐに連絡が取れるところに住んでいる」ことの条件を満たしています。

しかし両親2人の収入を足しても20万円なので、2がクリアできません。一方、友人は親兄弟ではないので1の条件から外れますが、2と3は満たしています。

こうした場合、父と友人の2人を立てることで、連帯保証人として成立させられることがあります。足し算的に条件を満たすといったところでしょうか。

ただし、基準はあくまでも不動産会社によって違うので、親族以外はNG、2人を立てることもNGとしているところもありますのでご注意ください。

方法2. 緊急連絡人を立てる
非常にまれですが、連帯保証人が審査に通らなかったり、あるいは貸し主側が空き室を埋めるために入居条件を下げる目的で、連帯保証人を立てる代わりに緊急連絡人(緊急連絡先)を用意することで入居が認められることがあります。

緊急連絡人は法的なものではなく借り主の賃料払いなどを保証するものではありません。しかし、借り主が不慮の事故や病気で万が一亡くなってしまった場合、不動産会社は部屋に残った財産の扱いに困ります。

これを引き取るか処分するかなどを決めてもらうために連絡を取る存在、これが緊急連絡人(緊急連絡先)の主な役割です。

そのため、借り主に対して責任を負える親族のみが対象ということが多く、中には保証人と同様の厳しい審査が入るところもあります。緊急連絡人とは、連帯保証人からいくつかの重要な責任をそぎ落としたものという位置づけとお考えください。

ルームシェア・シェアハウスの連帯保証人

近年増えているシェアハウスや、友人たちと一緒に住む「ルームシェア」の場合、連帯保証人はどうなるのでしょうか。

ルームシェアの賃貸借契約には主に下記の2つがあります。
1.入居者全員と連名契約する
2.入居者のうち代表者1人が契約をする

1. 「入居者全員と連名契約する」場合
入居者全員が「借り主」になるので、それぞれに連帯保証人を立てる必要があります。

<具体例>
たとえば4人でルームシェアをしようと連名契約した場合は全員が借り主扱いになるので、4人がそれぞれ親族1人を連帯保証人として立てます。つまり、連帯保証人も4人になるわけです。

シェア住居から1人が退去した場合、契約内容が変わってしまうので、再度契約が必要になることがあります。この場合、もちろん再契約のための手数料がかかります。注意しましょう。

2. 「入居者のうち代表者1人が契約をする」場合
1人で部屋を借りるときと考え方は一緒です。

<具体例>
1の例と同じく4人でルームシェアをしようとしますが、こちらの場合は借り主は代表者1人だけ。そのため、本項で触れている特殊なケースを除けば、代表者の親族1人を連帯保証人に立てればOKということになります。

自分が連帯保証人を立てられない場合でも、代表者が連帯保証人を立てれば入居することが可能になるわけです。

ただしこの代表者が退去した場合には、残った入居者の中から新たな代表者を決め、その人の親族1人を連帯保証人に立てる必要があります。

連帯保証人なしでも賃貸借契約する方法

ここまで述べた通り、大きなお金を毎月払い続ける賃貸借契約は連帯保証人の審査が入念に行われます。するとどうしても条件に達せず連帯保証人を立てられないケースも出てきてしまいます。

<連帯保証人を立てられないケース>
両親が高齢且つ年金生活で親戚がいない
両親が他界しており、親戚がいない
外国人

また、正社員以外の労働者も多い現代では、ここに該当する方も少なくないと思います。そのため保証人がいなくても賃貸借契約を結べる手段も広がりつつあります。

家賃保証会社と契約する
借り主が何らかの理由で賃料を払えなくなったとき、借り主に代わって払ってくれるのが「家賃保証会社」。

連帯保証人の代行という位置づけで、基本的には不動産会社が指定します。賃貸借契約とは別に保証会社に保証料を払って契約することになるので、保証会社からも審査があります。

審査内容は、以下などが上げられます。
職種や雇用形態
年齢
収入
過去の家賃滞納履歴

審査基準は保証会社によって違いますが、収入に対する家賃の比率はおおむね30%前後。厳しいところでは25%ぐらいに設定しています。

万が一支払いが滞り、保証会社に代行してもらう事態になったとしても、あくまでも一時的に立て替えているだけなので、借り主には保証会社への返済義務が発生します。

家賃保証会社は主要企業の場合でも設立が2000年前後のことがほとんど。以降、業界は進展しており、高齢者や外国人滞在者らの層が増えてきたことで利用されるケースは確実に広がっています。今後法整備が進むことでさらに広がりをみせそうです。
特定のクレジットカード払い可能な賃貸を探す
家賃のクレジットカード払いは、貸し主・不動産会社からカード会社に対する手数料が発生したり、個別に決済処理するわずらわしさからこれまで普及していませんでしたが、ここ数年、借り主の利便性などを重視する不動産会社がオンライン決済を一括導入。家賃のクレジットカード払いがOKという物件が出回るようになりました。

そうした中、不動産会社と提携した特定のクレジットカードで家賃を払うことで保証人が不要になるケースもみられるようになりました。

「厳しい審査を経てクレジットカードが発行されているのであれば、家賃の支払い能力もある」と不動産会社から判断されるためです。ただその際、カード利用の手数料分を家賃に上乗せすることが条件といった場合もあります。

クレジットカード払いが可能な物件は今後も増えていくと思われますが、クレジットカード払いOKの物件=保証人不要ということではなく、あくまでもそういう賃貸借契約ができる物件もあるということですので、ご注意ください。

保証が何もなければさすがに賃貸は無理?

ここまで見てきたように、賃貸借契約において連帯保証人は信用の証として重要であり、これに代わって家賃保証会社を利用するという手段も近年増えてきていることがわかりました。

最後に、連帯保証人になってくれる親族がおらず、保証会社やクレジットカードの審査も通らない。そういった方でも物件を借りられるのか?ということに触れておきます。

保証が何もなくても審査に通る可能性はゼロではない
結論、審査に通る可能性はゼロではありません。物件や不動産会社によって審査基準が異なるため、「保証なし=審査不通過」とはいえません。ですが、ここまで見てきた保証の重要性を考えれば、不動産会社側からするとリスクが高いのは想像に難くありません。

2007年に国土交通省が行った『民間賃貸住宅の実態調査 連帯保証人の確保と保証会社との関係』によれば以下になっています。

契約の比較
連帯保証人のみ58.5%
連帯保証人+保証会社14.7%
保証会社のみ24.8%
どちらもなし2.1%

実態調査自体がやや古いので参考程度のデータではありますが、このような結果が出ており、連帯保証人も保証会社も不要な、いわゆる「何もなしでOK」は2.1%しかありません。

こうした物件の場合、個人で経営しているオーナーが早く空室を埋めるために条件を下げ、保証人も保証会社も不要として募集をするケースが多いです。

連帯保証人が立てられなくても物件を借りる方法はさまざまあります。審査が通過できそうな条件を見定めながら、自分にあった賃貸物件を探してみてください。

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。