取引事例比較法
とりひきじれいひかくほう
取引事例比較法とは、類似の不動産取引事例から評価対象不動産の価格を試算することです。
取引事例比較法とは、類似した不動産の取引事例と比較することで、対象となる不動産の価格を試算することです。的確な試算を行うためには、取引事例を多く集める必要があります。
取引事例比較法では、対象不動産と条件が近い取引事例を選んで比較し、地域的要因(例えば、駅からの距離など)や個別的要因(例えば、日当たりや接道、室内の使用状況など)などに応じて事情補正を行います。加えて、不動産取引は市場動向の影響が大きいため、取引事例の価格を現時点の価格に修正必要があり、これを「時点修正」といいます。
取引事例は、近隣または同一需給圏内の類似地域にあるものから選択します。また、「知人に安く売った」ような特殊事例でないか、特殊事例であっても具体的な事情が判明していて補正可能なもの、できるだけ新しい事例であること、または、古い事例であっても価格変動が推定できるもの、などの条件があります。
取引事例比較法は、中古マンションや
中古住宅の
価格査定で一般的に用いられる方法です。取引事例比較法で求められた価格を、比準(ひじゅん)価格といいます。
中古住宅
中古住宅とは、過去に人が住んだことのある既存住宅のことです。流通物件と呼ばれ、仲介会社を通じて取引されるのが一般的です。また、未入居であっても、完成から1年以上(「フラット35」では築後2年以上)経過したものは、中古に分類されます。
日本では、住宅供給量に占める中古注宅の比率は少なく、欧米の数分の1程度です。しかし住宅ストック数の増加や高齢化を背景に、中古住宅への関心は高くなっています。
中古住宅の価格は、仲介会社などが経験を基に近隣で売買された事例と比較して提案し、それをもとに売主の意向を反映して売出価格が提示されます。しかし、中古住宅は新築に比べて物件ごとの安全性や品質、性能の差が大きく、また、売却を急いでいるかどうかでも成約価格に違いがでるなど、物件と価格の妥当性を客観的に比較検討するには、情報が不十分だといわれてきました。これに対して、住宅性能表示制度を利用した評価など、客観的な情報を積極的に開示するケースも出ています。
中古住宅は新築に比べて価格が手ごろなため、近年は、立地や構造に納得できる中古物件を購入して、自分好みにリフォームする人も増えています。売り手と買い手の双方が納得できる客観的基準の提示によって中古住宅の流通を活性化させるため、既存住宅性能表示制度などが活用され始めています。
価格査定
価格査定とは、土地や一戸建て、マンションなどの不動産物件を売却する際に、いくらで売れるか、売却時の適正価格を算出することです。依頼を受けた不動産会社などが、専門的な知識や価格査定マニュアルに基づいて査定します。標準的なものとしては、(公財)不動産流通近代化センターが発行する「価格査定マニュアル」があります。
不動産は、そもそも個別性が高いため、物件ごとに判断する必要があります。価格査定の基本的な方法としては、「取引事例比較法」といって、近隣の類似した物件の取引事例と比べておおよその価格を算出します。比較する取引事例は、中古マンションであれば、築年数や立地条件、マンションの規模などが類似したものが好ましい事例となります。選んだ取引事例と、階数、間取り、方位などを比較して、価格を調整します。土地であれば、土地の形・面積・方位・接道などの条件で価格を調整します。加えて、不動産価格は市場によって上下するため、取引事例と対象不動産の売却時の相場を比較して、さらに修正します。そのほか、日当たり、建物の使用状況、管理状況など、多くの評価項目を加味して査定されます。