鉄骨造
てっこつぞう
鉄骨造とは、建築物の構造部分に鉄骨を用いる構造のことです。S造とも言われます。
鉄骨造とは、建築物の骨組みに鋼材を用いて組み立てる構造です。S造(Steel)ともいわれますが、現在では鉄ではなく強靭な鋼を用いるので、鋼構造とも呼ばれます。
鉄骨造には、
重量鉄骨造と
軽量鉄骨造があります。重量鉄骨は厚さ6mm以上の鋼材を使用し、
柱と
梁を強固に接合(剛接合)した
ラーメン構造が一般的です。重量鉄骨では主に
柱と
梁で建物を支えるため、
筋交いをなくすこともでき、広い空間を作るなど間取りの自由度が高まります。
軽量鉄骨造は工場生産された軽量鉄骨を現場で組み合わせる
プレハブ工法で造られ、品質が安定し、コストも安く済みます。
鉄骨造は強度に優れますが、鉄骨自体は耐火性が低い(火事など高温で急激に強度が失われる)ため、通常は鉄骨の周りに耐火被覆が施されます。また、木造に比べて断熱性も低いため、
外断熱などの対策も必要となります。
ラーメン構造
ラーメン構造とは、建物を柱と梁で支える躯体構造のことです。柱や梁などの各部材が接点で剛接合(ごうせつごう)されています。剛接合は部材の接合点の角度が外力を受けても変化しない接合方法で、地震や風圧などの外力が加わっても、建物全体でしなやかに力を吸収します。
ラーメンはドイツ語で「枠」を意味します。ラーメン構造は柱と梁で支えるため、筋交いや耐力壁が必要なく、広い空間を作ることが可能です。鉄筋コンクリート造や鉄骨造が一般的で、マンションや高層ビルでは、低層から高層まで広範に採用されています。耐震性を維持しつつ仕切りのない広い空間を実現したり、ひとまわり大きい開口部が取れるなど、空間の自由度が高いのが特徴で、最近では戸建て住宅などにも採用するケースが見られます。
軽量鉄骨造
軽量鉄骨造とは、厚さ6mm以下の鋼材(軽量鉄骨)で建物の骨組みを組み、その躯体構造にパネルを組み合わせてつくるプレハブ住宅の構造です。柱や梁などの構造体が厚さ6mm以下の鋼材で構成され、筋交いの代わりに「ブレース」と呼ばれる鋼製の棒で強度を出します。
軽量鉄骨造は、工場で規格製造された材料を現場で組み立てるため、工期が短く、低コストでの家づくりが可能です。また、現場で溶接を行わないため、職人の技術による構造強度のバラツキがなく、安定した品質が確保できます。アパートなどで採用されることの多い構造です。
ただし、部材が規格品であるため、間取りやデザインなどには採用できるものに制限があります。また、技術的には大手ハウスメーカーの独自技術によるところが大きいため、将来的なリフォームが困難な場合もあります。耐火性や耐震性、耐久性については、ハウスメーカーの技術水準に依拠しているといえます。
筋交い
筋交いとは、建物の構造を補強するために、柱と柱の間に斜めに入れる部材のことです。木造軸組工法などで、耐震性や耐風性を強めるために用いられます。
木造軸組工法や鉄骨構造のように、柱と梁を基本として建物を支える構造では、柱と梁で形づくる長方形によって点と線で建物を支えます。しかし、この長方形の接合部分に強度が十分でなければ、地震や強風などによって横からの力(水平力)受けたときに、長方形がひし形に変形してしまいます。そこで長方形の対角線に筋交いを入れて、水平力に対抗して変形を防止します。鉄骨造では「ブレース」と呼びます。
筋交いは、圧縮する力と引っ張る力に耐える役割があります。長方形に対して斜めに1本だけ筋交いを入れる場合を「シングル」、2本交差させるものを「ダブル」または「たすきがけ」と呼びますが、「たすきがけ」のほうが強度はあります。ただし、柱や梁に十分な太さと強度がある場合や、2X4工法などで壁面全体で支える場合には、筋交いは不要になります。また、筋交いによる補強は、柱や梁と強固に固定されていることが重要です。
外断熱
外断熱とは、建物の外側を断熱材でくるむ断熱方法です。屋根や外壁、基礎などを、柱などの構造材を含めてすっぽりと断熱材で覆うため、結露を防ぎ、構造体が劣化しにくいなどの特性があります。
用いられる断熱材は、硬質ウレタンフォームや押出法ポリスチレンフォーム、フェノールフォームなどの発泡プラスチック系が用いられます。発泡プラスチック系断熱材は熱伝導率が低いのが特徴です。
鉄筋コンクリート造では、コンクリートに高い蓄熱性(温まりにくく、冷めにくい)があるため、建物の外側から断熱層で包み込む外断熱が適しており、室内温度を一定に安定させ、冷暖房効果が高く、結露の心配もありません。
また、最近では、その高い断熱効果を期待して木造住宅での採用も進んでいます。
ただし、外断熱は内断熱に比べてコスト高の傾向があり、また、外壁に負荷を加えるため、外装材に制限が生じる場合もあります。また、断熱材に比較的燃焼しやすいものが多いことも課題です。
柱
柱とは、建物の軸組みで、土台に対して垂直に立てて、屋根や床の荷重を土台や基礎に伝えるものです。木造軸組工法やラーメン構造では、梁などとともに建物を支える最も重要な部材です。
柱の太さは、柱の位置や部屋の大きさ、支える重さによって決めます。木造2階建て以上の場合には、土台から軒まで通った継ぎ目のない「通し柱」が建物の四隅に使われます。「通し柱」は、上下階を構造的に一体化させて耐震性を高めるために重要なものです。各階ごとに梁や胴差しなどで区切られた柱を、「管柱(くだばしら)」といいます。「管柱」も各階の荷重を受ける構造体です。このほか、柱と柱の間に壁の補強のために入れる柱を「間柱(まばしら)」と呼びます。また、壁に取り付けた装飾用の柱を「付け柱」といいます。
梁
梁とは、建築物の骨組みのなかで、建物に対して水平方向に渡し、屋根や床など建物の上からの荷重を柱に伝えて建物を支える部材をいいます。柱と連結して支える梁を「大梁」、柱に直接つながっていない梁を「小梁」といいます。元来は、屋根の棟木(むなぎ)に対して直角に渡したものを梁と呼び、水平に渡したものは桁(けた)と呼んでいました。そのため、棟木と水平方向の建物の奥行きを梁方向、直角に交わる方向を桁方向といいます。また、屋根を支える梁を小屋梁(こやばり)、床を支える梁を床梁(ゆかばり)と呼びます。
木造建築では、梁には松や米松、杉などが使われます。また、「現し」といって、梁を露出させて意匠を施すものもあります。
重量鉄骨造
重量鉄骨造とは、鉄骨造の一種で、厚さ6mm以上の鋼材を使用して、柱と梁を強固に接合(剛接合)するものです。柱と梁で構成するラーメン構造が一般的です。剛接合とは、外力を受けても接合部が変形しないもので、重量鉄骨造は頑丈な構造となります。
戸建住宅や木造が中心ですが、3階建てなどでは重量鉄骨造が採用されるケースもあります。構造が強固なため、狭小地や変形地などで特殊なデザインの建物にしたいときや、1階部分を店舗にするなどで広い空間をつくりたいとき、屋上庭園を造るなど荷重に耐えられる構造にしたいときなどでは、重量鉄骨造の強靭さが活かされます。
重量鉄骨造は安定性があり、耐久性や耐震性にも優れていますが、建設コストは高くなります。
なお、鉄骨自体は熱に弱いため耐火被覆が必要です。また、耐熱性も低いため、外断熱が効果的です。また、重量鉄骨造は特殊な構造設計となるので、対応できるハウスメーカーが限定されます。
プレハブ工法
プレハブ工法とは、Prefabricated building(house)の訳で、建物の部材をあらかじめ工場で製作し、現場で組み立てる工法です。
プレハブ工法は、使用する主要部材によって、「木質系プレハブ工法」「鉄骨系プレハブ工法」「鉄骨ALc工法」「コンクリート系プレハブ工法」「ユニット系プレハブ工法」に分類されます。それぞれに特徴があり、メーカーによって特異な工法があり、独自技術が開発されています。
部材を工場生産するため、製品や部材の品質が安定しており、工期も短くすみます。