耐震構造
たいしんこうぞう
耐震構造とは、地震によって建物が倒壊しない、地震に耐える構造です。
地震の揺れに耐えるように設計された構造のことです。地震の多い日本では、度重なる震災を経るなかで建築物の耐震技術を進化させてきました。1981年以降の
建築基準法では、大地震でも建物が倒壊することなく人命が守られることを最低限のレベルとしています。とくに1995年の阪神・淡路大震災以降、急速に発展しました。
耐震構造は、
柱や
梁、
耐力壁などで躯体構造を強固にすることで、地震の力に耐えさせるものです。しかし、構造躯体が強固なほど強い地震力を受け、室内の家具や人が転倒しやすくなります。そのため、耐震構造は、大規模な地震時に構造物が倒壊しないことを前提にしていますが、壁が崩れるなど部分的な破損は許容する構造だといわれています。これに対して、地震力を吸収・分散して低減させるのが「
免震構造」や「制振構造」です。2011年の東日本大震災以降は、これらハード面での耐震技術の発達・普及に加え、
緊急地震速報システムや防災に強いコミュニティの形成など、ソフト面での新たな取り組みも進んでいます。
免震構造
免震構造は「建物を地盤と切り離す」という点にあり、考え方自体はかなり古くから存在していたものです。従来、あまり現実的ではない発想とされていましたが、積層ゴムの開発によって発展してきた工法です。
つまり、地盤と建物を切り離している為、建物に対して揺れが伝わらないようという構造なのです。そのため、建物内に居る時でも揺れが大きく軽減される為、恐怖感を抑える効果あるいは家具の転倒によって起こる災害を抑えることができます。
免震構造による建設コストは一般的に高価であり、さらに、定期的なメンテナンスも必要とします。しかし、その効果は従来の耐震構造と比較すると大いに期待できる為、マンションなど大規模な建物に対して使用されることが多かった工法ですが、近年では一戸建て住宅にも見られます。
免震構造は揺れに強く、地震による建物や建具への損傷も少ないと考えられています。また、被災後の補修も基本的には必要が無い為、非常に安定した状態です。ただし、地盤やその他の条件によってはより適した方法がある場合もありますので、常に免震構造が最適とは言えません。
建築基準法
建築基準法とは、建物を建てるときの基本的な法律です。建築物の敷地・構造・設備・用途の最低基準を示し、用途地域や日影規制などエリアによって守るべき事項などが定められています。建物の利用者や近隣住民の生命・健康・財産を守ることを目的に、1950年に施行されました。基準の具体的な技術水準などは、建築基準施行令や施行規則などで詳細が規定されています。また、基準が実効性をもつように、着工前の建築確認や工事中の中間検査、完了検査、違法建築物の是正措置なども定められています。
建築基準法はこれまでに何度も改定を重ねています。1981年には現在の耐震基準が導入、2003年にはシックハウス対策の規定導入、2007年には耐震偽装事件を受けて建築確認審査の厳格化が図られました。中古マンションを選ぶ際には、いつ建てられたかによって基準が異なるため、築年は大まかな安全性を見るときの一つの目安にもなります。
耐力壁
耐力壁とは、建物自身の重さや積雪などによる上からの荷重(鉛直力)と、地震や台風などによる横からの力(水平力)に対抗して、建物を支えるための壁のことです。このような外力に対して建物が安全な構造となるように、筋交いを入れたり、構造用合板を張った壁を耐力壁といいます。
必要な耐力壁の量(必要壁量)は、建物が重くなるほど、床面積が広くなるほど大きくなります。また、形状によっても必要壁量は異なり、細長い建物などでは必要壁量も多くなります。耐力壁の強度を壁倍率といい、壁倍率を増やすことで耐震性を高めることができます。加えて、ねじれなどの力に対抗するには、耐力壁の全体バランスも重要です。
なお、構造上の役割がなく、空間を仕切るだけの壁を間仕切り壁といい、リフォームなどで取り外すことが可能ですが、耐力壁は撤去できません。
柱
柱とは、建物の軸組みで、土台に対して垂直に立てて、屋根や床の荷重を土台や基礎に伝えるものです。木造軸組工法やラーメン構造では、梁などとともに建物を支える最も重要な部材です。
柱の太さは、柱の位置や部屋の大きさ、支える重さによって決めます。木造2階建て以上の場合には、土台から軒まで通った継ぎ目のない「通し柱」が建物の四隅に使われます。「通し柱」は、上下階を構造的に一体化させて耐震性を高めるために重要なものです。各階ごとに梁や胴差しなどで区切られた柱を、「管柱(くだばしら)」といいます。「管柱」も各階の荷重を受ける構造体です。このほか、柱と柱の間に壁の補強のために入れる柱を「間柱(まばしら)」と呼びます。また、壁に取り付けた装飾用の柱を「付け柱」といいます。
梁
梁とは、建築物の骨組みのなかで、建物に対して水平方向に渡し、屋根や床など建物の上からの荷重を柱に伝えて建物を支える部材をいいます。柱と連結して支える梁を「大梁」、柱に直接つながっていない梁を「小梁」といいます。元来は、屋根の棟木(むなぎ)に対して直角に渡したものを梁と呼び、水平に渡したものは桁(けた)と呼んでいました。そのため、棟木と水平方向の建物の奥行きを梁方向、直角に交わる方向を桁方向といいます。また、屋根を支える梁を小屋梁(こやばり)、床を支える梁を床梁(ゆかばり)と呼びます。
木造建築では、梁には松や米松、杉などが使われます。また、「現し」といって、梁を露出させて意匠を施すものもあります。
緊急地震速報
緊急地震速報とは、気象庁が震源地でとらえた微動から地震の到達時間と震度を知らせるシステムです。
震源に近い地震計でとらえた地震初期微動(P波)を解析し、強い揺れのS波の到達時間や震度を素早く知らせるシステムです。この緊急地震速報は、地震が来る前にテレビや携帯電話などを通じて提供されます。
マンションでは、緊急地震速報受信機を設置することで、インターネット経由で受信し、マンションの位置情報から、そのマンションでの予測震度、予測到達時間を各住戸のインターホンから知らせます。また、エレベーターと連動して、最寄階に速やかに停止させたり、オートドアを解除させます。少しでも早く知らせることで、大きな揺れが来る前に居住者は身の安全を確保することが可能となります。
最近では、緊急地震速報システムを導入するマンションも増えています。
ただし、震源から近い場合には、速報から大きな揺れまでのタイムラグがほとんどありません。まずは、自分の身を守ることが大切です。