建築基準法
けんちくきじゅんほう
建築基準法とは、建築物に関するベースとなる法律で、建築物に関する憲法ともいえるものです。
建築基準法とは、建物を建てるときの基本的な法律です。建築物の
敷地・構造・設備・用途の最低基準を示し、
用途地域や
日影規制などエリアによって守るべき事項などが定められています。建物の利用者や近隣住民の生命・健康・財産を守ることを目的に、1950年に施行されました。基準の具体的な技術水準などは、建築基準施行令や施行規則などで詳細が規定されています。また、基準が実効性をもつように、着工前の
建築確認や工事中の
中間検査、
完了検査、違法建築物の是正措置なども定められています。
建築基準法はこれまでに何度も改定を重ねています。1981年には現在の
耐震基準が導入、2003年にはシックハウス対策の規定導入、2007年には耐震偽装事件を受けて
建築確認審査の厳格化が図られました。中古マンションを選ぶ際には、いつ建てられたかによって基準が異なるため、築年は大まかな安全性を見るときの一つの目安にもなります。
耐震基準
耐震基準とは、建築物を設計する際に適用される、地震に耐えることのできる構造の基準のことです。建築基準法によって定められています。耐震基準は1981年の建築基準法の改正によって強化されました。それ以前の基準(旧耐震基準)では、震度5程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準とされていました。これに対して、新耐震基準では、震度6強から7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準が設定されています。
旧耐震基準で建設された住宅を新耐震基準に適合させるために耐震補強工事を行った場合には、税金の優遇制度もあります。また、大勢が利用する学校などの大規模な建築物で、地震に対する安全性が明らかでない建築物には、耐震診断の実施が義務付けられています。
日影規制
日影規制とは、マンション建設によって近隣の日照権を損なわないよう、中高層建築物に一定の高さ制限を設けるものです。これは都市計画区域内で、地方自治体が条例で定める地域が対象となります。
日影による建築物の高さを規制するもので、冬至日の午前8時から午後4時まで(北海道は午前9時から午後3時まで)の間に、一定時間以上の影を生じないよう義務付けています。
対象となる建築物は、第1種・第2種低層住居専用地域では軒の高さが7mを超えるもの(または地階を除く3階建て以上)、その他住居系用途地域、商業地域、近隣商業地域、準工業地域では高さが10mを超えるものです。地面から一定の高さの水平面で、一定面積について、日影ができる時間を規制します。
用途地域
用途地域とは、地域における建物の用途に一定の制限が設けられたものです。市街化地域の計画的な利用によって環境保全を図るために、都市計画法で指定されています。その土地にどんな建物が建てられるのかという最も重要な地域地区の情報で、周辺環境を知る上でも重要な目安となります。
用途地域は12種類あります。そこでは建築基準法などによって、建築できる建物の種類、建ぺい率、容積率、斜線制限、高さの限度、日影制限、外壁の後退、敷地の最低規模などが定められています。
各用途地域には、「第1種低層住居専用地域」「第2種低層住居専用地域」「第1種中高層住居専用地域」「第2種中高層住居専用地域」「第1種住居地域」「第2種住居地域」「準住居地域」「近隣商業地域」「商業地域」「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」があります。
2つ以上の用途地域にまたがるときは、敷地の過半が属する用途地域の規制を受けます。建物にも周辺環境にも大きな影響があるので、対象物件がどの用途地域に属し、どんな規制があるのか、確認することが大切です。
建築確認
建築確認とは、建物の建築工事に入る前に、その建築物が建築基準法や関連法令に適合しているかどうか、建築計画を審査することです。建築主は、工事前に、都道府県や市区町村に置かれている建築主事や指定確認検査期間に申請して、確認を受ける必要があります。
建築確認が必要なのは、特定の用途(映画館、病院、共同住宅等々)や一定規模の建築物、都市計画区域内や知事の指定区域内での建築や一定規模以上の増改築などです。
なお、マイホームを建築するときには、本来は施主が建築確認申請をしなければなりませんが、実際にはハウスメーカーが代わりに申請してくれるのが一般的です。また、新築物件の販売では、建築確認を受けていない物件は広告も販売もできません。
敷地
敷地とは、建物が立っているか、これから建物を建てる土地のことです。敷地面積は、その土地の面積のことで、水平投影面積をいいます。水平投影面積とは、土地や建物を真上から見たときの面積で、傾斜や凹凸があっても、水平として測定した面積になります。
敷地面積には、登記簿に記載された登記簿面積(地積)と実測面積が異なっている場合があります。そのため、土地の売買契約などにおいては、土地家屋調査士などの専門家による実測をしてからというのが鉄則です。
なお、住宅を建てるために土地を購入するときには、接道条件などによっては、土地面積の一部が敷地面積に算入できないので、注意が必要です。また、敷地面積だけでなく、建物の配置や駐車場のスペースなども考慮しましょう。
完了検査
完了検査とは、建築確認を受けた建物が完成した後に、建築基準法や関連法令に適合しているか、検査を受けるものです。
建築確認を受けた建物は、工事完了後4日以内にその旨を、建築主事または指定確認検査機関に届け出て、完了検査を受けることが義務付けられています。完了検査の結果、適法と認められると、「検査済証」が交付されます。
なお、建築確認の内容と完成した建物が異なる場合でも、法令の適合上関係のない範囲であれば、問題ありません。例えば、採光や構造に影響のない範囲で、窓が設置される場合などです。適合しない場合には、手直しが必要となります。
住宅ローンを借りるときには、融資実行の際に金融機関から「検査済証」を求められることがあります。
中間検査
中間検査とは、建物の工事途中に、建築物の構造や施工状況について、建築基準法や関連法令に適合しているか、検査を受けるものです。
中間検査の制度は、阪神・淡路大震災による建築物の被害を踏まえて、1995年に導入されたものです。検査の対象となる建築物や工程は、都道府県などの特定行政庁が指定します。特定行政庁は、その地方の事情を勘案して、区域、期間、建築物の構造、用途、規模を限って、中間検査の対象を指定します。例えば、東京都では3階建て以上の建物が対象となっています。
また、2007年には「階数が3以上である共同住宅の床及び梁に鉄筋を配置する工事等」については、全国どこでも中間検査の対象となりました。
指定された建築物は、中間検査に適合しなければ、次の工程に進めることができません。