あなたの不動産投資にサブリース契約は必要?トラブル事例から学ぶチェックポイント

2024.03.13更新

この記事の監修者

寺岡 孝

寺岡 孝

【資格】不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー

あなたの不動産投資にサブリース契約は必要?トラブル事例から学ぶチェックポイント

不動産投資におけるサブリース契約の概要とメリット、デメリット、トラブルなどをお伝えし、サブリースの良し悪しを検証します。

この記事のポイント
  • サブリースは空室リスク回避のメリットがある一方、家賃減額リスクがあります。
  • 「かぼちゃの馬車事件」のようにサブリース会社が倒産することも。業者選択を誤ると、とんでもないことになるので注意が必要です。
  • サブリースを契約するときは保証金額、免責期間などしっかり確認するようにしましょう。

目次

不動産投資におけるサブリース契約とは

不動産投資初心者が不動産投資、とくにマンション投資を始める場合、不動産会社は必ずといっていいほどサブリース契約をすすめてきます。

サブリース契約はメリットの方が強調されがちですが、いったいサブリース契約とはどういったものなのでしょうか。

サブリース契約とは?

サブリース契約(転貸借契約ともいう)はオーナーと不動産業者が賃貸借契約を結び、その不動産業者が借り上げるという仕組みで、不動産業者がオーナーに家賃を支払うというものです。

借り上げた不動産業者は別の第三者(入居者)に転貸(又貸し)し、オーナーと契約した家賃よりも高い家賃で貸し出しすることになります。

オーナーにとってサブリース契約は空室の有無に関係なく家賃が入るので安心です。しかしながら、サブリース契約の賃料は実質賃料よりも1割程度は安くなり、本来の家賃をもらうことができません

この点はよく理解しておく必要があります。

マンション投資ではサブリース契約をすすめるケースが多いのですが、不動産投資初心者としては、万一家賃が入らないとローンの返済も厳しくなるので、このサブリース契約を選ぶケースが多いものです。

サブリースではオーナー側が賃貸人、サブリース会社が賃借人となります。借地借家法から、賃貸借契約では賃借人の方が不利にならないような契約となっていることも忘れないようにしてください。

寺岡 孝
寺岡 孝

サブリース契約以外にはどんな管理方法があるのか?

自主管理

昔ながらの大家さんですと、大家さん自身で家賃の回収や入退室の管理を行っており、入居者の募集は地域の不動産会社にお願いするという賃貸管理方法をとっています。

これは自主管理という管理方法で、オーナー自身が賃貸管理を行うことで入居者の把握や賃料の設定など、オーナー自身の采配が可能です。サブリース契約とは異なり空室時の家賃収入はありませんが、満室であれば実質の家賃収入が得られます。

管理委託

自主管理ができないオーナーの場合、賃貸管理を不動産会社に任せる場合があります。家賃の回収や入居者への対応、入退室の管理、入居者の募集などの賃貸管理全般を不動産会社に委託するものです。

この場合、退室があればその分の賃料は入らないので空室の場合には家賃収入は減ります。また、賃貸管理を不動産会社にお願いすれば賃料の3~5%を管理手数料として不動産会社に支払うことになります。

サブリース契約のような空室時の家賃保証はありませんが、面倒な賃貸管理だけ不動産会社に行ってもらえます。

サブリース契約が必要な場合とは?

サブリース契約は空室となっても家賃収入を得られるという点が大きな特徴です。たとえば、副業で不動産投資を行っているオーナーで本業の方が忙しい場合であれば、サブリース契約で物件の管理を行うことにはメリットがあります。

また、物件自体に立地条件等の賃貸条件が悪い場合があれば、空室リスクを回避する意味合いからサブリース契約で運営した方が良い場合もあります。

オーナー自身が忙しい人であるとか、賃貸管理が面倒だから空室リスク回避も含めてどこかにお願いしたいという人、あるいは賃貸条件が悪く空室リスクが比較的高い場合にはサブリース契約をうまく利用しましょう。
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サブリースのメリット

では、サブリースのメリットはどんな点があるのでしょうか。ここからはサブリースのメリットについてみていきましょう。

空室リスクの回避

サブリースの大きなメリットの1つは空室でも家賃収入は入るという点です。不動産投資の収入源は家賃収入であることは言うまでもありませんが、空室時には家賃が入らないというリスクをサブリースで回避できるという点では大きなメリットになります。

管理業務からの解放

サブリースであればオーナー自身が賃貸管理を行うことはありません。家賃回収や入居者との対応、入退室の管理など賃貸管理の業務は手間がかかって面倒なので、サブリース契約ですべてサブリース会社に任せてしまえば管理業務からも解放されます。

相続税対策に有効

サブリース契約の場合、オーナーから見れば空室の有無にかかわらず入居者が存在している形態になります。つまり、入居率が100%の状態の賃貸住宅を経営している状態で相続税が計算されますので、相続時にかかる税金が少なくなります。

サブリース契約では相続税評価額の算出の際の賃貸割合を100%にし、相続税効果を最大限引き出すことが可能とされています。

サブリースのデメリット(リスク)

前章ではサブリースのメリットをお伝えしましたが、ここからはサブリースのデメリットをみていきましょう。

保証家賃は相場の80~90%

サブリース契約は空室でも家賃が入るので安心な一面がありますが、サブリース契約の家賃は実際の家賃の80~90%となるので、家賃収入は自主管理や管理委託の家賃より少なくなります。

賃貸需要が旺盛なエリアであれば、空室が出たとしてもすぐに埋まるのでサブリース契約をする必要はありません。そうした条件であればサブリース契約の方が家賃収入は少なくなりますのでデメリットになります。

家賃減額リスク

通常のサブリース契約は2年毎に家賃の見直しがあります。とくに、賃貸需要が芳しくないエリアや、賃貸物件が供給過剰なエリアであれば空室率が高くなる可能性があり、サブリース会社としては家賃の見直しは重要なポイントとなります。

したがって、サブリース契約とはいえ家賃はずっと同額ではないことを熟知しておく必要があります。たとえば、2年毎に家賃が5%ずつ減額すれば収支計画は大幅に狂ってしまいます。

入居者審査ができない

サブリース契約では原則、実際の入居者がどういう人かは把握できません。オーナーはあくまでもサブリース会社から見れば賃貸人であり、賃借人であるサブリース会社はだれに転貸借しても関係はないというのがサブリース契約です。したがって、オーナー自身が実際の入居者を選ぶことは不可能なわけです。

サブリース会社の中には空室を抑えて家賃を確保するために、条件の悪い入居者を入れてしまうことのも充分に想定できます。

免責期間がある

サブリース契約では契約の始期から家賃をもらえるわけではありません。おおむね1か月から2ヶ月は賃料の免責期間が設けられており、その間の家賃はゼロ円となってしまいます。

サブリース会社でも入居者がすぐに見つけることができればいいのですが、入居者が見つからないというリスクヘッジをするために免責期間を設けています。

オーナーにとってはすぐに家賃をもらうのが理想ですが、サブリース契約では自主管理や管理委託とは異なりこうしたデメリットがあります。

修繕などの費用負担があり業者が選べない

入居者が退室の際、修繕等などがあった場合、オーナーへの費用負担が発生する場合があります。その場合、修繕する業者はサブリース会社が選択するのでその費用が高い安いにかかわらず一択しかありません。

いくつかの業者に相見積もりをさせて条件に見合う業者の選択はオーナーにはできないので、相場よりも高い修繕費用を請求されるケースもあります。

オーナーからの解約ができない

サブリース契約ではオーナーは賃貸人であるがため、オーナーの都合でサブリース契約を解約することは非常に難しい点があります。

オーナーからサブリース契約の解約を申し出ると、賃借人からの解約は数か月前に申し出をすることで簡単に解約はできるが、賃貸人からの解約は、オーナー自身が居住するなど、正当な事由がないと解約には応じられないと言ってくるのです。これは、ある意味オーナーにとっては不利な契約とも言え、サブリース契約の大きなデメリットとなっています。

サブリース会社としては、必ずこの借地借家法を持ち出しして解約には応じられないと申し出を断ります。戸当たり月1万円程度の手数料利益があるサブリース契約は不動産業者にとっては大きな収入源であり、その契約数が減少すれば収入源が減るのでそう簡単には解約に応じてくれないのが現状です。

たとえば、大手の賃貸管理会社のサブリース契約数が1万戸あって、戸当たり1万円の手数料が入るとすれば、毎月1万戸×1万円=1億円分の手数料が入る計算になります。 不動産会社はサブリース契約による管理戸数を増やしていくメリットがあり、サブリース契約を解約させたくないわけです。

寺岡 孝
寺岡 孝

サブリース会社の倒産があり得る

つい数年前に「かぼちゃの馬車事件」というのがありました。「かぼちゃの馬車」と称したシェアハウスを建築し入居者を募り、サブリース契約をセットにした物件をスルガ銀行のローンを使い販売した投資スキームで、スルガスキームとも呼ばれます。

この不動産会社はサブリース賃料が払えない状況になってしまい倒産しました。かぼちゃの馬車のオーナーは家賃収入を絶たれてしまったがためにローン返済もできなくなり、最悪は自己破産に追い込まれたケースも出た事件です。

この事件のようにサブリース会社が倒産してしまうことは、オーナーにとっては最悪のケースです。サブリース会社の選択を誤ると、とんでもないことになると肝に銘じておく必要があります。

いざというときに売却しにくい

サブリース契約のついた物件をいざ売却したいと思っても、そう簡単には売却できません。大半のサブリース契約は売却などのオーナーチェンジがあった場合には、そのサブリース契約をそのまま踏襲するという旨の約定が付加されています。

たとえば、「物件を第三者に譲渡、所有権を移転する場合には第三者にその地位を承継させる」というような文言があり、承継しない場合には賃料の6か月分を違約金として賃借人(オーナー)に払う旨も掲載されています。

「原則サブリース契約は承継、承継しない場合には解約金を払え」という内容ですので、売却先がサブリース契約を承継してもいいという売り先を見つけるしかありません。したがって、サブリース契約を解約した方が売却はしやすくなります。

サブリースのトラブル事例

ここではマンション投資でサブリース契約をしたオーナーのトラブル事例をみていきましょう。

【トラブル事例1】サブリース会社が倒産した

複数戸の投資マンションを保有していたAさんはサブリース契約で運用していました。ある時、数か月間家賃が入ってこなくなり、サブリース会社に問い合わせをしました。ところが、サブリース会社の電話は既に通じない状況で、会社自体も行方不明になっていたのです。Aさんは大慌てでどうしたらいいのかわからない状況となりました。

ネットで不動産投資関係の専門家に相談したところ、それぞれの入居者に個別に連絡をして事情を説明し、家賃の入金はAさんに直接、支払うようにお願いしました。とりあえずは事なきを得ましたが、まさかサブリース会社が倒産するとは思ってもみなかったとのことです。

【トラブル事例2】サブリース契約を解約したが、さらにサブリース契約が存在していた。

Bさんはサブリース契約で投資マンションを2戸保有していましたが、2戸ともサブリース契約で家賃を得ていました。

収益も芳しくないため売却をしたいと思って、このサブリース契約の約定に基づいて解約を申し出、うまく解約できたと喜んでいましたが、次なる問題が発生したのです。

なんと転借人(実際の入居者)がまたもや不動産業者で、その不動産業者がさらに第三者に転貸していたのが発覚したのです。これは、サブリースのサブリースで、業者間ではサブサブリースの契約と言われる代物でした。
Bさんはサブリース契約の約定通りに6か月前に最初のサブリース契約の解約通知を出し、6か月後に解約できたのですが、再度、サブリース契約の解約を通知する羽目にあってしまったのです。しかも、解約には違約金として賃料6か月分の費用を払うことに…。

結局、実際の入居者との賃貸借契約にたどり着くまでには約1年以上かかり、しかも解約に伴う費用が賃料6か月分かかってしまったのです。これほどひどい内容とは思っていなかったBさんですが、まんまと不動産業者にカモられたわけです。

すべてのサブリース契約の解約は1年越しで、そこからようやく売却への道が開けました。

トラブルにあった場合の相談先

2020年12月15日より「賃貸住宅の管理業務などの適正化に関する法律」が施行され、サブリース契約や事業に関する規制が追加されました。
この法律が制定された理由には、
・サブリース契約を結んだ管理会社が経営破綻に陥ってしまう
・賃貸借契約で定めた賃料に関するトラブルが増加
・サブリース契約を結んだ会社からの一方的な契約解除
・サブリース会社の施工物件に違法性が見つかる
というような問題が頻繁にあったため、適正なサブリースを行うためにサブリース新法は施行されました。

サブリース新法では、規制対象となる勧誘者や不当勧誘の明確化や禁止される誇大広告の明確化、さらには、オーナーに説明すべき家賃減額リスク等の内容の明確化(重要事項説明)の規制が施されました。

上記のような点で法に抵触した場合、サブリース会社(特定転貸事業者)又は勧誘者に対する罰則は6月以下の懲役若しくは 50 万円以下の罰金、又はこれを併科、50 万円以下の罰金、30 万円以下の罰金などがあります。また、サブリース業者(特定転貸事業者)又は勧誘者に対する行政処分としては指示処分や業務停止命令等などがあります。

また、サブリース契約にかかる相談先としては、国土交通省管轄の各地方整備局やたとえば、各都道府県の宅建業免許窓口に相談されることをお勧めします。(東京都であれば住宅政策本部・住宅企画部・不動産業課など)

サブリース契約時のチェックポイント

サブリース契約が必要となった場合には、以下のチェックポイントを確認しておきましょう。
サブリース契約時のチェックポイント
保証金額
免責期間
契約期間
費用負担の割合
解約条件
会社の信頼性

保証金額

家賃の保証金額は実質賃料の何パーセントかを確認しておきましょう。保証金額は実質賃料の90%から80%程度が一般的です。場合によっては、契約前に保証金額の交渉をしてもいいでしょう。

免責期間

サブリース契約の始期から何か月後に家賃が入ってくるのか確認しましょう。通常は1か月から2ヶ月程度になります。

契約期間

サブリース契約の契約期間は各会社によってまちまちです。短期であれば3年から5年、長期であれば10年から30年というケースが多いです。

また、契約期間は長くても家賃の見直しが数年ごとにありますので、その点は注意しておきましょう。

費用負担の割合

入居者が退去した場合の修繕など、物件にかかる費用負担はオーナーとサブリース会社の間の取り決めを確認しておきましょう。

解約条件

サブリース契約の解約については、契約前に必ず確認しましょう。解約の通知はいつ出せばいいのか、解約時に違約金などがかかるのなど、諸条件をみておく必要があります。

サブリース契約は物件の売却の際には足かせになるケースが多い ので、いずれ解約することを前提にサブリース契約を検討すべきでしょう。

寺岡 孝
寺岡 孝

会社の信頼性

先ほどもお伝えしましたが、サブリース会社でも倒産するケースはあります。万が一、倒産となれば非常に厄介なことになりますので、サブリース会社としての信頼性があるかはよく確認しておきましょう。

サブリース以外の運用パートナー

サブリース契約以外にマンション投資をサポートしてもらえるところはあるのでしょうか。ここではサブリース会社以外で賃貸管理が可能なシステムをみていきましょう。

管理委託

サブリース契約のような空室保証以外の賃貸管理を行ってもらえるのが管理委託になります。管理委託では管理手数料として賃料の3~5%程度の費用がかかります。

家賃の回収から入居者のクレーム受付、入退室の管理、入居者の募集などの業務を行ってもらえます。賃貸需要が旺盛なエリアの物件では空室期間が短いのでサブリース契約ではなく、管理委託契約で物件を運営するオーナーは多いかと思われます。

集金代行

家賃の回収のみを行うのが集金代行になります。管理委託とは異なり単純に家賃の集金をオーナーに代わって行うのが集金代行に当たります。費用は賃料の1~3%程度です。

保証会社

入居者から家賃が入らない場合には保証会社から家賃が入ってくるという仕組みになります。通常は賃貸借契約の際に入居者の家賃未払いを保証するため連帯保証人による保証か、保証会社による保証で入居者の審査を行います。保証会社による保証の場合は入居者が保証料を負担します。

まとめ

サブリース契約は不動産投資初心者にとってはメリットのあるものです。しかしながら、その契約内容はすべて一律ではありません。したがって、都度契約内容をよく確認してから契約を締結することをおすすめいたします。

また、サブリース契約はそのメリットばかりを強調されがちで、デメリットに対しては触れていない不動産会社が多いものです。ここにあげたサブリース契約のデメリットをよく理解しておけば、いざサブリース契約を勧められた際には失敗を未然に防ぐことが可能でしょう。

サブリースはメリット・デメリットを把握したうえで
契約内容の入念なチェックが必要です!

この記事の監修者

寺岡 孝

寺岡 孝

【資格】不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー

アネシスプランニング株式会社 代表取締役。住宅コンサルタント、住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務後、2006年に同社を設立。個人住宅・賃貸住宅の建築や不動産売却・購入、ファイナンスなどのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、3000件以上の相談を受けている。WEBメディアに不動産投資についてのコラムを多数寄稿。著書に「不動産投資は出口戦略が9割」「不動産投資の曲がり角 で、どうする?」(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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