構造設計
こうぞうせっけい
構造設計とは、建築物の構造計画と構造計算に基づいた、建築物の構造上の設計のことです。
構造設計とは、建築物の設計にあたって、構造計画および構造計算に基づいて、建物の構造について設計を行うことです。
構造計画は、地盤や地震・風などの外力を考慮し、建築物の目的・用途、施工性、経済性、デザインなど建築物全般を踏まえながら、建築物の骨組みや構造材、
基礎構造などを計画します。構造計算は、計画した構造の安全性をさまざまな面からチェックします。
柱や
梁、床、壁などが地震や風などの外力に対して十分な
応力を有するか、構造上主要な部分に十分な剛性があるか、構造部材が耐久性を有するかなど、構造を解析し構造図を作成します。
なお、一定規模以上の建築物(木造では高さ13m超または軒高9m超、
鉄骨造では4階建て以上、RC造または
SRC造では高さ20m超など)の構造設計は、構造設計一級建築士が構造設計を行うか、構造関係規定への適合性を確認する必要があります。
SRC造
SRC造は、柱や梁などの骨組みに、鉄骨を軸としてその周りに鉄筋を組み込み、そこにコンクリートを流し込んだ構造です。SRCは、SteelReinforcedConcreteの略で、一般的には、コンクリート造よりも強度や粘り強さに優れ、高層建築物に採用されてきました。かつては、高層ビルではSRC造で建設することが一般的でした。しかし、技術力の向上によって、現在では超高層ビルもRC造でできるようになり、最近はRC造が一般的です。
応力
応力とは、住宅などの構造物に、地震や風圧、水圧などによって外から力が加わったときに、内部の部材に抵抗する力が生じるもので、「内力」ともいいます。また、部材の単位面積当たりの応力を応力度といいます。応力の計算は、建築物の設計・構造設計において重要な部分です。
応力には、剪断(せんだん)応力、圧縮応力、引張応力、曲げ応力などがあります。応力が特定の部分に集中することを応力集中といい、部材の変形や亀裂などの原因となります。建築基準法では、それぞれの部材が応力に耐えられるかどうかという許容応力度に関する規定が定められています。
基礎
基礎とは、建物の最下部にあり、上物の荷重を地盤に伝える構造です。建物を安全に支えるために、極めて重要なものです。
基礎の種類には、布基礎(連続フーチング基礎)、ベタ基礎、杭基礎などがあります。布基礎は壁面に沿ってコンクリート構造が連続する形状の基礎です。「布」とは、水平の意味があり、「フーチング」とは断面が逆T字型の底が広がった基礎底盤で、布基礎では床下の地面は土のままとなります。これに対してベタ基礎は、建物の底全体を鉄筋入りのコンクリートで固める構造です。かつては、木造在来工法では布基礎が、2X4工法やプレハブ工法ではベタ基礎が一般的でしたが、最近では在来工法でもベタ基礎を採用する例が多いようです。
寺社や古民家など、日本の伝統的な建築物は、1本ずつの柱単独に設けられる独立基礎(独立フーチング基礎)が用いられてきました。固い支持基盤まで杭を打ち込む杭基礎などの方法も取られます。
鉄骨造
鉄骨造とは、建築物の骨組みに鋼材を用いて組み立てる構造です。S造(Steel)ともいわれますが、現在では鉄ではなく強靭な鋼を用いるので、鋼構造とも呼ばれます。
鉄骨造には、重量鉄骨造と軽量鉄骨造があります。重量鉄骨は厚さ6mm以上の鋼材を使用し、柱と梁を強固に接合(剛接合)したラーメン構造が一般的です。重量鉄骨では主に柱と梁で建物を支えるため、筋交いをなくすこともでき、広い空間を作るなど間取りの自由度が高まります。軽量鉄骨造は工場生産された軽量鉄骨を現場で組み合わせるプレハブ工法で造られ、品質が安定し、コストも安く済みます。
鉄骨造は強度に優れますが、鉄骨自体は耐火性が低い(火事など高温で急激に強度が失われる)ため、通常は鉄骨の周りに耐火被覆が施されます。また、木造に比べて断熱性も低いため、外断熱などの対策も必要となります。
柱
柱とは、建物の軸組みで、土台に対して垂直に立てて、屋根や床の荷重を土台や基礎に伝えるものです。木造軸組工法やラーメン構造では、梁などとともに建物を支える最も重要な部材です。
柱の太さは、柱の位置や部屋の大きさ、支える重さによって決めます。木造2階建て以上の場合には、土台から軒まで通った継ぎ目のない「通し柱」が建物の四隅に使われます。「通し柱」は、上下階を構造的に一体化させて耐震性を高めるために重要なものです。各階ごとに梁や胴差しなどで区切られた柱を、「管柱(くだばしら)」といいます。「管柱」も各階の荷重を受ける構造体です。このほか、柱と柱の間に壁の補強のために入れる柱を「間柱(まばしら)」と呼びます。また、壁に取り付けた装飾用の柱を「付け柱」といいます。
梁
梁とは、建築物の骨組みのなかで、建物に対して水平方向に渡し、屋根や床など建物の上からの荷重を柱に伝えて建物を支える部材をいいます。柱と連結して支える梁を「大梁」、柱に直接つながっていない梁を「小梁」といいます。元来は、屋根の棟木(むなぎ)に対して直角に渡したものを梁と呼び、水平に渡したものは桁(けた)と呼んでいました。そのため、棟木と水平方向の建物の奥行きを梁方向、直角に交わる方向を桁方向といいます。また、屋根を支える梁を小屋梁(こやばり)、床を支える梁を床梁(ゆかばり)と呼びます。
木造建築では、梁には松や米松、杉などが使われます。また、「現し」といって、梁を露出させて意匠を施すものもあります。